プロサッカー選手・齊藤隆成に聞くデュアルキャリアという選択肢

デュアルキャリアの魅力

ー起業されたお話を詳しく聞かせていただいてもよろしいですか?

自社の化粧品ブランド『Re young J』を作って販売しています。もともと僕はとても肌が弱いことに悩んでいたのですが、それが嫌でスキンケアを試していくうちにどんどん肌がきれいになっていきました。

その経験をもとに、外でスポーツされる方の紫外線ケアをしたいと考えて自らブランドを立ちあげることになりました。

会社のコンセプトは「若返る旅」。僕を含めて会社にいる3人の名前の頭文字を取って社名は『Re young J』としました。

ースキンケアブランドにされた理由はほかにありますか?

やはり自分の一番好きなものをやりたいと思って、スキンケアに挑戦しようと考えました。
サッカー以外のスポーツもしたことがあるのですが、なかなか長続きしなかった経験があるので「好きなものなら長続きする」と思ってスキンケアを選択しました。

ーサッカーとスキンケアブランドのどちらも本気で取り組むためにやっていることは何でしょうか?

スケジュール管理をしっかりしています。慌ただしくなってしまうのが嫌いなので、ある程度サッカーに集中できて、会社の業務もしっかりと進んでいけるようにスケジューリングして動くようにしています。

自分ひとりでやっていたら仕事を詰め込んでしまいますが、一緒にやっている仲間が2人いるのである程度分担しながらできています。

ーサッカーと会社のやりがいや面白さの違いはどんなところですか?

サッカーだけをやっていたときは、サッカーのコミュニティでしか人との関わりがなく、サッカーのことだけを考える日常でしたが、経営していくにあたっていろいろな人と会う機会が増えました。その方たちからサッカーをやってこなかった人の考えも教えていただけるので、人間力が上がってきてると思いますね。

最近だと、デュアルキャリアを実践している方から「現役中に立ち上げたほうが周りの人がもっと応援してくれるから、早く始めて正解だよ」と言われて。自分の挑戦は間違いではなかったのだなと思いました。

ー化粧品の事業に取り組むことになって、ものづくりの楽しさやむずかしさを感じることはありますか?

それまでもスキンケアの研究はしていましたが、実際に作るとなると、さらに奥が深くて未熟さを実感させられています。製造にあたっても、コロナ禍で容器の納品が2ヵ月ほど遅れてしまったことがあり、ユーザーの皆さんにご迷惑をかけてしまいました。心苦しかったですね。

スキンケア成分の勉強をしていて、会社のミーティングを重ねていくうちに自分の知識が増えていくことには、楽しさを感じます。知識が増えることで人との会話の幅が広がりました。

製品を作っていくうえで、スキンケア成分の研究をしている方と話をする機会があります。最初のころは自分の知識が足りず、まったく話せなかったのですが、だんだん自分からも意見できるようになってきました。

ーサッカーに関わらず、何かひとつのことを続けてこれたからこその強みや、商品づくりに今までの経験が活きた場面はありましたか?

目標を持ち、目標を叶えるまでのスピードや、やり方は現実的に理解しているので、目標に向かって試行錯誤しながら進んでいくのは得意だと思っています。

ー自分のゴールへの状態を客観視して、なかなか最初は実を結ばなくても大丈夫だという気持ちがあるのですね。今の会社では特にどんなところを大切にしていますか?

会社のコンセプトは「肌が心をつくる」。僕の中で肌が改善されていくことがモチベーションにつながっています。昔肌が汚かったときは人前に出たり、人と話したりすることが苦手でしたが、肌がきれいになるだけで楽しくなっていきました。

デュアルキャリアになった今思うこと

ー改めて今の齊藤さんを形作っていること、大事にしている価値観を教えてください。

常に「なんとかなる」と考えているところがあります。高校3年生で骨折したときも、サラリーマンとして勤めていたときも、現役復帰してから2年半ずっとサッカーができているときもです。
自分さえ夢中になって取り組んでいれば、最終的に結果はついてくるという実体験があるので、そこは大事にしています。

ーサッカーに懸命に取り組まれている一方で、もう一つ別の軸でお仕事をする「デュアルキャリア」の利点はどんなところにあると考えますか。

現役中に仕事を始めることによって、引退してから始めるよりも周りの方に応援されやすいことと、経済面で余裕が少し生まれるところに利点があります。サッカー選手としてお給料を頂いている中で始めたほうが経済面で余裕があるので、心にも余裕が生まれ、人との関係も大事にできて、うまく回っていきやすいと思います。

ースポーツ選手のセカンドキャリアはネガティブな側面で語られることが多いと思いますが、むしろポジティブな形で、スポーツをやっているからこその強みがあるのですね。サッカーも事業も進めていくと思いますが、この先の展望を教えてください!

サッカーに関してはJFLというカテゴリでプレーしていますが、より上のカテゴリでプレーしたいと思って現役復帰したので、まずはJリーグにいけるようにがんばっていきたいと思います。

会社に関しては商品展開をして、「メンズスキンケアブランドといえば『Re young J』」と言ってもらえるように広げていきたいです。

ー齊藤さんご自身は、どんな人になっていきたいですか?

人に自分の経験したことを伝えていくことがとても好きなので、自分がいろいろなことをさらに経験して、人間的に尊敬されるような人になっていきたいと思います。

ー齊藤さんだからこそ、同世代の方に向けてのアドバイスとして伝えられることはありますか?

起業することに失敗したらどうしようと思う方もいると思いますが、1度始めてしまえばなんとかなると思っています。目標に向かって必死に一生懸命がんばっていけば最終的に結果はついてくると思うので、真摯に、ひたむきに、一生懸命やることが大事だと思っています。

ーありがとうございます。サッカーの話にあった「基礎をしっかり」と少しかぶってる部分がありますね。齊藤さん、本日はありがとうございました!

取材:黒沢朝海 (Twitter
執筆:杉村秀樹(Twitter
編集:本庄遥(Twitter
デザイン:安田遥(Twitter