様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第527回目となる今回は、かなうさんをゲストにお迎えしました。
若い女性を中心に、自己肯定感を上げるためのコーチングやワークショップを主催しているかなうさん。幼少期の頃のいじめ被害や、高校時代の恋愛での苦い思い出を経て、かなうさんが今の活動に至るまで、その経緯をお伺いしていきました。
自分の意見が全く言えなかった幼少期
ーまずはじめに自己紹介をお願いいたします。
私は「みんなの自己肯定感を上げるぞ!」というミッションを軸に、大学入学後から、若い人に向けて、ワークショップ企画を行っています。コーチングとカウンセリングの資格も昨年取得しました。今後は東京に移住して、また新しいことにチャレンジしようと考えています。
ー幼少期の頃に、印象に残っている出来事など教えてください。
もともと幼稚園の時から、人に気を遣う性格で、自分の意見を言ったことがありませんでした。
小学生になってもその性格は治らず、同級生から嫌がらせを受けていました。学校に毎日カチューシャをつけて行っていたのですが、毎日のように、取られたり隠されたりしていました。
家では自分の意見を言っていましたが、友達に対して嫌と言ってはいけないんだと思っていたので、何をされてもずっとへらへら笑っていました。当時はいじめとは思っていなかったのですが、今考えるとあれはいじめだったなと思います。
ーいじめかも、と気づかれたのはいつからですか?
どちらかというとポジティブな性格なので、最初はいじめという概念に辿り着きませんでした。これはいじめではなくて、友達もたまにはやりすぎてしまう時もあるよね、という考えでした。
中学生になってから、一緒にいる友達が変わり、いじめをしていた友達とは話さなくなりました。違う友達の輪に入ると、今まで見えなかった世界が見えてきて、自分はいじめられていたんだと気付きました。
いじめっ子たちのおかげで得た学び
ーそれは大変でしたよね…。いじめられた辛い経験を通して、ご自身で変化したことはなんでしたか。
いじめをしている子たちを見て、こんなに自分の感情を出していいんだ、と思って私も感情を出すようになりました。友達の中に、「あなたが勝手に宿題早く終わらせたから無視する!」と、理不尽に怒る子がいました。
そんな理不尽な理由で無視をしていいのであれば、私ももっと自分の感情を出していいのではないかと思いました。そう思えるようになってから、嫌なことは嫌と言うようになりました。
なので今は恨むとかじゃなくて、自分が学ぶための出会いだったのかなと思うようになりました。
ーその捉え方が素敵ですね。感情を出すことによって周りの変化や反応はありましたか?
その子は電話で謝ってくれました。無視されるのは悲しいと伝えたら、電話で泣きながら謝ってくれました。
「根はいい子なんだな」と思いましたし、自分が変われば人は変わるんだなということを学びました。
ーそれに気づいたことで、得られた学びはありますか?
他人がどうして自分に対してこんな態度をするんだろう?という時は、「自分に原因があるのではないか?」と考えるようになりました。
大学の友達で、私だけにすごくわがままを言ってくる子がいました。何故この子が自分にだけこんなことをするのかなと考えてみたら、私が従順で、1人じゃ何もできないと思われるような行動や思考をしているからだと思い至りました。そこから自分の意思を見せるようにすると自然と離れていったので、どんなことも自分が引き寄せているのかなと思いました。
毎日死にたいと思って生きていた高校時代
ーその後高校に進学したあとは、人間関係は大きく変わりましたか?
高校時代に付き合っていた恋人に、色々なことを学ばせてもらいました。
束縛とモラハラが酷かったのですが、私服でスカートは履いちゃいけないとか、男と話してはいけないなど様々なルールがあり、それを破ると何時間も説教をされました。私にはこの人しかいないと思っていたので、何でも言う通りに行動していました。過去の経験から、友達に嫌と言うことはできるようになったのですが、恋人に対しては嫌と言うことができませんでした。
その恋人は自傷行為をしていたのですが、「自傷行為をするのは、全部お前のせいだ」と言われたこともあり、好きな人を傷つけるのが辛くて、「もう自分は生きてる価値ない」と高校時代は思っていました。
ー好きな人を傷つけてしまうのは辛いですね。そこから死にたいという感情が強くなったんですか。
私の人生には昔から死にたいと思うことがたくさんありました。いじめられてる時とか、楽しいことないなと思った時に、死にたいなと思っていました。
高校生になって、好きな人を傷つけている自分が嫌すぎて、死にたいっていう感情がもっと大きくなりました。
親が寝静まった頃にベランダで、「いつ飛び降りようかな」と考えては、思い留まり…の繰り返しでした。
ー2年半に区切りをつけられたのはなぜですか?
高校3年生の夏に、母親があと1週間の命かもしれないと病院で宣告を受けました。その時に母から「彼とどうなの?」と聞かれ「いい人だよ」「幸せだよ」と全部嘘を言っていました。心配させたくなかったので、精神的に追い詰められていることは言えませんでした。
でも明日死ぬかもしれないのに、嘘を信じたまま死んでほしくなかったですし、娘としてちゃんと幸せにならなければと思い、お別れしたいという話をすぐに恋人にしました。5回くらい話し合いを繰り返して、やっと別れることができました。結果的に母は元気になったのですが、この時に自分は他人のためなら頑張れるんだなと思いました。
ー恋人と別れて感情の変化はありましたか?
「なんで死のうと思ってたんだろう?」と思えるようになりました。自分から別れを切り出し、一歩踏み出したことが少しずつ自信に繋がったのだと思います。別れたことで、ファッションや人との会話も楽しめるようになり、やっと自分の人生を生きているなと思えるようになりました。彼のおかげで、他人を原因にして自分の人生を狂わせる必要はないということを学ぶことができました。
過去のいじめのことも、当時はすごく恨んでいましたが、あの人たちがいなかったら私は今でも嫌なことを嫌と言えていなかっただろうなと思えるようになり、やっと感謝が生まれるようになりました。そこから考え方をポジティブに変換させるようになり、自己肯定感が高まっていきました。
大好きなみんなの魅力を引き出したい
ー現在は大学生ですが、何かやりたいことがあって大学に入られたのですか?
私自身、何かやりたいことがあって大学に入学したわけではないのですが、大学では活動的な友達が多く、とても刺激を受けています。
しかし周りの友人たちは、自分に対して自信のない人が多く、「自分なんて」という言葉を使う人がたくさんいました。
自分が尊敬している友人たちにもっと自分に自信を持って輝いてほしいと思い、心理学を学んでカウンセラーになりたいと思うようになりました。
ー周りの子たちの自己肯定感が高くないなと気づかれたのは、なぜですか?
「この人に生まれ変わりたい!」と思えるくらい完璧な友人がいるのですが、頻繁に「死にたい」と言っていました。すごくかわいくて、スタイルも良くて、応援してくれる友人たちもいるのに、「なんで死にたいと思うんだろう?」と衝撃を受けました
ここまで完璧な友人でさえそう思うのなら、自分のことを好きになるのに「何を持っている」「何をやっている」という状態が大事なのではなくて、自分自身が自分の存在を認めることが大事なのかなと気づきました。
ーその後行動の変化はありましたか?
大学1年の時から友人の相談を受けることが多かったのですが、相談される内容で多いのは「人目が気になる」「自分はこれができない」という質問でした。
でも、これができないというのは思い込みで、思い込んでいるから、できない、前に進めないんじゃないかと感じたんです。
このポイントをうまく言語化して、不特定多数が見れるSNSで発信したら、少しでも心が救われる人がいるのかなと思い、SNSを始めました。
ーSNSの発信をしていて難しいと思うところはありますか?
Instagramでは女の子のかわいいところと、ドロドロした負の感情を合わせて写真にして発信しています。
他の人が撮っていた写真で「綺麗だな」と思ったものが、実は「嫉妬」などのドロドロした負の感情をテーマにしていたことがあったんです。負の感情も好きになれるんじゃないか、という挑戦でした。
でもいざ始めてみると、自分の想いを全て伝えるには、1枚の写真だけだとすごく難しくて。辞めてしまおうと何度も思いました。
ーそれでも辞めずに続けられた理由は、何だったんですか?
応援してくれる人たちのコメントやDMが大きいです。
「写真を見て、しんどかったけど救われた気持ちになりました」とか、「投稿をお守りにしてます」と言ってもらえるので、頑張ろうと思えます。
見てくれる人がいることで、自分のやっている活動には意味があるのだなと毎回気づかされます。
思い込みを捨てて、みんなの自己肯定感を上げていく
ーイベントの運営を始めたきっかけは何ですか?
自己啓発系のイベントに参加するようになりました。参加者は40代50代の方が多かったのですが、「考え方が変わったから今後の人生楽しみ」「もっと早く知ってればよかった」とみなさんおっしゃっていました。
それなら若い人向けに、自分が知っている知識やセミナーで私が学んだことを濃縮させてワークショップを開いたら、後悔しない選択ができるのではないかなと思い始めました。
ーご自身のワークショップでは、どんなことされているんですか?
心理学の中では3つの見方があるということは必ず話します。1つ目はhaving、2つ目はdoing、3つ目はbeingという見方です。
havingは「〇〇を持っている、持っていない」ということ。doingは「〇〇をしている、していない」という見方です。例えば「サークルの部長をやっている、やっていない」などです。この2つのhavingとdoingは二項対立になります。でも3つ目のbeingというのは、「存在自体を見る、その人の在り方を見る」というもので、否定的でも肯定的もありません。
この3つのバランスが大事ですという話をまず最初にします。
その後は、メンバーによってワークショップの内容は変えています。
人の目を気にしてしまう子が多い日は、思い込みを変えるワークショップをやっています。
その中で私が一番感動したのは、「暗い」を「内に秘めてる光が大きい」と言い変えてくれる子がいたことです。「内に秘めてるから周りからは暗く見えるけど、ずっと内側は光ってるよね」、と言い換えてくれて、天才だなと思いました。
そうやって自分が気持ちいい方向に持っていき、思い込みを捨てていけるようなワークショップをやっています。
ー今後やってみたいことがあれば教えてください。
今は福岡のメイド喫茶で働いているのですが、メイド喫茶は比較されることが多い職場なので、そこで働く女の子たちたちは、他の職場よりも自己肯定感が低くなってしまうのではないかと感じました。将来的には、女の子たちの自己肯定感を上げつつ、夢に向かえるようなメイド喫茶がつくりたいです。
ー最期にU-29世代の方へメッセージをお願いします!
誰にでも魅力的な部分はあるので、自分の魅力を爆発させて、自分は主人公という気持ちで生きて欲しいです。
嫌なことや辛いことがあっても、最終的にはきっと大丈夫になります。今日生きてるだけで超偉い!の精神で今日もなんとか生きていきましょう。
ーありがとうございました!かなうさんの今後のご活躍を応援しております!
取材者 あおきくみこ(Twitter/note)
執筆 川鍋由紀
編集 杉山大樹(Facebook/note)
デザイン:高橋りえ(Twitter)