ラグビーを通して気づけたみずからの価値観。プロ7人制ラグビー選手・林大成

代表、そしてフリーランスのアスリートとして進む道のり

ーそんな背景があったんですね。その後、代表として活動される中でいろんな感情を持たれたそうですね。

ワールドカップで日本代表が南アフリカを倒した試合に感動して、自分も感化されて本当のトップを目指したいと思うようになりました。毎年ラグビーをやめるのか続けるのかを考えていたのですが、プロ選手としての自分の価値を上げていきたいと思うようになったのを覚えています。

ちょうどプロ2年目にセブンズに初めて選ばれて、世界大会でパリに行きました。グラウンドに立ったときの高揚感や緊張感、会場の雰囲気、盛り上がり、プレーするときのピリピリ感などはトップリーグでプレーするときよりも高かったです。

当時15人制で日本代表を目指すぞ、という気持ちはなかったのでセブンズ一本に絞りました。

ーそこまでの思いがあったんですね。その後はどのように活動されたんですか?

家を取っ払ってアドレスホッパーになりました。他のラグビー選手がしていないことをすれば、レアカードになると思うんです。現在浴びていない注目も浴びることになりますし、そこで積み上げる実力や活動は話題にされやすいというのも分かっています。

さきほどお話したステップの練習を配信しつつ、アドレスホッパーを活かして全国飛び回って、練習相手を探しました。すると、日本各地から連絡が来て、日本各地に練習相手が出来るようになったんです。

また、もっと多くの人に応援してもらいたい気持ちや交通費を集めたいという気持ちがあったため、全国ステップチャレンジと名付けたクラウドファンディングを行い、最終的には110万円近く集めることができました。

元々セブンズは国内での試合が少ないんです。普段の自分を見てもらって、試合を見たいと思ってもらわないと、試合は見てもらえません。まずは個人の活動で見てもらうのが大事かなと思います。

探求する姿勢が生んだ向上心と大舞台への希望

ー今後の目標をお聞かせいただけますか?

中学から高校、高校から大学と環境のレベルが上がっていくときの楽しみと、今の環境で僕がパーソナルコーチをつけて、出来なかったことがどんどん出来るようになっていく楽しみは似ていて。代表での試合は世界最高峰のレベルの舞台であり、鍛錬してその舞台でプレーするというのは幸せなことです。

そして現在はパリオリンピックを目指しています。おそらく観客も入れるはずなので、オリンピックという大舞台での高揚感も感じられるのではないかと思います。トップのアスリートとして自分で出場権を勝ち取って、そこでプレーすることは目標のひとつです。

また「らぐびーくえすと」もより大きなメディアにしていきたいです。周りに価値を生み出していくことはもちろん大事です。それに加えて、この「らぐびーくえすと」を大きくしていく過程で、自分自身が価値を感じて楽しむことが大事で、さまざまな活動を通して日本のラグビー界に良い影響をもたらせたら嬉しいですね。

ー最後にこの記事を見ている読者に向けてメッセージをお願いします。

まずは「疑うこと」です。これまで当たり前のように価値があると思い込んでいたものでも、実は自分にとってはそうではないことだってあります。

人からどう見られるか、どう思われるかを気にしていたら、うまくいくことだけが成功になってしまいます。確かにうまくいって初めて報われる世界もあると思いますが、自分の中で価値を感じられることは、どう転んでも納得できるものなのかなと。

「どうすれば納得出来るのかな?」と考えることが、自分自身の価値基準で決めることにつながります。もちろん決断するときはどうしても悩んだり、不安になったりしますが、人生は体験してこそです。

自らの体験だからこそ喜びを得られますし、そこから得られる知識こそが自分の知識だと思っています。私自身はこれほど価値のあるものはないのではないか、と感じています。

ーありがとうございました!林さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:黒澤朝海(Twitter
執筆:窪田瞭(Twitter/Instagram
編集者:松村彪吾(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter