世界に飛び立ち社会課題にチャレンジするプログラムオフィサー島田颯

その先の社会を見据えて何をするべきか

ー2回も海外でインターンシップを終えられてもなお、島田さんのチャレンジは続きますよね。3回目はインドネシアのバリ島へ向かわれたとのことですが、どのような背景でのご決断だったのでしょうか。

3回目のインドネシアへのチャレンジは、「トビタテ!留学JAPAN」という奨学金支援制度の存在が後押ししてくれました。この制度は文部科学省が展開しており、交換留学や海外インターンシップに挑戦する、日本の大学生・高校生に資金援助をしてくれます。

このときの僕は、海外の教育に関わる活動がしたいと考えていたのと同時に、最初のインターンシップで感じた「答えのない課題」に対するもやもやをどうすればよいのか、ずっと思いあぐねていたんです。

海外の社会課題を解決できる持続的な方法は何なのか。そんな学びを得たいと思って、「トビタテ!留学JAPAN」を使ってもう一度海外のインターンシップにチャレンジすることにしました。このときのインターン先が、現在所属しているNGO、Earth Companyでした。

ーNGOやNPOの団体はバリ島にたくさんあるようですが、インターン先をEarth Companyさんに決めた理由は何だったのでしょう。

一つ目は、「持続的な解決方法」を実践できる団体だと感じたからです。社会課題に対して、直接支援するのではなく、インパクトヒーローという課題の当事者をサポートする間接的な支援方法に感銘を受けました。

二つ目は、創業間もない団体にも関わらず一人のインパクトヒーローに1000万円以上の寄付金を集めている実績があり、そのインパクトの大きさにビビッときました。

そして最後に、インパクトヒーローの存在です。日本で普通に生活していたら絶対出会わないような人たちのライフストーリーを聞いて、海外で挑戦するならこの人たちのために自分の20代の時間を使いたいなと思ったのが理由でした。

ーなるほど。実際にその3つの観点から印象深かったエピソードについて教えてください。

Earth Companyの活動で非常に印象深かったのは、設立5周年記念イベントを企画運営したことでした。過去に支援してきたインパクトヒーロー4人を東京に招待し、彼らの活動を報告したのですが、その素晴らしい活動を「もっと応援したいです」と、賛同する声がたくさんありました。

そのイベントをきっかけに、日本の支援者や海外の社会企業家とのつながりが広がり、さらなる寄付をいただく貴重な機会となりました。

ー社会課題に対して当事者とともに歩み、多くの仲間を集めて持続的に向き合える。島田さんにとってインパクトヒーロー支援が、理想形だったのでしょうか。

そうですね。彼らの生きざまにワクワクさせられますし、「自分たちももっと頑張らないと」と思わせてくれます。1年間のインターンシップを終え、就職先にEarth Companyを選んだのも課題の当事者であるインパクトヒーローが人生をかけて課題解決に取り組んでいる、そしてその活動を応援できる仕事だったからだと思います。

この団体で「社会課題に対して自分ができることを見つけたい」、「インパクトヒーロー支援に関わっていきたい」という気持ちに正直に従いました。

ーNGO、Earth Companyへ就職して社会課題にフルコミットしている島田さんですがファンドレイザーとしての難しさはどのようなところにありますか?

特に日本ではファンドレイジングの市場がアメリカに比べてかなり小さい状況です。個人寄付でいうと日本はアメリカの35分の1くらいの規模なんですよ。だから、日本でファンドレイジング業界全体の規模を拡大していくことがファンドレイザーの抱える難しさかもしれません。

Earth Companyでファンドレイザーとして働く難しさは、課題の選定にあると思います。緊急性は高くないけれど、重要な課題に対してどのようにメッセージを伝えて資金調達につなげるかは難しい点です。

例えば、地震や戦争は誰が見ても緊急性のある課題だと分かるので、大多数が共感してくれますよね。でも、インパクトヒーローが扱う課題は日本人には一見なじみがないテーマです。東ティモールの環境教育やマーシャル諸島の気候変動、ロヒンギャ難民の衛生問題など。

馴染みのない課題を理解してもらうには伝え方が難しく、いつもチームでぐるぐる模索していますね。僕たちが大事だと思っているのは、Earth Companyの活動しかり、SDGsに貢献することが目的ではなく、その先の社会がどうあるべきなのかという視点で大きなビジョンを描くことです。

SDGsでいうと、ヨーロッパが率先してその方向性を17個の項目で定めグローバルにそのマインドセットしたことが大きな功績だと思います。では、日本発で何ができるか。グローバルな社会課題を訴えるには、世界各国の実情をみんなで分かり合う必要があると感じます。

グローバルな人材になるには「20代で留学に3回行け」理論

ーグローバルな視点で活躍する島田さんの今後の目標を教えてください。

僕は現在26歳なんですが、20代から30代前半は海外を拠点にチャレンジしていきたいです。一種の修行といいますか、日本の外にいるからこそできることを尖らせていきたいなと考えています。

2030年にはSDGsが終了する一つの節目となります。僕らの世代からポストSDGsのグローバルリーダーが出てくることを期待していますし、自分自身もその一員になりたいですね。

ー海外を拠点に多角的な視点を養うことが一つのキーポイントのようです。最後に、島田さんのように海外に飛び立ってチャレンジしたい10代、20代の方に向けてメッセージをお願いします。

まずは目の前に来たチャンスを取り逃がさないということですね。「これだ」と思えるものがあったら飛びつく。僕も高校生のときに行った沖縄のサマーキャンプは締め切り直前に偶然知って飛びつきました。

そのためには、すぐにアクションを起こせるマインドセットが大事だと思います。常にやりたいことや面白いことを探して準備しておくとよいですね。

日本は同調圧力が強いので休学したり、履歴書にブランクがつくことを恐れる人が多いと思いますが、海外に出たら全く違う価値観に出会えます。がんじがらめにならず、楽に生きてる人たちと触れ合うと自分の頭の中のエクササイズになるし、視野が広がっていきますよ。

僕は極端な話、「20代で留学に3回行け」理論を唱えています(笑)。海外に行けば、圧倒的に困難を乗り越える経験ができます。何かしら予測できないことが起こるので(笑)。日本を外側から客観的に見て、視野を広げると世界の広さをを実感できますし、その経験を得て日本が好きだと改めて思うかもしれません。小さなところでいうと、学校というコミュニティ以外にフィールドを広げるのもよいでしょうね。

僕は、圧倒的に「トビタテ!留学JAPAN」の奨学金制度を使って海外に一歩踏み出すことをおすすめします(笑)。

ーありがとうございました!皆さんも枠にとらわれず視野を広げるチャレンジを続けていきましょう。島田さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:黒澤朝海(Twitter
執筆:川村みさと(Twitter
デザイン:安田遥(Twitter