互いに尊重しあえる場を。Cominia代表・渡邉すみれが社会課題に向き合う理由

生徒会長として校則問題に取り組み、校内外に意見を発信

ーここからは高校時代について伺います。高校の進路はどのように選択されましたか?

自由で国際的な校風の公立高校が第一志望でしたが、受験に失敗して校則の厳しい私立高校に進学することになりました。ここが私にとって、人生での大きなターニングポイントになったと思います。当時は行きたい高校に進学できず、イメージしていた高校生活と異なってしまうことにネガティブな気持ちを抱いていました。

ーそうだったのですね。実際に進学してみてからはいかがでしたか?

高校1年生の頃は、中学生の頃とはまた違う友人ができ、楽しい学校生活を過ごしていました。

ただ、高校2年生になる直前から少しずつ違和感を覚えてきたんです。きっかけの一つは、新型コロナウイルスが流行し始めたタイミングでアメリカに行ったことです。

留学を考えていたので、下見をするために親戚がいるロサンゼルスに3週間ほど滞在する予定でした。しかし、現地に到着して2日目で街全体がロックダウンになってしまいました。結局10日間ほどしか滞在できませんでしたが、短期間でも客観的に外から日本を見たり、アメリカの自由さに触れたりすることができたのはよかったです。でも次第に、高校生活での違和感が表面化してきて。

ー具体的にどういう点に違和感を覚えたのでしょうか?

海外では多様な人が生きたいように生きていると感じましたが、学校ではなんで意味のわからないルールに従って、窮屈な気持ちで生活しないといけないんだろうと思うようになりました。

例えば私の高校では、毎朝校門の前に先生が立って、靴下やスカートの長さをチェックする慣習があったんです。私にとっては毎朝苦痛で、校門を通るために靴下やスカートの長さを直す意味がわかりませんでした。次第に監視されている感覚を持ち始め、生きづらさを感じるようにもなりました。

友人たちも校則に不満を持っていましたが、「不満を露わにすると推薦を取り消されるかも」という理由で意見が言えない雰囲気だったんです。周りからどう見られるかではなく、自分がどう在りたいかで生きるアメリカ人との差も感じてきて。そこを変えたいと思ったのが活動を始めるきっかけでした。

ーどのようにしてアクションを起こしたのですか?

ちょうどオンラインが普及したタイミングだったので、ZoomやTwitterを活用していろんな人と話したり発信したりしました。1年間で100人以上の方と話しましたね。その結果、客観的な観点や社会・歴史的な立場からの意見、公立と私立の違い、地域の違いなどの視点をいただくことができました。

私は生徒側の立場でしか校則を見れていなかったので、校外の方々の意見を聞いて視野が広がった感覚でした。その結果、学校の先生方と議論する機会ができ、そこでも様々な気づきがあったように思います。

例えば私は校則を変えることが目的になっていましたが、校則を変えた先に何があるのかを知る「プロセス」が大事であり、実際に校則を変えた先に、教育現場だけではなく家族や地域にもどういう影響があるのかを考えるきっかけになりました。

また、高校3年生では生徒会長として校則問題にも取り組みました。学校内だけではなく、SNS発信などで学校外とも様々な情報交換をしながら進めることが多かったです。それでも校則をなかなか変えられなかったのは、今でも悔しい気持ちがありますね。

ー当事者として校則問題に取り組み、現在大学生になった渡邉さんから見て、校則が存在する意義をどう考えていますか?

社会でも法律があるように、校則のようなルールの存在は、私たちが自由に生きるために必要なものだと思います。私自身、校則があること自体に反対であるわけではありません。教育現場が校則をきちんと意味付けし、なぜその校則があるのかを常に話し合いながら改善できる体制が整っていることが大事です。

そのための要素として、自分の意見が主張できる安全性が求められるのではないでしょうか。例えば、相手と意見が異なった場合、自分の意見を言うこと自体は決して悪くない。けれども、ネガティブと捉えられやすい発言をするのは抵抗があると思うので、大前提として発言しても大丈夫な雰囲気づくりやコミュニティは必要だと考えています。

心理的安全性があって初めて、人は本質的な対話ができます。校則に関してもそういう場があることで、先生と生徒でしっかりとした合意形成が取れると思いますね。