違和感が心のサイン!「スナックまり」日水真理に聞く、自分が心からやりたいことに向かうコツ

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第515回目となる今回は、スナックまり主催・日水 真理(ひみず・まり)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

社会に居場所を見出せなかった経験から行動を起こし、スナックを主催する道を見つけた日水さん。違和感と向き合い、心からやりたいことへと進んでいくヒントを伺いました。

IT企業に勤めながら、人をつなげるスナックを主催

ー自己紹介をお願いします。

日水真理です。普段は富士通株式会社に所属していて、そのかたわら「スナックまり」という屋号でコミュニティづくりをしています。

ー活動内容を詳しくお聞きしてもいいですか?

富士通ではITとまちづくりの分野で仕事をしていて、スナックまりを社内と社外で行っています。

スナックまりは、オンラインやオフラインで開催しています。人と人とをつなげるスナックや、ゲストをお呼びしてインタビュー形式でパーソナルな魅力を伝える配信イベントを行っています。

社内での活動は、富士通で働く人に向けて、オンライン飲み会のイベントを開催しています。同じ部署にいる人たちとは日頃仕事の中でコミュニケーションをとりますが、隣の部署、ましてや他のグループ会社の方とはなかなか交流できないことがあります。

しかし、スナックまりのような部門を横断した交流の場をつくることで、ふとこれまでになかったアイデアが生まれたり、同じ想いを持った仲間を見つけて新しい活動に繋がる可能性が生まれます。スナックまりでは、富士通グループで働く人はどなたでも参加できるようにして、オープンでフラットなコミュニケーションがとれる場づくりを目指しています。

社外で行っているスナックも同じような想いで活動をしていますが、私の知人の方を中心にどなたでも参加できる形で運営しています。

引っ込み思案な性格から自ら行動を起こすように

ーそれではまりさんの幼少期の頃のお話から伺いたいと思います。小さい頃はどんな性格でしたか?

今は人前でも話せるようになりましたが、以前は引っ込み思案でした。話しかけられてもうまく答えられなかったので、とりあえずにこにこ笑顔ですごしていました。

10歳近く離れている兄が2人いまして、末っ子気質なところがあります。

ー小さな頃はどのような夢を持っていましたか?

両親が教師だったこともあり、物心ついた頃から自然と小学校の先生になると意識していました。

小さい頃から、両親に「まりちゃんはなんでもできるよ、大丈夫だよ」「きっと教師になれるよ!」と根拠のない話をずっとされていました(笑)。子どもながらに褒められているようで嬉しかったです。

大学も教育学部に進み、人と接するのが好きだったので、なんとなく自分は教師になるのだろうと思っていました。

ー中学時代に印象的だった出来事はありますか?

小学生の頃から引っ込み思案な性格だったのですが、中学生の時に価値観が変わった出来事がありました。

学校生活ではよくある委員会決めのホームルームがありました。人前に出ることが苦手だったにもかかわらず、中学1年生の時に友達の後押しで立候補をすることに。しかし、結果は落選でした。

後日クラスの友だちから「あんまり話したことないし控えめな印象があってどういう子なのか全然わからないんだよね」と言われたのが印象に残りました。それをきっかけに「自分から行動を起こさないといけないんだ」と思うようになりました。

その後は初対面の人にも積極的にコミュニケーションを図るようになり、その結果、中学2年生の後期には学級委員長に当選。よくあるお話かもしれませんが、わたしにとっては小さな成功体験となりました。

行動に起こさないと何も始まらない。行動を起こすからこそ、自分にできないことがわかって次に進める。

まずはやってみよう」とチャレンジ精神が身につくようになりました。

ー引っ込み思案な性格から、前に出て積極的に話すのは大変だったと思いますが、当時はどのような気持ちでしたか?

はじめは抵抗があって「何から喋ったらいいんだろう」と思いました。でも、うまくできない自分が悔しく、できなかったことは改善しようと思っていました。

今考えると、あの頃から負けず嫌いな性格だったんだと思います。

挫折をきっかけに大切にした「立ち止まって考えること」

ー高校生活はどのように過ごされていましたか?

高校生の時に、人生で最初の大きな挫折を経験しました。

所属していたバスケ部の練習内容に納得がいかなくなり身が入らなくなって、1週間以上部活に行けなくなる日がありました。以前から周りのことを気にしながら過ごすような真面目な学生だったんですが、この時はどうしてもできませんでした。

「学校生活をうまく過ごしているだけでは、自分のことをちゃんと幸せにできないんだ」と気づけたんです。初めて自分の心とちゃんと向き合えた機会でした

ーまりさんにとって、立ち止まって向き合う時間は重要なものなんですね。

自分の気持ちと向き合っている時は辛いです。負けず嫌いな性格なので「なんでうまく進めないんだろう」と思いつめることもよくあります。

しかし、逃げずにきちんと向き合って、自分のペースで自分なりの答えを出していくことは大事だと、高校時代の経験から感じています。立ち止まることで周りの人に迷惑をかけてしまったこともありましたが、そんな私を見守ってくれた仲間や先生方には本当に感謝しています。

その後の人生でも、心に抱いた違和感に対して、その都度向き合っていくことは続けていました。

ーその後はどのようなことで立ち止まったのですか?

大学3年生の時、今後の進路に悩み、立ち止まりました。

それまではずっと小学校の先生を目指して教育学部に進み、教員免許も取得していました。しかし、これまで自分が積み重ねてきた経験を振り返る中で今後自分がどうありたいかを考えたとき、別の道にチャレンジしたい気持ちが芽生えました。

ー立ち止まってからどのような行動をされたのでしょうか?

まず就職活動解禁日から、合同説明会を巡りました。普通ならもっと前から企業のインターンに行ったり、自己分析をしたりなど十分な準備をした上で迎えると思うのですが、心の違和感に気づいたタイミングが遅かったので仕方ありません(笑)後発ながらも、興味のある企業に足しげく通いました。

これまでにも立ち止まって自分に向き合い、納得した上で前向きに行動する、という原体験があったからこそ、進路を変える選択ができたのだと思います。

行動した結果、少しずつ自分の道が開けていったと感じています。

色々な社会に触れたことがやりたいことへ進むきっかけに

ー就職活動を通して、新卒で富士通に入社されたとのことですが、会社を決めた理由は何でしたか?

就職活動の末、採用頂くご縁を頂いたことが非常に大きいのですが、おそらく、わたしが大切にしている価値観の一つである、「チームでひとつの目標を掲げて、それぞれが自分の役割を果たしながら、日々さまざまなことにチャレンジしていくこと」が会社のカルチャーにあっていたのではないかと思います。

私自身がそうした価値観を持ったきっかけは、大学時代に所属していたアメフト部での体験でした。アメフト部では4年間スタッフとしてチームに所属していましたが、アメフトという競技はスタッフも非常に重要な役割を担っており、敵の分析をするアナライジングスタッフ、チーム全体を支えるマネージャー、選手を近くで支えるトレーナーと役職も様々です。

私はトレーナー業務をしていましたが、皆それぞれに役割がある中でみんなで1つの目標に向かってがむしゃらに突き進んでいった経験が私の価値観を変える貴重な経験となりました。

ー富士通に入社されてから、大変だったことはありますか?

入社1年目から4年目まで営業職の仕事をしていました。

会社に入り新たな環境で日々過ごすことが楽しかった一方で、営業として活躍ができない日々が続きました。入社4年目にやっと一人で任せてもらえた商談が取れなかったこともあり、気持ちが落ちてしまいました。

「自分は何もできない人間なのではないか」と悩み、会社を辞めることまで考えたことがありました。

ー何年も結果が出なくて悩まれたと思いますが、何かアクションを起こされたのでしょうか?

社会人1〜2年目の頃から思いつめた時はこれまでと同様、自分の気持ちに向き合い、行動することを心がけていました。

その中でこれまでに行ったことのない環境に身を置きたいと思い立ち、人生で初めてゲストハウスに行きました。ゲストハウスでは、初めて知り合った方とでもすぐに仲良くなれるような雰囲気があり、そこで出会った人たちと悩みを共有し合い、対話を重ねる中で心が救われるような経験をしました。

その経験から、自分と同じように悩んでいる人がいれば助けてあげたくて、場づくりに興味を持つようになったんです。

そんな中で出会ったのが日替わり店長のバー「ソーシャルバーPORTO」でした。

“気づきのきっかけになる場所を。「スナックまり」が実現したい居場所づくり

ーソーシャルバーPORTOとはどんな場所ですか?

ソーシャルバーPORTOは、日替わり店長達によって運営されるバーです。

「安心して帰って来られる場所」と「価値のあるつながりが生まれる場所」という2つのコンセプトがあります。そしてPORTOのオーナーである嶋田匠さんは、私を勇気づけてくださる大切な人です。匠さん自身も会社に居場所がなかった経験があり、同じように感じている人に居場所を提供したいと思って、PORTOを作った背景があります。

そんな原体験が似ている匠さんとはすぐに親近感を持ち、この場所で自分も場づくりをしたいと強く想いました。

匠さんに店長の採用面談をしていただいて、はじめは店長になれる自信が全くなかった私に、「まりさんにお店に立ってもらいたい。まりさんはきっと人を大切にする人だと思う」と直球で声をかけてくださったことが私の背中を押してくれました。

初めてお店に立った時、今まで私に関わってくれたさまざまな人がお店に遊びにきてくれました。みんなが笑顔で過ごしている姿を見て、もしかしたら私も誰かの役に立ち、活躍できる場所が持てるのかもしれないと思えるようになりました。

ーPORTOやオーナーの匠さんと出会って、どのような変化がありましたか?

会社の中で結果が出せず、会社での評価が自分そのものだと思ってしまい、苦しかった時期がありました。

匠さんに言われて、糧になった言葉があります。

会社はまりさんの人生の中での社会の一つにすぎない。PORTOという場所もあるし、ゲストハウスという場所もある。いろんな社会とまりさんは関わりあい、まりさんが存在している。だから、会社だけの評価を自分だと思わないでほしい

周りを見渡すと自分のことを応援してくれる方や認めてくれる方がたくさんいる。それに気づかされ、とても勇気づけられたことがありました。今でも匠さんは「まりちゃんのように社会に生きづらさを抱えている人を救える場所じゃなかったらPORTOじゃない」と語ってくれます。

ースナックまりはどのように生まれたのでしょうか?

PORTOの店長となり、「スナックまり」という屋号で場を持ったことがはじまりでした。そこから社外でずっと場づくりの活動をしていましたが、会社の中ではなかなか自分の活躍の場を見つけられませんでした。

でもそこで私の負けず嫌いな性格が発動しまして(笑)。考えたのは「スナックまりを会社に持ってくること」でした。

何もアクションを起こさず会社を辞めるのではなく、最後に自分の得意なこと、やりたいことを会社で挑戦してみようと思ったんです。そして、これがラストチャンスだ!という強い覚悟を持って、会社でスナックまりを展開し始めました。

ースナックまりを社内でやってみて、いかがでしたか?

スナックまりを始めたことで、自分の活動が会社の中で広がっていきました。

ありがたいことにファンが増え、たくさんの方に来てくださって、役員の方にも「一緒にコラボしてスナックまりのイベントをやろう」とお声がけいただきました。

結果として、自分らしい新しい道を作れたと思います。

ーまりさんが思い描く未来や展望があればぜひお伺いしたいです。

スナックまりという場を通して、自分の好きなこと・やりたかったこと・得意なことを対話や人との出会いの中で気づける場づくりを、今後も社内外でやっていきたいです。

そして私のようにキャリアに悩んでいる人が次の一歩を踏み出してもらえるような機会を創れたらとても嬉しいです。

引き続き私自身もがやりたいことや表現したいものを、社内外でどんどんチャレンジしていき、それを見た人にエールを送れたらと思います。

ーありがとうございました!まりさんの今後のご活躍を応援しております!

取材:新井麻希(Facebook
執筆:馬場史織(Twitter / note
デザイン:高橋りえ(Twitter