1つの行動で世界は広がる。環境問題に全力で向き合う菅原勁太が目指す未来とは

大学卒業間近で衝撃的な事実を目の当たりにする

ー1年間の留学を経て帰国された菅原さん。22歳でインドとスリランカへバックパックをされたとか。バックパックをしようと思った背景は?

最も環境問題の影響を受けてそうな国へ行っていないと思ったのが理由です。スラム街へ行きたいと思い調べるうちに、インパクトのある国が「インド」だと知りました。そこで、友人と1ヶ月間インドとスリランカへ行きました。

インドとスリランカへ行く前にも1ヶ月間バックパックをしていました。この時は10カ国回り、ドイツの状況やヨーロッパがどれほど進んでいるのかを見てきました。

ー1番気になる国の実態を知りたいとの思いからインドとスリランカを選んだのですね。

現地に赴いて行動や体験して、自分の肌で感じるのが重要だと考えています。

高校生のときも海外を知っているつもりで実際に行ってみたら、まったく違っていました。

ーインドとスリランカへ行ってみて、国の実態を肌で感じて率直な感想は?

初日からずっと衝撃的で、信じられませんでした。人は多いし汚いし、ごちゃごちゃしていて。恵まれた環境で自分が育ってきたのだと実感した瞬間でした。

例えば電車に乗ると、乗客が食べた後のゴミを電車の窓から外に捨てていたんです。バナナの皮とかプラスチック製品とかも全部です。ゴミだと思うものはなんでも捨てているのが現状でした。実態を目の当たりにして、なんでこういった行動が当たり前なのかと感じて。

ゴミ問題やゴミが川や海に流れたらさらに大問題になる。一方で現地の人は当たり前にゴミを捨てている。その様子を見たときに環境問題と社会問題がつながりました。そもそもポイ捨てをしてはいけないと教育を受けていない。教育が受けられないのは貧困で学校へ行けない背景があると予測できます。

では、なぜ貧困が起きているのか、それは親が収入を得られていないからです。その理由は工場で働いてモノ作りをしている場合、正規の価格で売られていないから賃金が低い。なんで正規価格で売られていないのか?そしてインドで作られた商品はどこで売られているのかを辿っていくと、先進国でした。先進国の人が安く使うために、現地の人が苦しんでいる。教育から貧困、そして環境問題はすべてつながるのだとここで初めて気づきました。

ー当時のバックパックの様子はインスタグラムにも載せられていて、私も写真から衝撃を受けていました。当時の投稿にも環境問題には教育が根づいているのではと言及されていましたね。卒業間近のタイミングで衝撃的な経験だったのではないでしょうか?

そうですね。当時は就職先も決まっているタイミングでした。もう少し早く気づきたかった、もっと早く行動すればよかったなと。

この経験からも行動は大事なんだなと感じていました。

理想と現実のもどかしさを感じながらも発信し続ける日々

ー当時入社された先ではどのような仕事をされる予定だったのでしょうか?

大学卒業後は、京セラ株式会社に就職しました。入社理由も「環境問題」につながっていて。太陽光パネル事業を通じて「電気のないところへ電気を届けたい」との想いからです。太陽光パネルが有名な京セラ株式会社へ入社。しかし、太陽光パネルの部署には入れてもらえなかったんです。

自分のやりたい取り組みがあるのにやれていない、でもいい生活してるし同期に恵まれている。日々楽しんでいるものの、行動しなくちゃいけないとわかりつつ、自分のやりたいことができない状態でした。もやもやを抱える日々を過ごしていました。

ー大きな会社であるほど希望の「配属先」でないリスクもありますよね。自分のやりたいポジションが今の会社では先が遠いかもしれないと感じたのが2年目だったのでしょうか。

自分の中ではずっと動いてきた2年間ではあるものの、物足りなさを感じる日々でした。ペスカタリアンになった時期であり、インスタグラムはインドに行った頃から、継続して意識して発信していました。

ーインドに行かれたときから発信し続けてらっしゃるんですね。環境問題の課題を発信しつつ、仕事では現実にならない悔しさもあったかと。悔しさを感じつつ行動に変化はありましたか?

1番力を入れたのは「発信し続けること」でした。同期からは「環境おじさん」と呼ばれるほど(笑)発信していくと、環境問題に関心を持って人が集まってきてくれたんです。

世界の課題に対して「どうしてそういう問題があるの?」と聞いてもらえることも。その中の全く知らない方と話すうちに「菅原さんのやりたい内容、起業したら実現できるのでは?」と言っていただいて。「起業するならボーダレス・ジャパンという会社が面白いよ。」と教えていただきました。実際に調べ始めたのが2020年8月です。

ー全く知らない方のメッセージがきっかけだったのですか!

私がインスタグラムで発信していたら、コメントくれた人から「起業の選択肢も面白いのでは?」とかけてもらえた言葉が最初のきっかけでしたね。確かにと腑におちて。自分の明確なビジョンもあるし解決したい課題もあるので起業したいなと。

ー「ボーダレス・ジャパン」はハチドリ電力の大元の会社。どのタイミングで起業もしくは転職をしようと思われたのですか?

ボーダレス・ジャパンを2020年8月に知って、9月に起業家の面接を受けましたがうまくいかず。

「ボーダレスアカデミー」という社会起業家を育てるソーシャルビジネスに11月から2021年2月まで参加しました。アカデミーが終了したタイミングで起業ビジョンもハッキリと見えたので、2021年3月に京セラ株式会社へ退職を申し出ました。その後、起業しようと思いボーダレス・ジャパンを受けたのですが、またダメで……。悔しいと感じていたときに、ボーダレス・ジャパンの人事の方から連絡をいただき、「同じような課題を解決しようとしているビジネスがある」と教えていただき、出会えたのが「ハチドリ電力」です。

ーそのようなご縁があるのですね!ご自身で行動し続ける中で、紹介していただいたのが「ハチドリ電力」。ご自身で起業するときに思い描いていた事業ビジョンは今と同じく電力系だったのでしょうか?

私が構想している事業は大きく分けて2つ。「埋もれている魅力ある商品を世の中にもっと広めること」「企業も利用者も安心と信頼のあるメディア兼ECサイト」です。

魅力のある商品いい背景とは、社会問題や環境問題を解決しているものやフェアトレードのものなどを指します。こうした魅力ある商品は世の中にたくさんありますが、埋もれてしまっており世の中に知られていないのが現状です。

今企業がSDGsに取り組み始めていますが、実際はグリーンウォッシングが多いでのはないかなと感じています。グリーンウォッシングとは、十分な環境配慮がされていない商品やブランドなどを「環境にやさしい」と消費者へ間違った印象を与えることです。

消費者が正しい情報から環境に配慮している商品を選択できる仕組みづくりとして考えたのが、2つ目の「メディア兼ECサイト」です。企業に取材をし信頼性のある情報を第三者として作成します。そしてその情報を元に買い物ができるサイトを考えていました。企業としては載せると信頼を得られ、利用する顧客も安心して買い物ができるECといったイメージです。

ハチドリ電力とビジョンが重なる

ーなるほど。最初ハチドリ電力の事業内容や方針を聞いた時の印象は?

最終的にやりたいことや、ビジョンが似ていると感じました。私がECサイトを立ち上げたい理由は「国民の環境問題に対する意識を高めたい」との想いからです。本質を変えるためにはボトムアップの考え方が大切だと思っていて。

例えば、ビニール袋の有料化はトップダウンの政策です。ビニール袋を使う人は確かに減ったかもしれませんが、なぜ有料化にする必要性があったのかまでは国民に届いていない。意識が高まらなければ本質は何も変わらないと強く感じています。

そのために国民が使いながら意識を高められるECサイトを作りたいと考えていました。

ハチドリ電力も同じで、電力料金の1%をNPO団体に寄付するモデルにすることで、利用者がNPOなどに興味をもったり社会問題を知ってもらい、意識を変えていきたいという考え方を持っています。手段こそ違えど、ボトムアップの意識改革は同じです。

ーハチドリ電力での仕事内容を教えてください。

基本的に何でもやっています!(笑)営業やカスタマーサービス、料金請求手続き、ハチドリ電力の事業方針の検討などです。

ー創業期ならではですね。2030年までにCO2排出量を減らそうと目標が掲げられています。自然エネルギー電力の方が通常電力よりも安いのでしょうか?

通常電力の方が本来安いです。可能な限り利益を削減しているので実現している料金です。電力は自然エネルギーも通常エネルギーも質は同じ。自然エネルギー電力が今よりも高いのに、わざわざ電力会社を変える方はほとんどいないはずです。

より多くの方へ使ってもらうのを目的で考えたとき、料金を大手電力会社よりも安くすることで多くの人へ利用していただけるようになるのかなと思っています。

現在はハチドリ電力を退社し、直接お客さまと話して環境に配慮した商品やサービスの魅力を伝えたいと考え、物販で事業をスタートしたところです。

行動したから見えた世界。これからのアクション

ー菅原さんから見て、日本の根本的な考え方を変えないといけないと感じる部分はどのような点でしょうか?

世界基準の課題意識をもてていないことではないでしょうか。例えば、ファストファッションはものすごく安いじゃないですか。大量に作られて1シーズンで着れなくなって捨てるという流れがありますよね。今当たり前にやっているけど、実際起きている問題はとても多いのです。

背景を知らないからこういった行動が生まれてしまう。ヨーロッパと比較すると日本はまだまだ意識レベルが低いです。日本でも意識を高められるような制作や企業の施策、国民の意識改革が必要だと思っています。

ー菅原さんの今までの人生を振り返って、行動することを大事にする理由をお聞かせください。

行動しなければ、一歩先に出なければ、見えない景色があると思っています。

また、行動と同時に発信するのも大切だと考えていて。自分が成長できるのはもちろん、行動して行動に対して自分が何を感じたのかまで発信すると、自分の考えを関心を持って集まってきた人々へ伝えられます。その発信をきっかけに新たな情報を得られますし、新たな行動にもつながる。

みんなを巻き込みながら発信し続けると「自分の新たな価値観を発見する」ことへもいい影響を与えてくれるので、やはり行動が大切だと思います。

ー小さな行動からでも一歩踏み出す重要性を感じました。菅原さんの思い描く未来について最後に教えていただけますか?

環境問題が自分の中で最も大きな軸です。その枝分かれの先に社会問題があって。ひとりひとりの意識を高めるために自分で勉強してキャパを増やすのは大切です。

でも、必ずしも自分だけで学ぶ必要はないと思っています。誰かに聞いて少しでも意識が変わって、キャパを増やして行動できるようになれば、世の中や世界中が幸せになるのではないかと考えています。

何か1つでも行動できるような、世の中を作っていきたいです!

ーありがとうございました!菅原さんの今後のご活躍を応援しております!

菅原さんが運営する自然も動物も人間も誰も傷つかない共存できる世の中を目指したコミュニティ「COEXIST」のInstagramアカウントはこちら

取材:あおきくみこ(Twitter/note
執筆:清水真心(Twitter/note
デザイン:安田遥(Twitter