人生初の挫折で心から自分と向き合う
ー結構危ない領域まで行っていますね(笑)。
そうですね。体力も精神力も削りながら教師をしていたため、ダメージが蓄積されていたのです。それがこの後の挫折に繋がっていると思います。
ー何が挫折の原因だったのでしょうか?
同僚との「教員って同じサイクルの繰り返しでハムスターみたいな生活だよね」という会話にとても共感してしまって。高校3年生の担任で、これ以上できないレベルでがんばって完全燃焼してしまったので、これを何度も繰り返すのは無理だと感じて辞めたのです。
そもそも大学時代にあまり自分のキャリアを考えずに教員になっていたので、もう一度仕切りなおそうと考えて別の学校に転職しました。
ただ、私の中で大部分を占めていた人間関係が、退職してしまったことにより、ゼロからになってしまい、非常に絶望感がありました。また、能力は変わらないにも関わらず、新しい学校では評価が変わって新米として扱われるので、当時の自分には耐えられなかったです。
自分で選んだ道でしたが、また一からキャリアや信頼を作るのがとても苦痛でした。
辞めてからいろいろなことが起こって「何でここまでやってきたのか。社会の中にいる意味はあるのか」と毎日考えていて、常に落ち込んでいました。今まで大きな挫折はなかったので、急にレーンから外れる経験をしてダメージは大きかったです。
ー人生初の挫折を味わったわけですが、どのように感じていましたか?
今までのキャリアを生かしつつ、挫折した経験をどう生かせるか考えたとき、同じ経験を若者にはしてほしくないと思いました。
これまで自身のあり方やキャリアを真剣に考えずに生きてきたので、このときに初めて心から自分自身と向き合いました。この時期はいろいろな人に話を聞いたり、自分からいろいろな経験をしに行ったりして、自分自身のあり方をすごく模索していたと思います。
ー挫折してから起業するまではどのような道のりだったのでしょうか?
企業の社長さんや団体の代表の方とお会いする機会をいただきました。いろいろな方の人生をロールモデルに、自分の人生を照らし合わせて考えた結果、起業するしかないと思いました。
人間関係も環境も良かった最初の学校に戻りたいという思いはありましたが、戻ることはできなくて。それなら自分で作るしかないと起業を決意しました。
ー起業を決意した理由がすごいですね。
環境に流される自分ではなく、環境を作る自分でありたかったので起業したほうが早いと思いました。起業を決意してからは自分の進むべき道が見えてきたので、徐々にモチベーションも上がっていきましたね。
ー起業に至るまでの過程をお伺いしてもよろしいでしょうか?
人に影響されやすいので「何でまだ起業してないの?」といろいろな人に言われて、起業の準備を始めてしまったんです(笑)。知人からの紹介や繋がりがあってトントン拍子に進んで、気づいたら会社が存在していたという状態でした。
Web系の仕事をしている友人が多かったのと私自身もデザインが好きだったので、ホームページや動画の作成などを行いながら、ビジネスの種を探していました。
ー教育とは離れた事業の中で、テラコヤはどのようにして生まれたのでしょうか?
自分自身が先駆者になれる分野は何か考えると、やはり教育しかないと思いました。
「回りくどいことしないで教育やれよ」と言われて腹が立ったので、なんとか教育に携われる方法を探した結果、ひらめいたのが、カフェが開いていない時間に塾を開くことでした。
ひらめいた次の日からはカフェの営業に回りました。そのうち1店のカフェが「教育のためなら無料でいいから使ってくれ」と言ってくれたので、生徒からもお金はもらえないと思いました。そこから無料の大学受験サポートが始まったのが正直なところです。
無料で大丈夫?と心配され、NPO法人化
ー今はNPO法人テラコヤになっていますが、どのような学習支援をされているのでしょうか?
元々あったWeb系の会社の一事業としてカフェ塾テラコヤを立ち上げました。しかし、会社の名刺を持ってテラコヤの営業に回ると「無料でやってて大丈夫なのか」と沢山の人に心配されました(笑)。
要らぬ誤解を招くのならテラコヤの事業を独立させようと思ってNPO法人化しました。
現在はカフェやオフィスが使われていない時間をテラコヤで有効活用させていただいています。全部で4つの拠点があり、大学生のボランティアさんにチューターのような形で勉強を教えてもらっています。
ーオフィスでできるのは魅力ですね。
そうですね。人材採用にも繋がりますし、学習支援をするのは企業側にもメリットがあります。なおかつ、高校生・大学生も企業さんを近くに感じられたり、大人の姿や働き方を知る機会になったりしています。
社会人とは何かを知れるきっかけになっていると思うので、結果的に私が社会人スタートの前日に感じた不安や恐怖はあまり経験しないと考えています。