優しさは連鎖する!ワークショップデザイナー・西村菫が「場づくり」で大切にすることとは

「居場所がない」経験から「場づくりをしたい」と決意

ー2019年の1月からドイツに留学されていたと聞きました。先ほど「英語圏じゃないところに」というお話もありましたが、ドイツに留学に行こうと思った決め手はなんだったのでしょうか。

まず英語圏でない国に留学したいという気持ちが強かったです。

またそのときにちょうどトビタテ留学という国がやってる留学の奨学金プログラムを知りました。トビタテ留学は現地で学校に通わなくてもよくて何をしてもいいので、何をしたいかなと考えたときにボランティアをしたいと思いました。

5年間日本でボランティアをやっていたのですが、周りから理解されないことも多かったんですよね。「なんでボランティアやってるの」「ボランティア楽しいの」と言われることもありました。ドイツにはボランティア指標というものがあり、ボランティアに参加する人が多いと聞いたので、ドイツでボランティアが盛んな理由を探りたいと思いました。

ー実際にドイツに行ってみて、「ボランティア大国だな」というふうに感じられましたか?

自然に人助けをできる人が多いなというのが印象的でした。例えば電車の中にベビーカー押してる人がいたら、その人が降りるときに何も言わなくても3人ぐらい人が集まってきてみんなでベビーカーを降ろしたりとか。ボランティアというより、なにか困ってる人がいたら手を差し伸べる人が多かったです。

ー留学はどうでしたか?

ボランティアに関しては思い描いていた通りだったのですが、後半の6ヶ月間ホームステイさせてもらった家族と、うまくコミュニケーションが取れなかったんですよね。日本ではリーダーをやったりするタイプでしたが、ドイツではドイツ語が難しくてうまく自分が言いたいことを言えずに、ホストファミリーからすごくおとなしい子だと思われてしまっていました。日本での自分とドイツでの自分のギャップがすごくあって、家には居場所がないので家に帰りたくなかったです。

しかし居場所がないっていう体験を通して、これまでの自分の人生は居場所がたくさんあったんだなと知ることができました。 そこから日本に帰ったら居場所作りをしたいと思うようになりました。

ワクワクすることをしたいという気持ちから新卒フリーランスに

ー日本に帰国されてからはすぐボランティア活動をされたのでしょうか?

帰国してからすぐにコロナ禍になってしまったんですよね。

また、帰国後にはワクワクするまで就職活動をしないと決意しました。ドイツにいたときに本当にいろいろな人の生き方を見て、生き方って型がないなと思いました。30歳でドイツに留学しに来てる人がいたり、自分で会社をやってたのにそれを辞めて1年間ドイツにフラッと遊びに来たみたいな人がいたり、大学卒業して何年かはギャップイヤーですぐには就職しないという子がいたり。

本当だったら帰国してすぐに就職活動を始めるような時期だったのですが、自分が就職活動したいと思ったら、就職活動にワクワクするようになったら始めればいいかなという軽い気持ちで就職活動はしませんでした。

大学4年生の秋ぐらいまでは、やることがとくに決まっておらず、休学して学生の期間を延長しようと思っていました。そのタイミングでRaise your Flagというファシリテーション講座の仕事をやってみないかと声をかけてもらい、就職という形ではありませんが一つ仕事が決まりました。

一つやることが決まったから休学でなくとも卒業してもいいかもな、一つやることが決まったし、これをもうちょっと増やしていけば楽しいかもと思い、そこが新卒フリーランスの始まりです。

ー実際に仕事をしてみてどうでしたか?

最初はRaise your Flagの仕事しかなかったので、時間がめちゃめちゃあったんですよね。お願いされた仕事、例えばインスタの投稿を作るとかでも、時間をかけてちゃんと掴みながらスタートすることができました。

場づくりがすごく好きなので講座自体もすごく楽しかったですし、参加してくれる受講生のみんなの顔が見えて、こんなに楽しい仕事があるんだと思いました。

ー仕事をするうえで気をつけていることはありますか?

信用を稼ぐということがとても大切だと思います。お願いされたことを期限までにきちんとやるとか、相手の期待を越えるように頑張るとか。まずはRaise your Flagの仕事の中で、一緒に働くコーディネーターの3人からちゃんと信頼してもらえるように、頑張らないとと思いました。信用を稼ぐことで、「菫にならお願いしたい」と2個め、3個めの仕事に繋がっていったのだと思います。

ー菫さんが考える場づくりやチーム作りの魅力はなんでしょうか。

魅力はすごくいっぱいあるんですけど(笑)、とくに私がいいなと思うのは、よくも悪くもリーダーやファシリテーターの影響力がめちゃめちゃ大きいところですね。ファシリテーター・リーダー次第でその場がすごく良くなるし、ファシリテーターが場作りを考えれば考えるほど参加してくれる参加者はいいものを持って帰れると思います。影響力が大きいからこそ向き合う価値があるし、いい場を届けることは価値のあることなんだと思っています。

ー菫さんは場づくりをするにあたって、一人ひとりを見るのか、場全体を見るのか、場作りで気を付けてることはありますか。

全体ももちろん見ますが、どちらかというと一人ひとりを見ています。どうしても全体として捉えがちですが、その場の中にはきっとあまりついてきていない人もいると思うので。誰も置いていかない居場所づくりをしたいと心がけています。