あるものを活かす。地域クリエイター・浅沼和馬の思う”つくることの豊かさ”とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第748回目となる今回は、映像クリエイター・廃材大工の浅沼 和馬(あさぬま・かずま)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

地域PRの映像制作や廃材を使用したリノベーションなど、マルチな創作活動を行っている浅沼さん。現在の作っているものやクリエイターとしてのこだわりについて、お話しいただきました。

田舎で気持ちを発散する子どもとの出会いが、自然体験に興味を持つきっかけに

ー自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

浅沼和馬です。1996年生まれの26歳です。現在は映像制作・写真撮影・大工作業の分野でフリーランスとして活動しています。

ー和馬さんは秋田県出身ということで、印象に残っている風景はありますか?

赤とんぼのイメージがありますね。学校に向かう道では、赤とんぼが無数に飛んでいて、秋になると稲穂が輝いてきれいでした。

雪も印象に残っています。20歳になって関東に出たとき、冬は雪が降らないことに驚きました。家の作りがとても寒いので、冬は雪国ではない場所のほうが過ごしにくくて。雪と遊ぶ経験は大事なので、冬を感じる上で雪は必要だと思いました。

ー「自然を感じた方がいい」という思いは、小さな頃から持っていたのでしょうか。

いえ、20歳の頃に気づきました。回りまわって「やはり自然は必要だ」と思ったのです。学生時代は部活・勉強・アルバイトの生活だったので、自然体験をしようと考えている余裕はなかったですね。

ー自然に興味を持ったきっかけはどのようなものでしたか?

大学時代に、友人に田植えに誘われたことがきっかけです。限界集落に100人ぐらいの子どもや都会の人が集まり、とてもいい空間でした。

そこである子どもとの出会いがありました。よく喋り続ける子どもで、「田舎って最高だ!」と叫んでいました。理由を聞くと「うちのマンションだと周りに迷惑をかけちゃうから、ママから『喋らないで!』って止められてるもん」と話していて衝撃を受けました。都市部にいると、隣の人に迷惑をかけないために、自分の気持ちを発散することが難しいのです。世の中には子どもの遊ぶ環境が少ないのだと気づきました。

そこで、子どもの輝ける空間や自分らしくいられる空間を作りたいと思いました。その後は社会人の方たちと交流して、子どもの自然体験を提供するワークショップを開くなどの活動を始めました。

映像制作で気づいた「好きなこと」と「仕事」のバランス

ーワークショップなどの活動を始めてみて、いかがでしたか?

大人たちと交流していて「自分にはできることがない」と気づきました。知り合った大人たちは建築など、自分の仕事にちなんだスキルがありました。スキルがないことで提案ができないことに、もどかしさを感じていました。

そこで自分もスキルを持ちたいと思いました。これまで趣味に留めていたカメラで、自然体験ワークショップの関係者に向けて動画を作りはじめました。そのときにお礼をいただき、初めて自分の仕事を作ることができたのです。

ーその後、写真を撮ったり映像を作るお仕事を続けていたのですか?

はい。自然風景を撮って、旅の様子をまとめることが好きで続けています。まとめていると「時々見返そう」と思う動画がたくさんあって。写真と動画は、時間がたてばたつほど価値が深まると思っています。

ーお仕事を始めてみて、いかがでしたか。

知人からの依頼も受けていましたが、取り組むのが難しかったです。好きなことがそのまま仕事になるわけではなく、相手の実現したいものに応えなければならないので。自分自身が好きでたまらないことをしているときとは感覚が違いました。

しかし、最近は好きなこと・依頼されたことのバランスの取り方が徐々にわかってきました。今後は自分の好きなものを中心に依頼を引き受けようと思っています。

自分の活動を、「仕事」と自分の好きなことをする「自由研究」に分けてみようと考えました。「自由研究」というのは、空いた時間に本当に好きなことに取り組むことです。

僕の場合は、自然や地域プロモーションの分野が好きで続けていきたいと思っています。「自由研究」でたくさんの作品を作って、今後は自然や地域プロモーションの仕事が来るように作品を前面に売り出していきたいです。