心地よく共存できるペットフレンドリーな社会に。PETSPOT代表 羽鳥友里恵

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第712回目となる今回は、PETSPOT代表の羽鳥 友里恵(はとり・ゆりえ)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

広告代理店の営業を経て、経営者として独立している羽鳥友里恵さん。ペットへの認識や価値観に違和感を覚えた原体験から、社会を変えたいと思って立ち上げた、ペットフレンドリーな社会をつくる事業を始めるまでの経緯を語っていただきました。

学生時代の留学と世界半周旅行で、固定概念がなくなった

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

PETSPOT代表の羽鳥と申します。昨年の夏に『PETSPOT』という会社を立ち上げて、「日本をもっとペットフレンドリーな社会にしていきたい」というビジョンのもと、いくつか事業をやっています。

ーそんな羽鳥さんはどんな学生時代を過ごされましたか?

小学生のときに観た『タイタンズを忘れない』という人種差別を描いた映画が心に残っています。日本にいると差別を受けることは少ないですが、文化の違いに衝撃を受けました。

日本以外の国は一体どうなっているんだろうと興味を持ち、『ディズニー・チャンネル』や『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』に夢中になり、海外への憧れが増していきました。

高校生のときにニュージーランドへ1年留学しました。自分で授業を選択して受講するという仕組みと、好きな分野を伸ばす教育システムが興味深かったです。限られた留学期間で、何を学びたいかをしっかり考えるきっかけになりました。

ー大学生時代には世界半周旅行に行かれていますよね?

はい。大学3年目で、単位移行ができるリベラルアーツ制のある海外の大学に編入しようと考えました。しかし大学での学びより、「より多くの国や文化、思考に触れたい」「今しかできないことをしたい」と想い、編入は断念しました。

「世界を見に行こう、それにお金を使おう」と、世界半周旅行に出かけます。

1カ国ずつというよりも、2〜3週間時間をとってアジアを回るみたいな感じです。バスに乗っていくほうが現地の様子も見られるかなと思い、各地のバスで移動していました。

様々な国を見ると、それぞれ文化も考え方も違うので、固定概念そのものがなくなっていきました。そこから海外と日本の違いを「なぜだろう?」と考えるようになりました。

仕事を変えるきっかけは、愛犬の最期と愛猫との出会い

ー大学卒業後は日本で就職されたのですよね?そこから起業へとつながるきっかけは何だったんでしょうか?

私が8歳のときから、実家でゴールデンレトリーバーを飼っていました。私もかわいがりつつ、母には姉妹のように育ててもらいました(笑)。振り返れば、小さいときの思い出に必ずわんちゃんがいるんですよね。

その子は15歳まで生きて、私が入社してすぐのタイミングで亡くなりました。配属されて4日目の出来事で、打ち合わせ中に家族からの電話に出ていいのかもわからず、終わってLINEを見たときには、愛犬が天国に行った後でした。

自分のなかで、そのとき行動できなかった後悔が大きいです。

その翌日がお葬式だったので、お休みを取りたいなと思ったのですが、なかなか取れなかったそのときの経験が、今の私にとって1番大きな出来事だったなと思っています。ペットも家族ですが、社会ではまだ家族の一員だとは思われていないんだなと、そのときに体感しました。

ー価値観の違いを痛感されたんですね。その後、猫ちゃんとの出会いもあったそうですね?

はい。入社2年目の夏に愛猫ミアとの出会いがあり、忙しく働きながらも一緒に暮らしはじめました。猫を飼うのは初めてでした。わんちゃんはわかるけど、猫ちゃんは食べるものも体の大きさも、性格も全然違ったので、わからない中での手探りでした。

仕事が忙しい時期に飼い始めてしまったので、仕事と子猫のお世話を両立できないこともありました。それが精神的に辛かったです。「猫に申し訳ない」「このままの働き方でいいのかな」と思いながら働いていました。

当時広告代理店の営業をしていたので、クライアントさんのところに行ったり、撮影で丸一日家を空けたりすることもありました。

今だから言えることなのですが、合間をみて家に帰り、ミアと遊んでご飯をあげていました。たまたま徒歩10分の距離に住んでいたので。

ー猫ちゃんを最優先にしていたんですね。

ミアが鼻炎の持病持ちで、涙や鼻水が出ていて、たまに呼吸困難になってしまう時期があったんです。急に症状が悪化するので、薬をこまめに飲ませないといけない状況でした。

翌朝すぐ病院に行きたくて、「午前中だけお休みをいただきます」と報告したときに、チームのメンバーに「猫の病院で仕事休む人初めて見た」と言われました。「私の感覚とみんなの感覚って違うんだな」と、ギャップを感じました。

日本ってペットの家族化と言っているけれど、社会がまだまだ追いついていないというか、壁が見えて。ペットと一緒に行けるレストランの割合とかホテルの割合とか、ペットを飼っている人向けの福利厚生を導入している企業の割合は約2〜3%なんです。

ペットのことを最優先にしたくてもできない。こういった体験が日本を変えていきたいというきっかけになりました。

4世帯に1世帯は犬か猫をペットで飼っている。多いと捉えることもできますが、4世帯に3世帯はペットを飼っていない方がいらっしゃるということです。

社会を変えていこうと思うと様々なアプローチが必要だと、課題意識が芽生えました。やりたいことが明確になったことで気持ちも固まり、仕事を変える決断をしたのが入社3年目です。