広島県の離島で「地域おこし」を行う高橋貴一が語る周りを見渡すことの大切さ

世界を見たから決断できたアメリカの大学院への挑戦。そして…

ー学生時代にさまざまな活動を行われた中で、最終的には教員になられた理由はありますか?

最初は、教員になる前に一般企業に就職しようと思っていました。しかし、ことごとく面接に落ちてしまって。あまりのショックに大学4年生の4月に1ヶ月引きこもりました(笑)。

引きこもっている間に、自分自身を見つめ直してみたんです。自分を見つめ直すと「人が大事にしている世界観を作るサポートをすること」「外国が好きだから外国と学校をつなげる場を作りたいこと」などやりたいことがわかりました。

また、自分の中で先生はずっと憧れでなりたい職業であることも明確になったんです。さらに、先生になって世界と学校をつなぎたいという想いも分かったので、多様な人材と一緒に2年間で先生になれる認定NPO法人Teach For Japanフェローシッププログラムに参加し、小学校教師になることを決めました。

NPO法人のプログラムは世界中に存在するため、さまざまな国の人や社会人経験を持った人に出会えました。

ー実際に2年間小学校の先生として働かれてみてどうでしたか?

最高でした。先生という職業の魅力の再確認ができ、つながりに恵まれた2年間でした。

2年目はずっと何か行動を起こそうと思い「あなたの夢は何ですか?」「あなたのやりたいことは何ですか?」という質問を、いろいろな生徒に聞いていました。

生徒に質問を問いかける中で、「自分が本当にやりたいことは何だろう?」と自分に問いを投げるようにもなり、理由はわからないけど、海外への憧れが消えていない事実に気づきました。

そんな憧れに気づいたときに、当時関わっていた先生と飲み会やご飯会で相談してみると、「海外に行くしかないよ!」って背中を押してもらって。それがきっかけとなり、アメリカの大学院への進学を目指して受験勉強を始めました。ちなみに当時のTOEICの点数は200点程です。(笑)

ー英語力が低い中で、それでもアメリカの大学院へ進学を決断できた理由はありますか?

憧れと夢に尽きます。

ただ、すぐに現実がわかりましたね。TOEIC200点の当時の英語力は、中学校の英文法がまったくわからない状態です。そこからアメリカの大学院に受かるためには、東大の大学院に受かる最低基準の点数をTOEFLで取る必要があると言われました。

「中学校レベルの英語力から東大レベルを目指す……!?しかも働きながら……!?」絶望でしたね(笑)。

ー結果的に、どのくらいでアメリカの大学院に進学されたのでしょうか?

思い立ってから約1年半で実現できました。大学院への進学は3年間の教員経験が必要だったので、Teach for Japanのプログラム終了後、お世話になった愛媛県で教員経験を積みたいと思い、愛媛県で教員になりました。

もちろん教員と並行して英語の勉強は続けましたが、目標点数は取れなくて。それでも、最後まで入学試験を続けてみようと思ってやり切ったら、合格することができました。本当にうれしかったです。

その後コロナの状況もあって入学を一年間遅らせてもらっていたのですが、結局大学院への進学は辞退しました。

ーアメリカの大学院への進学を辞退された理由はなぜでしょうか?

大学院で学びたいことは「出会い溢れる学校の作り方」と「出会いを活かせるプログラムや場の作り方」でした。円安や家族の事情で進学について改めて考えると、自分が学びたいことは大崎海星高校魅力化プロジェクトで働きながら実現できると気づいたことが一番の理由です。

大崎上島での仕事にやりがいと楽しさを感じていたこともあり「大崎上島で一生懸命生徒に向き合った方が本質的には良いのではないか?」と思い、大学院への進学を辞退しました。この決断をする過程で改めて今までの経験やつながりを見つめ直すと、自分は恵まれていて、すぐそこに実現したいことがあると気づきましたね。

今後叶えたい夢は「出会い」と「挑戦」あふれる学校作り

ー貴一さんがこれからも大事にしていきたい価値観はありますか?

貢献です。

日々出会う生徒や関わってくれる人の笑顔につながるために、自分に何ができるのかを考えて行動していきたいです。

また、変化の激しい時代だからこそ、教育活動の変化も感じています。自分は、学校に関わるキャリアの中で先生方の生徒を思う気持ちの尊さや地域の方の学校への想い、そして生徒たちが持つ未来へのポテンシャルをいつも感じています。同時に教育システムや対話不足でもったいないなと思うことも増えました。

現在の教育は、コロナウイルス感染症や学習指導要領が変わった影響もあり、教育も大きな変化を迎えています。

変化の激しい世の中でも、僕は外部の人と学校をつなげる存在として、本当の意味で社会と教育のつながりを作り続けていきたいです。出会いを通してチャンスがあり、そして挑戦できる学校の仕組み作りができたら、少しずつ誰もがありのまま挑戦できるようになるのではないかと思っています。

ー貴一さんが今後叶えたい夢はありますか?

まずは目の前の生徒たちが夢中になる目標を見つけ、生徒が挑戦する背中を押せる人間になることです。

熱い思いで溢れている先生や、素直で純粋な生徒を教育を通して支えるために実力をつけていきたいと思っています。

失敗できる文化や挑戦できる環境で、さまざまな出会いを学校の中で作り続ける存在でありたいと思っています。

ー最後にU29世代にメッセージをお願いいたします!

私達の環境は、自分が思っているよりも恵まれています。周囲を見渡すと、現状の幸せを感じられるはずです。

ひとつの出会いに感謝して、挑戦し続けてほしいです。

ーありがとうございました!貴一さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:黒澤朝海(Twitter
執筆:八巻美穂(Twitter / note
デザイン:高橋りえ(Twitter