フリーランス歯科衛生士 鈴木歩の目指す理想の歯科業界とは

さまざまな環境で学びの機会を得る

ー専門学校を卒業後、実際に歯科医院で働かれてみて感じたことがあれば教えてください。

卒業後は、専門学校2年生のころからアルバイトをしていた歯科医院に就職しました。働き始めて2年目から歯周病の治療を担当させてもらえるようになり、歯科衛生士として働く楽しさを知りました。最終的には800名の患者様を担当させてもらって、3ヶ月半予約が取れない状況に。

歯周病の治療をすることで、糖尿病や高血圧の症状が改善されることがあって、患者様から「薬も変えてないのに、身体の調子がよくなった」とお声をいただいたときは、とてもやりがいを感じました。患者様に寄り添って診ていくことが自分自身を成長させてくれたとも思います。

ー歯科医院での勤務を経て、一般企業にて事務職も経験されたそうですね。どのような経緯があったのですか?

1社目のクリニックから銀座の歯科医院へ転職し、日々刺激を受けながら働いていました。そこからいろんな経験をしてみたいと思い、ビジネスを学ぶためOLに転職。そのときは都内で一人暮らしをしていたのですが、家賃も高くて、歯科衛生士の給料では自由になるお金が少ないと感じていました。

転職先を探していたとき、IPO(新規上場)のサポートをする企業の事務職が目に留まったんです。受付業務や事務作業を行う部署で、資格やパソコンスキルも不問だったので、そこで働くことに決めました。

ー歯科衛生士から事務職に転職されて、印象的だったエピソードがあれば教えてください。

配属先は、IPO(新規上場)の際に必要な手続きについてのセミナーをサポートする部署だったのですが、日々の業務の中で税理士や会計士の方とお話をする機会が多くて。歯科業界・医療業界にいたときには、ビジネスについて学ぶ機会が少なかったので、いろんな話を聞くことができ、すごく貴重な経験になりました。そのときの経験が今に活きているとも感じています。

歯科衛生士も患者様も経営者も幸せであってほしい

ーさまざまな活動を行っている鈴木さんですが、歯科衛生士の働き方についてはどうお考えですか?

歯科衛生士って全国に28万人いるんですが、今実際に働いている歯科衛生士は14万人しかいないんです。歯科業界で働く資格を持っていても、私みたいに一般職へ離れたり、産休後に戻ってこなかったり。やりがいは大きいですが、その分大変な職業だとも思うんですよね。

私は、今の就業者が半分しかいないという状況を、歯科医院の仕組みから変えていきたいと思っています。歯科衛生士が幸せに働けて、患者様にも利益がある仕組みを作っていきたい。フリーランスの活動を通して、経営者・歯科衛生士・患者様、三方良しの環境を築いていきたいと考えています。

ー今後の目標や展望はありますか?

歯科衛生士の採用におけるサポートを行っていきたいと考えています。

歯科衛生士の中には優秀な人材がたくさんいるにも関わらず、採用のミスマッチが起こっているのが現状です。就職先が自分に合わず、何度も転職をすることになると、「歯科衛生士は自分に向いていないのかも……」と辞めてしまう原因になると思うんです。

優秀な人材が評価されないことも離職の原因になると思いますし、歯科衛生士の価値を上げていけるようなサポート体制を作っていきたいです。

ー最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

一番大事なのは、自分のことを好きでいてあげること。自分で自分を信じてあげなかったら、誰も信じてくれないと思うんです。自分を好きでいることが自信にも繋がると思うし、それが振る舞いや行いにも影響してくるはず。

もちろん自信が持てるように努力をすることも必要です。コンプレックスがあったとしても、弱みは強みにもなり得ると思うので、自分のことを見つめ直してみてください。

人生において無駄なことは一つもない。辛いことがあっても、一時は悩んで苦しむかもしれないけど、その経験は必ず糧になります。

人間力を磨いたり、人との縁を大切にして感謝の気持ちを持ったりすることが、素敵な縁を引き寄せる。謙虚な気持ちや学ぶ姿勢を大切にして、人間力を高めていけば、必ず努力は報われると思います。

ーありがとうございました!鈴木さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:丸山泰史
執筆:黒木伶(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter