世界への道が開ける教育の実現に向けて。World Road 代表・市川太一

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第585回はWorld Road Inc のCEO、市川太一さんです。「WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs」を出版した市川さんが起業してまで取り組みたかったこととは。市川さんにこれまでとこれからをお話しいただきました。

漠然とした夢でもいいと思えた本との出会い

ーまずは簡単な自己紹介をお願いします。

1992年に福島のいわき市に生まれ、高校まで福島で育ちました。大学から上京し、卒業後は株式会社アミューズに入社。その後スタートアップを経て、2019年にWorld Roadを立ち上げました。「地球を1つの学校にする」というミッションの元、教育事業を行っています。

ー幼少期から起業に至るまでの話を教えてください。どのような幼少期を過ごされていたのですか。

中学生まではアニメやゲームが好きな、いわゆるオタク少年でした(笑)研究員として働く父の熱中しやすい気質を譲り受けたのか、とことんアニメとゲームにはまっていましたね。

また母が海外好きだったので、海外旅行に行く機会もあり、海外に興味を持ったのは母の影響も大きかったと思います。田舎で育ったこともあり、広い世界をもっとみたいという海外への漠然とした憧れのようなものを徐々に持つようになりました。

ー将来のことも考えて、高校卒業後は上京という選択を選ばれたのでしょうか。

高校生の時から漠然と「世界に貢献したい」という思いを持っていました。しかしそのためにはどこの大学に行ったらいいのか、どの職業を目指したらいいのかが具体的に想像できなかったんです。

そんな時に出会ったのが「高校生の夢―47都道府県47人の高校生の夢」という本でした。47人の高校生の夢を読む中で気づいたことは、必ずしも形のあるわかりやすい夢でなくてもいいということ。周囲の友達が医者になりたいから医学部に行くなどとわかりやすい夢と進路を語っている中で「世界に貢献したい」という夢は漠然しすぎていると思っていました。しかし本を読んで、志や指針があれば、大丈夫と思うことができたんです。そして世界で貢献したいという夢に近づくため、国際分野の勉強ができる大学に行くことを決意しました。

 

世界中の人から得た学びは「自分だからこそできることをやる」

ー大学生活はどのように過ごされましたか。

大学ではバイトで稼いだお金のほとんどを海外旅行に費やしました。アフリカ・東南アジアに旅行で行き、さらに世界を見るために留学にも行きました。そして留学から帰国後は縁あってOne Young World (ヤングダボス会議)に参加しました。

ーOne Young Worldとは何でしょうか。

One Young Worldは190ヵ国以上のリーダーたちが集まるサミットです。活動家や起業家が多く集まり、様々なアイディアを出しあったり、課題解決に向けてプロジェクトを始動させたりする場となっています。毎年異なる国で開催されているのですが、私の時はアイルランドで開催されました。

ーOne Young Worldに参加して得た影響はやはり大きかったのですか。

各国の代表者が世界中から集まっているOne Young Worldはまさに小さな地球のようでした。ミクロネシア連邦からの参加者など普段会う機会のない方と話すことができて、たくさんの刺激を受けましたね。

特に印象に残っているのは北朝鮮からの参加者と話したことです。彼女は脱北の経緯などを話してくれたのですが、それが危険とわかっていてもやる理由を聞いたところ「私にしかできないことだから」と言われたんです。それを聞いて、自分も、自分だからこそできることをやろうと思うようになりました。

 

何もやりたくない時でもやりたかったのが教育だった

ー大学卒業後、アミューズに就職されたのはどのような経緯だったのですか。

One Young Worldがきっかけで創業者の方に声をかけていただき、アミューズに就職しました。大人気アニメ、ワンピースのインバウンド事業など、新規事業に関わる仕事をさせていただき、とても楽しかったのですが、より自分自身の手で世界に貢献したいと思い世界周遊して見聞を広げ、スタートアップで働きました。しかし、転職した会社が破綻。プライベートで忙しい時期と重なり、精神的にもかなり辛い時期が続きました。

ーそこからどのように立ち直り、その後起業することを決められたのですか。

かなり追い込まれていたので、何もしたくない時期が続きました。そんな中ふと思い立ち、ノートにその時の気持ちを書き出してみたんです。書き出したことがネガティブなことばっかりかと思ったら、日本に来ている外国人向けのサービスを作りたい、教育に関わりたいなどといったポジティブなことも紛れていて、何もやりたくない時にもやりたいと思うことは絶対にやりたいことだと気づいたんです。それを仕事にしようと思ったんです。また、やりたいことの多くはお金を払ってでもやりたいと思ったことでした。それができたら幸せだと確信したことがWorld Roadを立ち上げた理由です。

ー World Roadにはどんな意味が込められているのでしょうか。

自分自身が旅や留学、One Young Worldなどで世界中の人から学びを得たことから、世界中が学校みたいな存在だと感じていましたし、世界中の人から学べる場づくりがしたいと思っていました。それが教育分野を始めた一つの理由です。世界(World)への道(Road)がひらける場を届けるという思いを込めて社名もWorld Roadにしました。

 

いろんな人の夢と生き方を世界中に届けていく

ー出版された本、「 WE HAVE A DREAM」についても教えていただけますか。

世界中の人から学べる学校にはどんな教科書があったらいいかを考えた時に思いついたのが、世界中の人の夢と人生の物語を集めた本でした。自分自身が高校生の時に読んだ本の世界版が作りたい、そう思ったんです。

早速企画書を作り、「高校生の夢―47都道府県47人の高校生の夢」を出版している会社に問い合わせをしたところ、ありがたいことに代表自ら連絡をいただくことができました。そして本の出版に向けて動き出すことになったんです。

ーすごいですね。201カ国の人の夢はどのように集められたのですか。

地道にGoogleフォームで集めました(笑)SNSを駆使しながら、応募のない国には現地の国際機関・NGOなどにコンタクトして紹介してもらったり…結果的に約800人の方に応募をいただくことができました。

出版された「WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs」はありがたいことにたくさんの人に読んでいただくことができました。いろんな生き方を世界規模で学べる一冊となり、「進路を変えるきっかけになった」や「新しいことに興味が生まれた!」のような感想をいただいています。また、「コロナ禍の今、世界中の人と会えた気分になれた」などの嬉しいお言葉も。たくさんの人が感想をシェアしてくれているのでぜひInstagramなどで#wehaveadreamで検索いただけると嬉しいです。

ー本が無事出版され、一区切りといったところかと思いますが、今後の目標や展望をぜひ教えてください。

 いろんな人の思いや夢が詰まっているこの本をもっと多くの人に届けていきたいなと思っています。また、私自身、本を売っているのではなくて生き方を売っていると思っているので、本に限定することなく広める活動をしていきたいです。

直近では本の映像化が決定しました。ディスカバリーチャンネルとパートナーシップを組み、まずは3ヵ国のドキュメンタリーを撮影する予定です。番組を通して、自分らしい人生の生き方を見つけてもらえたらなと思っています。ダイジェスト版は今年の秋頃、公開予定です。ぜひ楽しみにしていただければと思います!

インタビュー:増田綾(Twitter)
執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter