心の温度が上がるコミュニティの探し方とは。副業イラストレーター馬場史織

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第596回目となる今回は馬場史織(ばばしおり)さんをゲストにお迎えしました。

IT系の会社で働く傍ら、副業でライターやイラストレーターとしても活動する馬場さん。中高時代にクラスに馴染めず孤独を感じた経験から、大学ではいろいろな場所に身を置き、自分に合ったコミュニティを探しました。

そんな馬場さんにとって居心地がいい場所とは、心の温度が上がる環境とのこと。自身が居心地がいいと感じるコミュニティを見つけた経緯や、コミュニティを探すコツ、イラストレーターとして活動するまでのきっかけをお聞きしました。

周りに馴染めず、孤立していた中高時代

ーまずは自己紹介をお願いします。

馬場史織です。IT系の会社で働く傍ら、副業でキャリア系のインタビューライターや、地域の魅力をイラストで発信するイラストレーターとしても活動しています。

ーもともと、文章を書いたり、絵を描いたりするのは好きでしたか?

昔から物語を考えたり、絵を描いたりクリエイティブな作業が好きでした。小さい頃の将来の夢は少女漫画の漫画家でしたね。

ー馬場さんは昔からクリエイティブな作業がお好きだったんですね。学生時代はどんな生徒だったのでしょう?

都内の中高一貫女子校に通っていて、自分からガツガツ行かないと友達を作りにくい環境にいました。しかし、私は大人しくて引っ込み思案な性格だったため、なかなか周囲に話しかけられず、教室では1人でポツンと席に座っていることが多かったです。当時はよく孤独を感じていました。

ー小学生の頃も孤独を感じることはありましたか?

孤独を感じるようになったのは中学校にあがってからです。私の通っていた女子校では「友達のグループの中に入ってないとクラスメイトとして認識されない」という暗黙のルールがありました。

しかし、引っ込み思案な私はなかなかクラスメイトに話かけにいくことができず、どこのグループにも所属できなかったのです。自分から行かなければ友達を作れないことはわかっていたけれど、性格的にできず焦っていました。

通っていた女子校は一学年に300人以上いる大規模な学校だったので「こんなに生徒がいるのに誰とも繋がれない」と孤独を感じました。

大学1年生で社会人と交流し「あたたかい居場所」を見つける

ー中高生の頃は周りに馴染めず孤独を感じていたのですね。大学生になってからは周りとの関係に変化はあったのでしょうか。 

大学生になってからは幅広い年代の人が集まるコミュニティに属し、心地よいと思える居場所を見つけました。

それは大学1年生の秋に参加した、ワークキャンプを主催するボランティア団体『NPO法人グッド』です。グッドで募集していた農作業ボランティアに参加しました。

中高生のときは同世代としか関わりがなかったのですが、グッドには社会人など自分よりも上の世代の人もたくさんいて。最初は社会人と学生は違う生き物だと思っていたので話すのは緊張しましたが、優しく声をかけてくれる人ばかりですぐに打ち解けられました。

仲良くなっていくうちに、社会人も仕事に悩んでいると知り「社会人と学生は違う生き物なのではなく、学生の延長に社会人があるのだ」と考えるようになりました。

グッドのみんなは、立場や年齢、性別などの枠組みをとっぱらって、みんなフラットに接してくれて。とてもあたたかい場所で、私にとって大切なコミュニティのひとつです。それからは、立場や年齢が異なる人とも積極的に交流できるようになりました。

ーグッドの中で、印象に残っている思い出はありますか?

初めてボランティアに参加し、疲れて休んでいる自分に対して、グッドのメンバーの1人から「馬場ちゃん大丈夫?」と声をかけてもらったのが印象に残っています。

中高生のときはみんな余裕がなかったので、誰かがつらそうにしていても気遣ったり助け合ったりする優しさはありませんでした。グッドでは、みんな初対面なのにもかかわらず話しかけてくれ、うれしさやあたたかさを感じました。

ー中高生の居心地が悪かった環境と、農作業ボランティアのあたたかい環境の違いは何でしょう?

中高生の頃は1人でいるのは悪いことで、誰かと一緒に行動しなければならない同調圧力が強い環境でした。

一方、グッドは輪から外れて1人でぼーっとしてもいいし、気が向いたら戻ってもいい。学生や社会人が混ざっていたことや、不登校や病気など挫折を乗り越えた人が多く、一人ひとりが寛容だったので、居心地がよかったんだと思います。

20歳で京都に国内留学。心地よく過ごせる土地を見つける

ーグッドでの出会いを通して「社会人と学生は違う生き物ではないと知れた」とおっしゃっていましたが、その後、年齢や立場が異なる新しい人との出会いはありましたか?

20歳のとき、大学の「単位交換留学制度」を使って京都の大学へ国内留学しました。

今までは関東圏の人のみと関わってきましたが、その留学制度を使って京都へ行ったことにより、西日本出身の人とも出会えました。話しているうちにこれまで知らなかった文化や世界を知り、自分の世界も広がりましたね。

ー京都のどんなところが居心地がいいと感じましたか?

1つめは、街の規模感です。京都は東京と違って規模が小さいうえに、「京都が好き」という理由で集まってくる人が多いんです。同じ共通項で人と繋がれるのがいいですね。

2つめは、歴史を感じられる点です。京都は歴史が多く残る街なので、散歩をしていると歴史的な記念碑や跡地をよく見つけます。こうして歴史を感じられるのも魅力のひとつです。

そして3つめは、個性豊かな点です。京都には自然や歴史的文化があるので、住む人たちの感性も磨かれやすいのか、個性を発揮して活躍している人が多い印象です。たとえば京都には手づくり市があり、ハンドメイドの商品を公園で販売するイベントがよく開催されています。個性豊かな手作りの品が並んでいるのは、見ていて楽しかったです。

京都は、地域密着の商店街やイベントが多くあります。学校に行くこと、日常生活をすること、人と交流することが街のなかで完結するので「この土地に暮らしているんだ」と実感できます。そして自分と同じように「京都が好き」な人が多い。長年親しんだ故郷ではなくても、京都にいると「地に足がついている」感覚を持てたのです。

ー1年間京都に滞在した後、東京に戻ってきてからの日々は寂しかったですか?

留学が終わる頃には京都が自分にとって居心地がいい場所になっていたので、しばらく京都シックになりました(笑)。

京都では、都心部でも歩いていると山が見えます。それをぼーっと眺める時間が好きでした。東京に戻ってからはその景色が見れなくなったので、出かけるたびに京都を思い出して寂しくなりましたね……。自然も都会も近くにある京都の生活が自分には合っていたのだと思います。

ー土地に合う感覚、貴重ですね。

暮らす土地によって自分の生き方は変わります。京都はこじんまりとした土地で感性の近い人たちと繋がりやすく、自分らしくゆったりした気持ちで過ごせました。自分がどういう人間になりたいかで土地を選ぶのも、ありだなと思います。