自分が持っていない強みを持つ人との出会い
ー退職するときには次の仕事は決まっていましたか?
辞めてから次の仕事を探しました。辞めた後にこれからのことを考えたいとの考えからです。
ーそれはかなり勇気のいる決断かと思います。高砂さんは普段からまず行動してみる方なのでしょうか?
そうだと思います。後先考えずに行動するタイプですね。物事は結果オーライだと考えています。ただ、辞めてから「自分はやりたいことが特にないんだ」ということに気づきました。
入社前はビジョンに共感する会社でやりたいことを見つけようと思っていたのに、すっかり忘れてしまっていて。自分は何をやりたいんだろうと迷走していました。
ー迷走していたときの高砂さんの取り組みをぜひ教えてください。
迷走していた時期は自分でノートを作り自己分析しました。これまでの経験や会社をなぜ辞めたのかといった内容を言語化することを意識していましたね。
会社を辞めた当初は、なぜ会社を辞めた方がいいと考えたのかという理由まで視野を広げて考えることができていませんでした。理由や考えを言語化ができないことで、自分の進むべき道がわからず行き詰まってしまったのかと今では思います。
ーそんな時期に、今につながる重要な出会いがあったそうですね。
今は終了しているサービスの「bosyu」という掲示板で、偶然共同代表をする高原さんと出会いました。コーチングの体験ができることを知って、マーケティング職だったこともあり興味を持ち受けてみました。
ー掲示板のタイトルは「肌よわさん集まれ〜」だったとのこと。ご自身が肌トラブルに悩まされた経験があったのでしょうか?
私自身小さい頃から肌が弱く、今もアトピーが残っています。高原さんの募集は、肌の弱い方向けのサービスのヒントになるようなインタビューをしたいとの内容だった。
肌の弱い自分が何か力になれそうと感じたのと、マーケティング職の一環としてヒアリング業務をやっていたので、受ける側から得られるものがありそうと思い参加しました。
あくまで、サービスのヒアリング相手として参加するつもりだったので、まさか自分が一緒に会社を作るとは全く思っていませんでした。
ー初めて高原さんとお会いしたときが印象に残っているそうですね。当時の心境についてお聞かせください。
最初にお会いして、全然ヒアリングじゃないなと驚いていました(笑)。私はサービスのヒアリングのつもりで参加したのに、雑談の時間がとても多かったんです。
私が元々カラーコンタクトの会社に勤めていたという話にとても関心を寄せて聞いてくださったり、今自分が転職活動をしてることも話したりしました。そのときに、高原さんは、目の前の人をちゃんと見て、その人を楽しませることや向き合うことを丁寧にする方だなと感じていました。
ヒアリング終了後には高原さんからメッセージが届いて、「私から、この会社なら紹介できるよ」と転職先をいくつも送ってくださったんです。
高原さんの姿に感銘を受けて、「給料なしでもいいので、高原さんの仕事内容を手伝いたい」とお伝えしました。ちょっとでもお手伝いがしたいとの想いから今の仕事に携わりはじめました。
ー高原さんの仕事を手伝おうと思った理由は他にもありますか?
過去に、「自分が持っていないものを持っていて、反対に自分が持ってるものを持っていない人との方が起業やサービスを作る上では重要」だと感じたことがあって。それも影響しているかも知れません。実は起業する前に友達同士で副業で新しい事業を作ることに挑戦したことがあります。メンバーは当時の会社の同期とその同期の友人と私の3人。自分が苦手なことはメンバーも苦手という状況だったため、事業は上手く広げられませんでした。
高原さんと出会ったときに、これはチャンスかもしれないと直感で感じました。
スタートアップ当初は方向性がなかなか定まらず
ースタートアップ当初にはお寺や展示会、科学館などビジネスとは一見関係がなさそうな場所にも行かれていたそうですね。
オフィスにいる方のアドバイスで足を運んでいました。
今のオフィスはシェアオフィスで、スタートアップの支援をされている方が多い中で「視野を広げるために科学館や展示へ行ってみな」と教えてもらい、アイデアが思うように形にできずに悩んでいたので、言われるがままに行っていました。
ーもともと医療関係職でなかった高砂さん。知識を学びながらアイデアも出す中で苦労したところは?
私が苦労するのは、勝負する領域を決めきることができない部分です。人をワクワクさせたいという想いがあり、それを実現させる手段を思いつくのですが……。その中から「自分にとってどれがいいのか」「何をやりたいのか」を決めることに迷ってしまいます。
社会の課題解決のための手段は無数にあることを理解しつつ、自分はこの領域でアプローチしようと決めて、取り組んでいくことこそ前に進んで行く上で大切なことだと考えています。
私が苦手な「領域を決定すること」を高原さんが決めてくれたから、私はそこに向かって走ることができています。苦労はありつつも、とてもありがたかったという気持ちの方が強いですね。
ーまさに強みが違うからこそですね。その後について教えてください。
「社会にどんな課題があり、その中で私たちが解決したい課題は何か」を考えた上で、事業内容を検討していくようになったのは会社にとっても大きなターニングポイントです。
サービスを作るときの考え方にはマーケットインとプロダクトアウトの大きく2つ種類があります。
マーケットインは「社会の状況を見て社会にどんな課題があるかを決め、その課題にはどのような解決策を提示できるか」を考えるものです。
一方プロダクトアウトは、自分はこれを作りたいとか、社会にあったら絶対面白いという部分を考えるので、その方法でどんな課題を解決できるのかは後から考えるというやり方です。私たちは元々プロダクトアウトで考えていました。
プロダクトアウトで事業を作るのは難易度が高く、形にならなかったので、まずは世の中にある大きな課題や、より良くしたいことに取り組むマーケットインから始めることにしました。
事業の基盤をしっかり作り、それから自分達が作りたいものを作るという流れの方が最終的に自分達のやりたいことができるという考えに、変化したタイミングでした。