好きなこと“も”して生きていく!エンジニア兼俳優の大森翔吾に聞く新時代の生き方とは

進路決定のために大学院休学

ー大学時代、進路に悩んだ時期があったそうですね。

はい。社会人になって仕事とお芝居の両立をするのは厳しいと考えていたため、正社員になるかお芝居を続けるかで悩んでいました。なかなか決断できず、自分のためにも決めるのは先延ばしにしようと考えたのです。

今までリスクの低い選択をしてきた私にとって、ほかの人とは違うリスクのある道を選ぶのにはかなり勇気が必要でした。

ー進路に悩んだ時期とは違い、リスクのある道を選ぶことができた理由は何だと思いますか?

目に見えている生き方や楽しいと感じるのは演劇のほうだったからだと思います。お金への執着心がなく、普通に就職して安定したお金を稼いで安定した生活ができて何がうれしいのだろうとも思っていました。

ーその後大学院に進み大学院を休学されたそうですが、なぜでしょうか?

大学3・4年生の就活シーズンを先延ばしにして大学院に進み1年過ごしましたが、いよいよあとがなくなり、就職かお芝居かの選択を先延ばしにする最後の切り札として休学を決めました。休学するかどうかも悩みましたが、友だちに相談したり自分で考えたりする中で休学しても損はないと思い、休学を決意しました。

ー休学していた時期は何に取り組まれていましたか?

時間と場所を選ばない仕事はエンジニアだと考え、独学でエンジニアの勉強を始めました。休学期間も就職やお芝居をするにしても、お金を稼ぐための仕事が必要だと思ったからです。

休学して1・2ヵ月後には、マーケティングの会社でフロントエンジニアとしてアルバイトをさせていただきました。アルバイトで学んでいるうちに一人でWeb制作ができるようになったため、独立しようと考えるようになりました。芸能事務所に入ることも決め、休学したことで現在のエンジニア兼俳優という型ができあがったのです。

ー就活シーズンはすべきことが多くて焦る人が多いと思いますが、そんななかでも休学という冷静な判断ができたのはなぜでしょうか?

悩んでいるときに就職かお芝居かを決めることは、私にとっては博打のようなものだったからです。昔から博打を打たないように石橋を叩いて渡る生き方をしてきたため、博打を打たないように考えた結果が冷静な判断につながったのかもしれません。

ー悩んでいる状況での決定は博打だと考えられるようになったのはなぜだと思いますか?

私はお芝居をされていない方と比べて「自分はどのような人間か。何を考えているのか」などと、自分自身の内面と対話する時間を多く持っているからだと思います。

自分自身と向き合う中で、私は環境や人に固着・定着しやすいことに気づきました。もし就職したあとに離職してお芝居をするのは、私にとってはハードルが高いと思っており、できないことだと感じたのです。就職した会社や環境・人間関係に愛着がわいて、離職する選択はできないと思いました。

コロナ鬱になる

ー大森さんにとって演劇は、考え方や生き方の軸となっているのですね。それでは、次の転機となったコロナ鬱について教えてください。

コロナ鬱になった原因は大きく2つあります。1つめがエンジニアの仕事はデスクワークで外に出る機会がなくなったことです。もう1つは演劇活動がコロナの影響を強く受けていたことです。肉体的・精神的なストレスと不安な気持ちに押しつぶされ、やりたいことがあってもできない状態でした。

ーどのようにしてコロナ鬱から回復したのでしょうか?

できることとやりたいことは違うということに気づき、コロナ鬱の回復に向けて自分に優しくしてあげて、自分自身がやりたいことをしようと思うようになりました。できることでも自分自身が本当はしたくないことがあり、やりたくなくてもできることをし続けると、見えないストレスが溜まって自分自身に優しくないと思ったのです。

大学院を休学したときも論文を書けば卒業できるところまで来ていましたが、論文は書けてもやりたいことではないと思い、大学院を退学することを決意しました。

ー大学院を退学して、やりたいことは明確に決まっていましたか?

楽しいと感じていたお芝居と、Web制作で独立したいと考えていました。個人で仕事をすればすべて自分の実績になることに魅力を感じていたため、お芝居を続けながらWeb制作で独立したいと強く思うようになったのです。