己を知り、相手を知って、想いを実現するために全力を注ぐ。合同会社ngs・CSO重岡太郎

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第496回目となる今回は、合同会社ngsのCSO重岡太郎さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

自分が何をしたいと望んでいるのかを探し続け、自分なりの闘い方を見つけて歩んできた重岡さん。学生時代や就職、独立までの過程で、自身の想いをどのように見つけたのか、そして体現するために大切にしていることや自身の課題をお聞きしました。

自問自答を繰り返した学生時代

ーまずは自己紹介をお願いいたします。

愛媛県出身、26歳の重岡太郎です。サラリーマンを経て、とある方と出会った縁で2年前に合同会社ngsを設立し、現在はCSO(最高戦略責任者)として営業の責任者をしています。

ー合同会社ngsの主な業務はどのようなものでしょうか?

一言で、システムとシステムをつなぐことをしています。様々なシステムやアプリケーションがある中で、データが紐づいていなかったり、別のシステムに同じ情報を入力する二度手間になっていることがあり、その非効率さに以前から疑問を抱いていました。

iPaaS(Integration Platform as a Service:複数のシステムを連携させ業務自動化を実現するサービス)の事業展開で、行政や企業のシステムなどのデータを同期させて煩わしさを解消し、生産効率をあげていく取り組みをしています。

ー学生時代に遡ってお聞きします。中高時代はどんな学生生活を送っていましたか?

地元である愛媛県の内子町で中高時代を過ごしました。学校行けば自由奔放に過ごしていたので、当時は学校側は「来ないで」と思っていたかもしれません(笑)。高校は思春期に入って、友人も少なく口数も少ない人間で、いつも自分が何をしたい人間なのかを考えていましたね。

ー自分探しのためにどのような行動をとられたのでしょうか?

自問自答を繰り返す(笑)。担任の先生に相談することもありましたが、当時の結論は「愛媛県を出ること」でした。高校3年間は、自分を変える3年間だったと思います。今でも、他人にとっても自分にとっても何が幸せなのかを考える機会は多いですね。

寮生活で多様な価値観に触れ、自分らしい戦い方を学ぶ

ー大学時代は何を専攻されていたのでしょうか?

千葉工業大学で機械サイエンス学科にいました。父が機械の設計会社を経営していて興味があったので、機械系に行ってみようと進学しました。結果的に向いてないなと思いましたけど(笑)。

ー寮生活があったそうですが、どのような生活を送っていましたか?

僕の代が最後の寮生となったのですが、ものすごく厳しい寮で……。入寮してまずやることが、124個の寮則を覚えることでした(笑)。

親は僕の協調性のなさを見越して、頑張れと送り出してくれたので、やるしかないと思いました。ところが全て暗記するのは難しいと判断した僕は、先輩と仲良くなりさらに別の先輩を紹介してもらい仲良くなる人を増やし、「寮則を覚えるのが苦手な奴」と認識してもらい許される関係性を築き、どうにか乗り越えました(笑)。

どうやって難しい状況を打破するか、ということを考えて行動するのが面白かったですね。

ー友人や先輩たちと過ごす中で、自分なりの乗り越え方を見つけたのですね。

様々な価値観を持つ人と接することや一緒に生活する中で、違う価値観に触れたあとに別グループで得た考え方を新たに取り入れてみると、広がることもあることを学びました。

同じ釜の飯を食って寮生たちと生活する中で、仲良く楽しく過ごすためにどうしたらいろんな価値観を持つ人たちを許容できる雰囲気をつくれるのか、を考えていました。共通項を見つけて結びつけていくように会話をしながら、適度な距離感を保てる関係づくりを意識していましたね。

ーコミュニケーションをとるうえで、コツはありますか?

相手に興味関心を持つことですかね。無理に何かを好きになる必要はないと思いますが、人と接する時は自分がその人のどんなところに興味があるのかを見つけ、「それってなんですか?」と聞くようにしています。相手に興味を持って尋ねると、自然と相手も話してくれるようになりますね。

「地元に関わることをする」。見つけた揺るぎない想い

ー就活では地方を変える取り組みをする企業を探していたようですが、なぜでしょうか?

就活時は、行きたい会社も何がしたいのかも定まっていなかったので、譲れないものは何かを探るため書き出してみました。その中でひとつだけあったのが「地元に関わること」でした。「地方を盛り上げること」に近しい事業に取り組む企業を探し求め、前職のIT会社に入社しました。

ー就職先の会社は、どのような会社でしたか?

当時、創立10年程の会社で、新規事業として海外に外注をするオフショアの国内版として、地方を拠点とする企業に外注をするニアショア事業を手がけていました。地方の物価を上げる施策として、地方に拠点をつくりエンジニアを募集する取り組みをしていると知って、地元の愛媛県でも実現できたら面白いと思い、入社しました。

ーちなみになぜ、譲れないものが「地元に関わること」だったのでしょうか?

地元に会社をつくりたいという思いがずっとありました。地元が好きで、親や友達と一緒に過ごした地元の人口減少が進むのを、僕がなんとかしないと無くなってしまうと危機感が強かったですね。

ー独立を決心したきっかけを教えてください。

きっかけは、前職でお世話になった役員との会話です。地元の愛媛に仕事の拠点になる場をつくると意気込んで入社しましたが、すぐに実現できるということはなくて、2年働いている間に事業撤退が決まりました。

それなら僕が会社にいる必要がないと思い、転職して経験を積むのか自分で事業を行うかを選択しようとしました。当時、お世話になっていた会社の役員に「地方に関わることをしたいからそれができないなら辞める考えだ」と打ち明けました。

何度も一緒に飲みながら話し合いをして、その中で起業か転職を迷っていることを話したとき、「一緒にやらないか」と声をかけてもらいました。誰かと一緒にやっていくという発想がなかったので、尊敬する人と本気で取り組めるのは面白いと思い、起業をする決断をしました。

コミュニケーションは、相手を知ろうとする姿勢から始まる

ー現在、事業を通じてどのように地方と関わっているのでしょうか?

地方に拠点をつくり雇用を増やすことや、地方銀行や県庁と連携して地方課題の解決策を考えるという点で関わっています。最終的に地域に多くの人が訪れるとか、地方のものが売れるといったところにつながるようにしなければ持続できないと思っています。

地元である愛媛県に関わる道のりはまだ遠いですが、地元の人や企業にとって価値観や文化、世界を変えるようなことができたらいいなと思って取り組んでいます。

ー地方の人たちとの関わり方は、地域によって異なりますか?

関わる人が違うということは、地域性などもあり接し方やアプローチの仕方も異なると思いますね。会う回数を重ねることは大切かもしれません。

四国を例にすると、高知県は「大家族」をプロモーションテーマとして掲げるくらい、出会う人との距離の近さがあるので、飲み会などで距離を縮める機会が多い。一方で、愛媛県は「伊予の商人」と言われるほど商人気質の人が多いので、真摯に向き合う丁寧な姿勢で接することで次第に打ち解けられるようになるかなと思いますね。

ーどんなときに一番自分が生き生きしていると感じますか?

コミュニケーションをとっているときですね。最近気づいたことですが、仕事で高知県の漁師さんと話す機会があり、知らないことを見聞きしサービスに反映できたときは楽しいなと感じました。どんなに不器用でも、自らコミュニケーションを取りに行くようにしています。

ーコミュニケーションをとり続けることの大切さが伝わってきます。

大事ですね。当社はエンジニアが多いですが、彼らは先にリスクを考える特性があると思っています。僕はできない理由よりできる理由を探したい人間なので、その時点で意見が合わないこともあります。

相手のことを知ろうとするのは大事だと思っていて、僕自身はエンジニアの勉強をして会話をするよう意識しています。単に「プログラムのことが分からない」と話すのではなく、「調べてみたけど、プロジェクトに当てはめるとどうなっていますか」と尋ねる。そうすると少しずつ教えてくれたり、興味があることを認識してもらえるかなと思います。

好かれたいなら相手を好きになることが、まずは大事だと思っています。

今この瞬間に生き生きできる、個性ある人間になりたい

ー今、面白そうだと感じる領域や人はいますか?

将棋棋士ですね。確か年間6人程度しかプロになれない世界で、そこに入ることができた人ってどんな人たちなのか気になっています。最近は、プロ棋士のYoutubeをよく観ています(笑)。将棋は父に教えてもらい小学1年生くらいからやっているのですが、当時は晴れの日は野球、雨の日は将棋をして過ごしていましたね。

ー小学生から現在まで続けていて、重岡さんが感じる将棋の魅力とはどこにあるのでしょうか?

将棋は日本文化として魅力があると思っています。ちなみに、当社の社名の「ngs」というのは「日本が好き」の略(笑)。チェスは相手の駒を取ったら捕虜扱いで盤に置くことができませんが、一方で、将棋は相手の駒を自分の味方として再び盤に置くことができる。こうした感覚が日本らしいなと価値を感じています。

「昨日の敵は今日の友」という言葉がありますが、将棋はまさにそんな考え方があって、駒一つひとつの特性を活かし、進めば駒が成長する感じが好きです。あとは、運頼りにならないという点も好きですね。純粋に相手より先の手を読めた人が強いという実力主義な世界がいいなと思います

ー勝ち負けにこだわりはありますか?

かなりこだわっていると思いますね。将棋の面白さのひとつに「感想戦」というのがあります。戦いのあと、対局相手と開局から終局までを再現して、局面における最善の手を検討するもので、これは仕事にも通じることだと思っています。なぜそうなったのかを振り返るということを自然と頭の中で振り返る癖ができている気がします。

勝った理由より負けた理由を探すのが好きで。ビジネスなら成功事例を参考にするより、失敗から考えるほうが生産的だし、好きな考え方です。

ー重岡さんの挫折経験エピソードがあれば教えてください。

今、挫折してるかもしれないです(笑)。僕は器用貧乏なところがあり、やることはできても1番になれずにいる。コミュニケーションひとつでも、すごいと思う方は世の中にたくさんいますし、自分の闘い方みたいなのを改めて模索していますね。

ー重岡さんの考える「個性」とは何でしょうか?

みんな違ってみんないいという十人十色の考えで個性ということもありますが、僕の中では違うと思っています。そもそも、個性を持っている人と持っていない人がいると考えています。

僕は今を本気で生きて、さらに長期的にビジョンを持ってやり続けてる人が個性がある人なのかなと思っています。今この瞬間を楽しむことに一挙手一投足が集約されてるのを見ると、個性を感じますね。

今のビジネスも長期的に考えれば僕のいう「個性」になっていくのかもしれないですが、今この瞬間に全力で楽しめているかと問われると、まだまだ足りていないのではと思っていますね。ここ数年、僕自身の課題でもあるのですが、個性を持った人間になりたいと思っています。

ー本日はありがとうございました!「個性」の解釈はとてもユニークですね。重岡さんのスタンスや等身大の想いをお聞きすることができました。

取材:武海夢(Facebook
執筆:Asuka(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter