次世代に思いを伝えるため団体を立ち上げる
ー多くの出会いを経たからこそ、現在の阿部さんがあるのですね。
はい。自分のやりたいことを実現し、次世代にも想いを伝えるために「ゆでたまご」という団体を立ち上げました。大学の先生が私の活動を応援してくれたことがきっかけです。児童養護施設から自立する若者に向けてガイドブックを作成しました。
辛い人は言わないだけであって、さまざまな事情を抱えています。自分が不幸だと思わずに、そこに縛られずに生きるために必要なことを伝えたくてガイドブックを作成するに至りました。
作成してから数年経ちましたが、わざわざ読んだ感想をくださる方もいます。感想をいただけることは嬉しかったのですが、私は1つ疑問を抱きました。それは「橋渡し」をしないと人とのつながりを作れないことです。
児童養護施設の枠を越え、いろいろな人たちがいろいろな場で交流ができれば本来ガイドブックは必要ありません。コロナの影響もあり、地方を超えての交流が難しい状況ですが、よりつながりを作っていけるようにしたいと考えています。
コロナの影響で当時していた飲食店のアルバイトができなくなったりもしましたが、地域活動によって介護と小学校に携わる仕事をいただくことができました。
仕事にならないような活動でも、人間関係を大切にしたことで仕事につながったり、助けていただいたりすることもあります。
つながりを持つことが社会課題を解決するうえで大切なことだと考えています。つながりを持つことができれば、助け合える場を提供できると思うからです。
地域規模で助け合うことができたら、1人ではできないことも、何とかなるのではないかと経験を通して感じました。
ー「人とつながること」にフォーカスしていたからこそ、現在の阿部さんがあるのではないかと思います。
常に孤独感に苛まれて、高校を卒業しても会社で仕事をしていてもその思いを抱えていました。それでも、参加した異業種交流会で人と人がつながることを知ることができました。
当時19歳で食事会に参加した際に、紙に自分のプロフィールをまとめて人に渡したことがあります。
食事会で出会った方が酔っぱらっていて「覚えられないから紙に書いて」と言われたからなのですが「自分のことを紙に書かないと覚えてもらえない」ことはショックでした。
結果的に、別の人にも私のことを伝えてくれたことでつながりが広がり、いろいろな方が私のことを知ってくださいました。自分を知ってもらうことも大切ですが、忘れないようにしてもらうことも大事なのだと感じました。
ー現在阿部さんはさまざまな活動をされていますが、行政書士や社労士の資格を取ろうと思ったのはなぜでしょうか。
会社を退職したときに、失業手当の手続きが大変だったことがきっかけです。ただでさえ退職して落ち着いていない状況で、手続きの紙には難しい法律用語が並んでいます。知らないことがあるのは、損をしていることに気づきました。
自分にもし知識があれば、今まではできなかった手続きも行えますし、困っている人のために手助けすることも可能です。
法律を知ることで自分や他の人を守ることができたら良いなと思ったので勉強を始めました。
合格に向けて現在も勉強を続けています。
ー阿部さんの今後の展望について教えてください。
野望が2つあって、1つは「近所のおばちゃん」になることです。子どもたちが困っているときに今後の選択肢を示せる人になりたいです。社長など役職が高くなると関わりづらくなってしまうので、気軽に話せる「おばちゃん」になりたいと思っています。
もう1つは無人島事業をやりたいです。無人島を交流の場として、さまざまな人がつながれば良いなと考えています。私が小学生の頃に行っていた、自然のなかで「何もない状態から自分たちの力で価値のある場を生み出す」。そんな場をつくりたいです。
周りの人たちに助けられて現在の私がいると思っているので、今度は私が次の世代に向けてチャレンジを応援し、ワクワクしながら生きていきたいです。
ー最後に、若い世代に向けて一言お願いします。
「自分の違和感」を大事にして、なぜ違和感が生じているのか、自分が何をやりたいのか、それらを考えるだけでなく、人に話してほしいです。
話す過程で会話のキャッチボールを重ね、多くの方から生き方を学ぶことも大切です。仕事ではなく、「自分の人生を生きること」が本業だと私は考えているので、若い世代の人たちには是非自分だけの「本業」を見つけてほしいですね。
ーありがとうございました!阿部さんの今後のご活躍を応援しております!
取材:山本佳奈(Twitter)
執筆:林宏紀(Twitter)
編集者:松村彪吾(Twitter)
デザイン:高橋りえ(Twitter)