「人と人との出会いで新しいものを生む」旅する薬剤師 西井香織のコラボの力

わくわくすることだけをやっていこうとマインドチェンジ

起業に繋がるきっかけは何だったんでしょうか?

インターンで、新卒では新しいことをさせてもらう機会が少ないことに気が付き、大学での経験も踏まえて、既にできている組織に入っても活躍できないと感じました。そこで、新しいことをするために起業しようと決めました。

起業するためにはスキルが足りないと考え、大学を休学して東京に出て、東京の大手やベンチャー、スタートアップなど、様々なところでインターンを経験しています。

インターンで出会った方にアドバイスをもらって、マーケティングやインタビュー調査が仕事になるということを教えていただきました。自分が今持っているスキルでできる事業を考えた結果、マーケティング×アイデアソン事業に至ったという経緯でした。

ー実際に上京して、休学期間中に事件があったそうですね?

はい。休学の途中で、延長申請をしに大阪に帰るときに、ヒッチハイク事件に巻き込まれたんです。

当時はお金がなかったので、東京と大阪の行き来はヒッチハイクでしていました。そのときに乗せてもらったトラックのおじさんに首を絞められ、殺されそうになったんです。

首を絞められながら、走馬灯のように過去のことを思い返していました。そのときにファッション事業はコンプレックスからしたことで、やっていて幸せじゃなかったなと感じて。もし助かったら、自分が好きなことやわくわくすることだけをやっていこうと思いました。

無事助かって帰ってきてから、自分が本当は何をしたいのか、何にわくわくするのかというのを自問自答しました。そこで、新しい物事が生まれる瞬間が好きだなということに気付いたんです。

ヒッチハイク事件からマインドチェンジをして、事業を切り替えて起業したターニングポイントになりました。1回死んだと思って、第2の人生だと考えて生きています。

ー休学後は薬剤師の試験にも合格されて、薬剤師と社長という二足のわらじですよね?

当時は学生だったので、競合優位性や他の事業者に勝ることがなかったんですよね。薬剤師の資格を取って、事業に繋げたいという意欲があったので、大学に戻ってきて資格を取りました。

資格を生かした事業展開をしたいなと思っていたところで、様々な人や物との出会いがあり、『旅する薬剤師』や『ヘルシーラボ』を創設しました。

地方と薬剤師のコラボレーション『旅する薬剤師』

ー様々な事業をされている中で、『旅する薬剤師』は、具体的にはどのような事業なんでしょうか?

『旅する薬剤師』は、薬剤師を過疎地に派遣するサービスです。

マーケティングの一環で地方に行くことがあり、自治体の方と話している中で、薬剤師として地方に人が来る仕掛けができないかなと考えました。

地方は薬局や薬剤師が不足しています。そこで都心の薬剤師に旅をする感覚で短期間働きに行ってもらう事業を考えました。2〜3ヶ月であれば移住のハードルも高くなく、旅行感覚で行けるんです。

小さな薬局では、毎日同じメンバーが狭い場所で働いていて、気分が塞ぎがちになってしまう。そういう薬剤師たちのことも救いたかったんです。様々なところで働くことで、薬剤師自身の気晴らしにもなるんじゃないかと考えました。

目的は地方の人材不足解消ですが、旅を通して様々な人と出会って、人生を豊かに感じてもらいたいという思いでやっています。

最近できた桑茶の事業に関しても、旅する薬剤師で山梨県の薬局に会いに行ったときに出会ったんです。ご当地カフェで出てきた桑茶が美味しくて。

桑の葉を食べている蚕を糖尿病の研究で扱っていたこともあり、自社で商品化したくて農家さんに問い合わせて、一緒に作ることになりました。旅する薬剤師を始めていなかったら、桑茶や農家さんと出会えていなかったと思います。

たまたま出会った人と、おもしろそうだから事業を始める。わくわくするかどうかで事業決定しています。「自分が欲しいものが世の中に価値提供をするか」を事業化のひとつの基準にしています。

決して全てがうまくいってきたというわけではないですが、リーンスタートアップ方式が好きなので、やりながら築いていく、修正していく方式で活動しています。

ー会社名のNEWRONにはどんな意味があるんですか。

NEWRONは脳神経のニューロンのスペルのUをNにして「NEW」と書き、新しいニューロンという意味合いです。「新しい繋がりでイノベーションを創る」という意味でつけました。

NEWRONのミッション「コラボでイノベーションを創出する」にもつながっています。

人と人が出会って何かが生まれるのが好きです。旅って旅先で様々な人と出会える機会にもなりますよね。人と人との繋がりも大事にするようなサービスを作りたいです。旅する薬剤師はまさにそれができていて、楽しいなあと思っています。