「逆張り戦略」で誰もしない選択を。デジタリフト取締役・鹿熊亮甫が考える人生の勝ち筋

「逆張り戦略」でみんなとは違う選択をし続けたインターン時代

ー社会人に混ざってビジネス英語を学ぶなど、学生時代からビジネスの感度が高かったのですね。そんな鹿熊さんが、新卒でデジタリフトを選択した理由が気になります。

理由は2つあります。1つめは自分の性格に合っていると考えたためです。さまざまなことに興味関心を持つ性格なのですが、先ほどもお話ししたように飽きやすい性格なので……。いろいろな商材を扱える広告代理店は自分には向いていると思いました。

2つめは「逆張り」です。自分は人が選ばなさそうな選択をすることにバリューを感じているので、人生において「逆張り」という考え方を大事にしています。入社当時は10人しか社員がいなかったデジタリフトに入社したのも、有名な企業や大企業にはあえて行かない「逆張り」戦略で選びました。

ー「逆張り戦略」とはどんなものでしょうか?

「逆張り戦略」とは、人が選ばないような選択をあえてすることです。人が選ばないからこそ、競争環境も少ない「勝ち筋」が生まれます。

ー何がきっかけで「逆張り」的な考えを持つようになったのでしょうか?

語学留学の費用を稼ぐために始めた個人営業の仕事がきっかけです。短期間で集中的にお金を稼ぎたかったので、インセンティブが高い個人営業の仕事を選びました。

その会社では教育に時間をかけてくれたのですが、その分研修期間はタダ働きみたいな状態でついていけない人が多く。自分が入社した後にも50人ほどが入りましたが、半年でみんな辞めた記憶があります。

ー同僚がどんどん辞めていく中、なぜ鹿熊さんは続けられたのでしょうか。

自分も辞めようと思ったことはあります。ですが、ここまで教育に時間を割いてくれる企業はなかなか無さそうだし、みんなが辞める分続けていけば得られるものは大きいのではないか?と思ったのです。たとえタダ働きでこの会社にフルコミットをしたとしても、学生の自分は失うものは何もなかったので頑張って粘りました。

キツい研修期間を乗り切ったあとは、営業として稼げるようになります。留学費用も溜まったうえに、営業のスキルも身について一石二鳥でした。

この経験が、人がしない選択をする「逆張り戦略」の始まりです。

ー営業の仕事を通して得られたことはありましたか?

当時の自分の実力レベルを知ることができました。

営業を経験する前は、サークルの代表を経験したり個人で動いていたりと、自分に自信があったので「何でもできる」と天狗になっていました。

しかし営業の仕事を教わるうちに、いかに自分は実力不足だったのかを知ります。社会人と比較して、学生である自分の現在地に気付かされました。

自分の実力は、ビジネスの世界ではまだまだと気がついたから、留学から戻ったあとも積極的にいろいろな会社のインターンに参加していましたね。はじめは外資系企業や金融業界を志していたので、金融系のベンチャーでインターンをしていました。

しかし、そこには自分よりも圧倒的に優秀な学生がたくさんいて。今の自分では、彼らには敵わないと思い、別の業界にも目を向けることにしたんです。

ー金融系の次は、どのようなところでインターンされたのでしょうか?

IT系の広告会社である株式会社フリークアウトで、社長のお手伝いとしてインターンを始めました。

ミーティングに参加させてもらったり、社長のそばでさまざまな経験を積ませてもらったりしました。上場企業の社長の意思決定を間近で見られる機会なんてなかなかないと思います。

ただ「お手伝い」と言っても、当時の自分は社長のサポートができていたとは思えず、正直自分だけにメリットがある仕事でした。今になって思うと、将来を担う若者に社会経験を積ませてくれるという意味で、社長の社会貢献の一種だったのではないかと思います。

学生時代に営業や社長のお手伝いをしたことで、いかに自分は実力不足だったのかを痛感しました。天狗になっている場合ではないなと。そこからは謙虚な姿勢で仕事に取り組めるようになりました。

「学ぶべきことはまだある」デジタリフトに入社

ーその後、デジタリフトに入社されますね。先ほど「起業も視野に入れていた」とおっしゃっていましたが、起業せずデジタリフトに入社した理由は何でしょう?

大人から学ぶべきことがまだある、と感じたためです。

インターンでさまざまな経験を積ませてもらったので、学生の中では仕事をしてきた方だと思います。ですが、所詮学生レベルです。

営業や、さまざまな業界のビジネスやルールをしっかり学びたいと思ったので、デジタリフトに入社しました。

また、「逆張り」の発想もあります。インターンや英語留学の経験から、人が選ばなさそうな選択をあえてすることで道が拓けると知っていたので、社員数10人という新卒ではなかなか選ばない、スタートアップに入社を決めました。人数の少ない方が短期間で多くの経験ができるのではないか、という期待もありましたね。

ー実際に組織の中で働いてみて気づいたことはありますか?

役職が上がると視点も変わる、ということです。形式上だとしても役職が変わると上下関係が生まれ、少なからず関係にも変化が起こります。

入社してから2年目のタイミングで、マネジメントをする立場になりました。意識的に上層部の視点と部下の視点の両方を持って考えるようにしています。その結果、いろいろな視点で組織を見ることができるようになりました。きっと、新卒ですぐに起業していたら気が付かなかったことです。

マネジメントという役職が、人を育てる一つの側面だと気づきました。

ー今後の展望は何でしょうか?

会社の展望から話すと、デジタリフトは昨年(2021年)の9月に上場しました。これから積極的な投資活動ができるので、人を採用するなどして会社の規模を拡大していきたいですね。

個人としては、自分のキャパシティを大きくしていきたいと思っています。個人的に、会社の規模と自分の器は比例していくと考えています。デジタリフトは現在従業員数50人で、成長途中の小さな組織です。今は取締役をしていますが、自分自身もまだ成長段階。自分が成長することで、会社の規模ももっと大きくしていけたらと思っています。

ーこれからもデジタリフトで働き続ける、ということですね。

これから会社の規模がさらに大きくなる予定です。そこに自分の時間を費やしていくと、デジタリフトが成長していく過程において得られるものは、転職や起業をするよりも圧倒的に多いと考えています。なので、今は転職という選択はせず、デジタリフトで働き続けようと考えています。

これも、他の人がなかなか考えない「逆張り」的な発想だと思います。

ー最後に、何か新しいことにチャレンジしたいと考えている人に向けてメッセージをお願いします。

自分の人生なので、自分の好きなことをするのが一番いいと思っています。そのためにもまずは自分の性格を知ることが大切です。自分は興味関心が広い性格なので、たくさんの商材を扱える広告業界で働くことを選びました。

世の中には仕事では苦手なことも克服しよう、という風潮があります。しかし、結果を出すには自分の強みを理解してそれを伸ばすのが最短距離だと思っています。

まずは自分の性格を知って、強みを活かしていくのを大事にしてみてください。

そして、そこに「逆張り戦略」を持ってくることで、自分にしかできない「勝ち筋」を探せると思います。

ーありがとうございました。鹿熊さんの今後のご活躍を応援しています。

取材:武田健人(Facebook/Twitter
執筆:きどみ(Twitter
編集:仲奈々(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter