父に会いにタイへ。衝撃の事実が発覚
ー21歳のときの出来事を教えてください。
父親がタイでビジネスをやることになって、半年か1年は会えない期間が続いていました。部活の友達とカフェで話しているときに、Facebookでたまたま父親のアカウントを発見しました。
家族構成を書く欄に私や弟の名前が書いてあったのですが、さらに下に全然知らない名前があって。その当時5、6歳くらいの男の子の写真が載っていて、知らないところで弟ができていた衝撃の出来事でした。
ーかなり動揺があったと思うのですが、気持ちの動きはどうでしたか?
その場では、友達3人とすごいものを見つけてしまったとヘラヘラ笑っていました。一人になったときに「自分はどこの国の人なのか?」や、自分の家庭のことなど答えのない問いに悩むことがあり、突然悲しくなって泣けてきたのを覚えています。
高校生のときから大学生のときまで、定期的に、自分の考えや感情と向き合いながら生きていましたが、この件をきっかけに頻度と大きさが増していきました。
ここではどのように考えて気持ちを変化させていったのでしょうか?
気持ちの切り替えはできていませんでした。21歳から23歳までは人種やお金、家庭などの答えのない問いにずっと悩んでいました。
変化があったのは、23歳のときです。過去の経験を他者に打ち明ける機会があって、辛かったときの話をしました。素直に思っていたことを話すと、徐々に自己開示が進んできて、もやもやを自分の外に出し切ったころには、悩むことは何もなくなっていきました。
状況は何も変わっていないのですが、自分の心の内を言葉にして打ち明けると、ネガティブに捉えていたものが変わって、なんとも思わなくなりましたね。
ーここでまた新たに発覚したことはありましたか?
弟だけでなく、実はもう一人妹もいることがわかりました。
父親に誘われて、大学院2年生の夏休みに1人でタイに遊びに行きました。1週間ほど観光する予定でしたが、2日目の朝にタイに子供がいる話をされて。
「いやいや私はそんなこと知っているし、2年前にFacebookで見つけて、私はもう何も思っていない。離婚もしてるからあなたの好きなようにしたらいい」と言いました。
そのときに、父親がもうひとり妹がいることを打ち明けてきたのです。観光してる場合ではないと思い、妹とタイの奥さんに会いに行きました。1週間ほど泊めてもらい、仲良くなれて、息子として快く受け入れてくれたのが嬉しかったです。
この話をするといろいろな人に面白がってもらえるので、大変気に入っているのですが、状況は変わらなくとも自分の捉え方が変わったと思います。
私には、バングラデシュ、日本、タイの2人ずつ計6人の兄弟がいます。上が31歳、下は5歳ですが、国は違えど兄弟同士SNSで繋がっていて交流をしています。
これまでの経験から見つけた、やりたいこと
ー大学院ではどのような勉強をされていたのですか?
放射線の被ばくに関する研究をしていました。放射線の被ばくには、外から被ばくするパターンと、放射線を出す物体を体内に取り込んでしまい、被ばくするパターンの2種類があります。
後者は、空中にどれだけ放射線を出す粒子があるかで決まります。空中にある放射線を出す粒子が、どのような室内挙動をするのか実験して、数字で解析して議論していました。
ー就職活動では専攻とはまったく違う道に進まれますが、そのことについて教えてください。
このまま研究を続けたり、技術系の道に行ったりするとやっていけないと思って。一方でラクロスは、何時間やっても、どれだけ辛いことがあっても平気だったので、ずっと続けられると思いました。
ラクロスと同じ感情を再現できるようにしたいと思い、大学院生の推薦を利用して技術系に就職はせず、別の進路を考えました。
ーディレクターやグロースハッカーを目指していくのは、何か人との出会いや印象的な出来事があったのですか?
偶然です(笑)「自分が何をすれば打ち込めるのか?」を考えたときに、前提条件として、「顧客との距離が近く、手触り感のある仕事」がいいなと思っていました。大学の研究は基礎研究だったので、これが誰の、何に役立つのか実感を持てませんでした。
それよりはコーチの経験から、関わった人たちに直接変化が起こるものがいいと思って。就活の面接では、うまくいっていない人への支援がしたいと話していました。
私が答えのないことに悩み続け、どうしようもできない状況にあることの辛さを経験していたので、そのような人にきちんと役立つことに時間を使っていきたいと思ったからです。
自分の打ち込みたいことを話していった結果、現在の職種にたどりつきました。
ーお仕事の展望を教えてください。
うまくいっていない人に対してなんとかがんばりたい思いは変わらず、プロダクト開発の仕事をこれからも続けていきたいと思っています。
今は消費者が使う飲食領域のサイトをつくっていますが、もっと自分が改善できる幅と大きさを広げていきたいです。飲食店の人が使うツールを開発したり、将来的には飲食領域に限らず、いろいろなプロダクト開発に挑戦したりしていきたいです。
ー最後にメッセージをお願いします!
いろいろな悩みを抱えていたのですが、捉え方が変わってからは非常に楽になりました。悩みの多くは捉え方次第です。答えのない問いに悩むことなくどう折り合いをつけられるかが、元気でいるために大事なことだと思います。
具体的な行動方法は、人に打ち明けたり、紙に書いたりして、自分の外に出すこと。自分の外に出すことで俯瞰してみられるようになって、自分の中で捉え方が変わると思います。
5年後、10年後には悩みのほとんどは忘れているので、今悩んでいることは、今この瞬間に解決できます。
ーありがとうございました!河原さんの今後のご活躍を応援しております!
取材:山本佳奈(Twitter)
執筆:後藤優奈(Twitter)
編集:本庄遥(Twitter)
デザイン:安田遥(Twitter)