東大卒Jリーガー、おこしやす京都AC代表・添田隆司が挑戦することで見えた未来

安定した道ではなく、サッカー選手へ

ー安定した企業を選ばず別の道に進む決断をしたと思いますが、きっかけは何だったんですか?

4年生の12月に、元東大のヘッドコーチから藤枝MYFCの練習参加の誘いを受けたのがきっかけです。当時はJ3のカテゴリができた初年度で、J3はどれくらいのレベルなのだろうという興味から、練習に参加しました。

実際に練習に参加するとレベルはかなり高くて、もし入ったとしても自分は一番下からのスタートだなと感じました。その後当時の藤枝MYFCの社長から、選手兼社員として入らないかとお誘いを受けて、入団に至りました。

-大きな決断ですね!決め手は何だったのでしょうか?

レベルの高い環境でプレーした時に、「サッカー選手として、どこまでいい選手になれるのか」というところに、興味と探求心があったからというのが一番の理由だと思います。

ーサッカー選手になってからのキャリアは、当時どのように考えていましたか?

当時は引退後にスポーツビジネスに関わるとは思っていませんでした。選手として上手くいかなかった場合は、頑張って公認会計士の資格を取得すれば、何とかなるかなという算段は考えていました。

「失敗してしまっても、こうする道がある」という安心感があったからこそ、サッカーの道に進むという挑戦ができました。

ーその挑戦が今のキャリアに繋がっていますね。実際に選手としてプレーしてみてどう感じましたか?

2年半プレーして10試合出場できました。スタメンでも1試合出させてもらうことができて、自分の中で成長を感じました。練習にいくのが怖くなった時期もあったのですが、苦労することは予測していたので、なんとか耐えることができました。

また、選手という立場もありながら、スタッフとしても活動していたので、地域のみなさんと関わる機会も多くありました。

学童保育に訪問する機会があったのですが、僕みたいな選手の訪問でもすごく喜んでくれたのが印象的でした。プロスポーツが地域の方々を笑顔にしていく様を、当事者として見ることができたのはとても大きな経験です。

自活経営できるプロスポーツクラブのモデルを作りたい

ー京都おこしやすACのスタッフとして活動されるきっかけは何だったのですか?

藤枝MYFCでプレーした後、アミティエSC京都(現:おこしやす京都AC)に移籍したのですが、あと1勝すればJFL(4部)昇格できるというところで負けてしまい、非常に悔しい思いをしました。

その時に昇格したチームより、何としても素晴らしいチームを作っていきたいと考えた時に、自分が選手として貢献できるのはあと数年だと感じ、今のうちに運営側に回った方が、より長い目で見た時にチームの力になれると感じたため、サッカー選手として引退し、スタッフとして働く決断をしました。

―おこしやす京都ACはサッカー以外にどんな取組をしている会社ですか?

プロサッカーチームの運営が主な事業で、売り上げとしては多くがいわゆるスポンサー収入です。僕の主な仕事内容としては、京都の企業様と様々な取り組みをして、プロサッカークラブを事業面でうまく活用してもらいながら、いいチームを作っていくことです。

ープロスポーツチームが地域の方と交流する機会が増えている印象なのですが、おこしやす京都ACでも地域の方と活動することはあるのでしょうか?

2021シーズンは選手のうち8名が選手兼スタッフとして活動しており、地域の企業様や店舗様に1件1件ご挨拶とクラブの紹介をさせて頂く訪問活動をしています。

チームの存続・発展には、関わる方々の支えが必要不可欠です。まずこちらが地域に住まう方々に対して関心や興味をもっていかないと、相手からも興味関心をもっていただけないので、そういうところを大事にしています。

ーセカンドキャリアとして他の選択肢もあったと思いますが、チームを底上げしたい気持ちが強かったんですね。

プロスポーツ業界に関わって行く中で、プロスポーツクラブはすごくポテンシャルのある産業だと感じました。地域に住む人々や企業様など、360度の方々をフラットに繋げ、お付き合いできるのは、プロスポーツクラブならではだと肌身で感じました。

一方で日本のプロスポーツクラブは大企業がチームを持っていることがほとんどで、事業としてスポーツだけで自活で経営をしているクラブが少ないと感じています。

また、他の業界に比べると、業界として未成熟な部分も多く、課題も山積みであると感じています。

僕自身プロスポーツ業界にお世話になった身でもあるので、スポーツ業界全体をさらに良くしていくために、自分のような人間がずっと働いていくことが重要だなと思い、スタッフとしての活動を経て、代表になりました。

ーどうすればプロスポーツクラブが自活経営していけるようになると考えますか?

関わる企業様と、持続的な関係を築くことが大事だと考えています。そのためにサッカークラブを事業に対してどのように活用して頂くか、という提案をおこなっています。

例えば、採用面を更に向上させていかれたい会社様とは、プロサッカークラブを採用面に活用頂き、体育会系人材などにリーチしていく取り組みをしています。

合同説明会のブースで、おこしやす京都ACのユニフォームやポスターを飾って頂き、前面におこしやす京都ACを出して頂くことで、ブースの来場者を前年比で2倍以上増やすことができました。

ー最後に今後の目標を教えてください。

これから世の中も発達して、余暇の時間はますます増えていきますし、東京への一極集中も進み地方の存在意義が問われていく中で、地域にあるプロスポーツクラブの価値が高まっていくのは必然だと考えています。

日本のプロスポーツは誰かが支えて成り立っていることも多く、自活経営の明確なモデルは無い状況と考えています。

まず個人の目標としては、おこしやす京都ACでの活動を通じて、クラブ経営のモデルケースを作って行きたいと思っています。

ーありがとうございました!添田さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:大庭 周(Facebook/note/Twitter
執筆:川鍋由紀
編集者:杉山大樹(Facebook / note
デザイン:高橋りえ(Twitter