死ぬ時に後悔しない人生を選ぶ|プロサッカー選手・稲葉修土

海外チームからオファーがきて単身シンガポールに渡る

ープロを目指して福岡大学に進学したあと、どのような学生生活を送ったのですか。

大学1年生からエースナンバーである背番号10番をもらって「絶対にプロになれるわ」と調子に乗っていたら痛い目に遭いました。今考えると、期待を込めて試合に出させてもらっていたんだと思います。

早い人は大学2年生から3年生にかけてプロチームへの内定が決まっていきます。僕は大学3年の終わりまでオファーがなかったため、一度プロへの道を閉ざしました。

ープロへの道を閉ざした後、どうされたのですか。

就職活動をしました。選考試験を受け、4年生の6月ごろに広告代理店から内定をもらったので、内定先に入社するつもりでした。

ー内定を辞退し、シンガポールに行くまでのことを伺ってもいいですか。

僕が広告代理店に内定をもらった後、同級生で元プロサッカー選手だった福嶋洋さんに「明日、もしくは来年死ぬとしたら、広告代理店とプロサッカー選手どっちに行くの?」と聞かれました。

僕は迷わず「サッカー選手に行く」と答えました。このとき「僕はサッカーがしたいんだ」と思って、再びサッカー選手になる道を目指します。

しかし、12月の最後の大会が終わってもオファーは来ませんでした。留年を考えていたある日、大学の監督に呼ばれ、シンガポールのチームからオファーがきたことを知らされて。海外に興味があったので、シンガポールに行くことを決めました。

ー決断だらけの大学4年生を送りましたが、決断するときに大切にしていることはありますか。

大切にしていることは2つあります。1つ目は「死ぬ時に後悔しないほうを選ぶ」、2つ目は「決断には意味がなくて、選んだ道を自分で正解にする」です。

J1でプレーする日を目指してサッカーを続けていく

ーサッカー選手として2年間シンガポールで活躍したと伺っています。実際にシンガポールに行ってどうでしたか。

とても綺麗な国でしたし、英語初心者でもチャレンジしやすい環境でした。ただ、シンガポールは暑いので、練習は午前8時から10時までが多かったです。練習後は体のケアをしたり、試合を観戦したりしました。

ーシンガポール2年目のときに東南アジアのチームとJリーグからオファーが来たそうですね。東南アジアのチームは年俸が当時の3〜5倍だった中でJリーグを選んだのはなぜですか。

東南アジアのチームからもオファーが来ていたのですが、Jリーグに戻るチャンスはこれを逃したらないと思いました。サッカー選手は28歳で引退する人が多いため、東南アジアのチームに行ってJリーグに戻ることはできないだろうなと。

僕もシンガポールにいたときからJリーグでプレーしたかったので、日本に戻ることにしました。

ーJリーグに戻って5年経ちます。1年ずつ振り返ってみてどんな5年間でしたか。

僕はカターレ富山で3年、ブラウブリッツ秋田で2年プレーしました。

カターレ富山の1年目はシンガポールとJリーグの差に驚きましたし、試合に出れなくて苦労したのを覚えています。2年目からは新しい監督のもとで試合に出場して、自分を成長させてくれました。そして3年目が終わるタイミングでブラウブリッツ秋田からオファーをもらいます。

ブラウブリッツ秋田がJ3からJ2に昇格するタイミングで加入し、2年間で多くの試合に出場することができました。同級生のサッカー選手が引退していくなかで、サッカーができる環境にいられるのは幸せでした。

ープロサッカー選手になって7年目ですが、稲葉さんが考えるプロサッカーレベルで大切なスキルは何だと思いますか。

僕の考える大切なスキルはメンタルが6で技術が4です。苦労してテクニックを身につけた選手はたくさんいます。しかし、大舞台で実力が発揮できなかったり、ミスをして本来のパフォーマンスを発揮できなかったりする選手をよく見ます。

プロになるとひとつのミスが命取りになることがあるのです。本来のパフォーマンスを発揮するためにメンタルの強さは必要だと考えます。

ー稲葉さんがメンタルを強くするために取り組んでいることはありますか。

僕は自分がやってきたことに自信を持つようにしています。また、プレッシャーをかけて自分自身に責任を課すようにしています。

ー今後の展望はありますか。

サッカーを続け、いつかJ1でプレーしたいです。また、今年から所属するFC町田ゼルビアで上の舞台を目指していきます。

僕はサッカーで成長させてもらったので、これまで在籍してきたチームに何らかの形で恩返しをしたいです。

ー20代で上手くいかなかったり、選択肢に悩んでいたりする方に向けてメッセージをお願いします。

人生は一度きりです。僕は死ぬときに後悔しないことを一番大事にしています。チャレンジして失敗したり、壁にぶつかったりすると思いますが、自分の人生を大切にして死ぬときに「あの時チャレンジして良かった」と思えるような人生にしていきましょう。

ーありがとうございました!稲葉さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:八巻美穂(Twitter / note
執筆:Kumi(Twitter
編集者:松村彪吾(Twitter
デザイン:安田遥(Twitter