本当の失敗は何も挑戦しないこと
ー語学学校卒業後は、バンクーバーにお引っ越しされたそうですね。
はい。オタワの語学学校で過ごした後、IELTS(アイエルツ)という英語のテストを受けて、バンクーバーに引っ越し、Simon Fraser Universityに入りました。大学に入る前から、どうせなら4年間で何かおもしろいことをやりたいなと考えていました。
バンクーバーへの引っ越しが終わったころに、友達から送られてきたYouTubeの動画が、キングコング西野さんの近畿大学卒業のスピーチでした。動画のなかで、「失敗は失敗ではない」みたいなことをおっしゃっていたんですよね。
今までは「失敗」とは成功の反対で、「上手くいかなかったこと」を指すものだと思っていたけれど、本当の失敗って何も挑戦しないことだと、頭と心で受け止められたんです。
西野さんの動画をみたことが、やはり自分のやりたいと思ったことを素直にやっていこうと思えたきっかけになりました。
そんなときにふと思い出したのが、藤原ひろのぶさんという社会活動家の方でした。高校を卒業してすぐのころに講演を聞きに行ったことがあり、藤原さんを日本ではなく、カナダのバンクーバーに呼ぼうと思ったんです。
Facebookからメッセンジャーで「大学生活もまだよく分からないし、友達もバンクーバーに誰一人いないんですけど、来てくれますか?」と送りました。そしたら「いいよ」とお返事が来て。やってみるもんだなと思いました。
そこから半年後に開催日を決めて、がんばってつながりを作っていき、「来てくれない?」「手伝ってくれない?」と声をかけ始めました。このイベントが初主催だったので、イベントの立ち上げを学んだり、見てくれた人が参加したくなるようなフライヤーのデザインを研究したりと、多くの学びがありましたね。
2日間開催して、参加者は合計で50人くらい。開催日の数日前までは、参加者は半分も集まっていなかったのですが、人が人を連れてきてくれたので、最終的には目標が達成できました。
ーイベントを成功させた一方で、心の状態が落ちてしまうような出来事があったそうですね。
20歳からバンクーバーで暮らすようになり、語学学校に通っていたときよりも様々な背景や文化をもった人と触れ合うようになりました。
周りの友だちと家族との交流を見聞きしていくうちに、これまで当たり前だと思っていた18年間の家庭環境が、当たり前ではないことに気が付きました。
初めて自分の家庭環境を客観視して、当たり前だと思っていたけれど、親の不安定な精神状態からまともに会話ができなかったことや、自分の存在や意思決定が尊重されないことが普通ではないんだ。
私ってもしかしたらかわいそうな人なのかも、とすごく落ち込んだんですよね。
当時の私は、親から受けた愛の総量しか子供の私は持てないと思っていました。そのため、愛を受けられなかったから、愛が欠落している欠陥人間なんだなと思い込み、コンプレックスになりました。
同時に、当時お付き合いしていたパートナーとの関係も崩れ、躁うつ状態を引き起こすようになってしまいました。
「躁うつ」とは、精神状態が底のときも上のときもあるうつの一種なのですが、コロナでステイホームになってしまった時期とも重なってしまい、メンタルがグラグラと崩れていきました。
心の声を聞いて、心地のいい選択を
ーそこからどうやって立ち直ったのですか?
バンクーバーで出会った日本人の英治さんという方が、このときにたまたま電話をかけてくれたんです。
私の存在を人生で初めて第1優先にしてくれた人が、このときのパートナーでした。ここでやっと愛を感じられていたのですが、逆に「この人しか自分を大切にしてくれる人はいない」までいってしまい、依存関係になってしまっていました。
英治さんが、依存とは何かを客観視して話してくれたんですよ。これは相手にも自分にとっても良くないことだとようやく気が付いて、3日で別れました。
それから、「傷ついてつらい経験をした分だけ、人は優しくなれるし温かくなれる。だから、欠落している人間なんかじゃないよ」と諭してくださいました。新しい概念が吹き込んできて、私だからこそ持てる視点や優しさがあるんだと初めてそこで思えたんです。
それから数ヶ月後、コロナが長引きそうだったので日本に帰ることに決めました。
ー日本に帰国されてからは、どう過ごされていたのでしょうか?
日本に帰国してからは、イベントをしたり空間を作ったり、大学のオンライン授業だけでは満足できずに、自ら活動しているような人たちとつながるようになっていました。
カナダでの経験のおかげで、社会課題は一見大きな問題に感じるけれど、私たち一人ひとりの小さな選択の積み重ねで起こっていることを知りました。
帰国後、それを伝える講演の機会が何回かあったのですが、人前で話すのが得意ではないこともあり、自分がやりたいことなのかなと疑問に感じながらやっていました。
そんなことを思いながら小さな講演会をした後に、転機が訪れました。友だちが主催のフェスに登壇させてもらったときに、初めて自分の伝えたいことが聞いてくれている人の心に届いた感じがしたんです。
自分の心と聞いてくれている人の心がつながった感覚を確かに感じました。そのときに、めちゃくちゃわくわくしたんですよね。
そして本当に私が伝えたいことは、「心の声を聞いてハッピーな選択をしよう」「自分の心地いい選択をしよう」だということに気が付きました。
様々な社会課題やコミュニケーションの問題は、心から来ていると私は思っているんです。自分の心の声を聞いて、心地いいなと感じる選択をしたら、もっと自分にも周りにも優しくなれる。その上で社会や地球の未来に意識を向けることもできるのではないかと思っています。
そのときのわくわくが忘れられなくて、「講座をやってみよう!」とInstagramで募集をかけ、『ハッピーにエコる環境講座』が始まりました。