Plott人事統括・久野圭太が目指す、一人ひとりが自分らしく働ける組織

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第517回目となる今回は、Plott人事統括の久野さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

Plottで人事統括をしている久野さん。Plottに入社前はシェアハウスの運営や漫画喫茶で生活していた経験もあるそうです。そんな久野さんに、今までの経緯や自分らしく働ける場とは何なのか、というのを伺っていきます。

上京して起業を決意した学生時代

ーまずはじめに自己紹介をお願いします。

株式会社PlottというYoutubeアニメを企画・制作する会社で働いています。そこで2年程働いており、人事統括として人事制度作りなど組織全般のことを行っています。

―組織作りをしていく中で意識していることはありますか。

ミッションに「本気のアソビで世界をアッと言わせよう」を掲げています。遊ぶように自分のやりたいことをやっている時間が仕事になれば、誰よりも力を発揮できるしその集合体がPlottの力になるよね、という考え方を持っているので、遊ぶように力を発揮できる組織作りというのを意識しています。

ー小学校中学校時代で打ち込んだものとかありますか?

小学校は受験をしたので、全く遊んでいませんでした。電車通学だったので地元で近くに友達もいなかったので。あまり友達と遊ぶという時間もとれずに、家で過ごす時間が多くて、寂しいなという気持ちが大きかったですね。地元の学校に通って、みんなで遊んでる同世代を見て羨ましいなと思って見ていました。

ー東京で起業するという選択肢が増えた時から、三重に居ながら起業について調べたりもされたのですか?

本をすごく読んでましたね。起業家の方の本をたくさん読んで「カッコいいな!」って1人でテンション上がって、もう絶対東京だ!って1人で盛り上がっていましたね。ただ家族は上京反対だったので、衝突はしました。

ーご家族の上京を反対された理由は何だったのですか?

いきなり何を言い出すんだって気持ちが大きかったんだと思います。今までは親の言うことを正解として生きてきた部分が大きかったので。

センターの3か月前に文転して、東京の私立大学の文系に進学すると言いはじめたので、親としては息子が訳のわからないことを言い出したって感じだったと思います。

ーその後、何をきっかけに上京されたのですか。

三重県の田舎出身なんですけど、浪人というのが1つのきっかけになっています。ふと自分の人生このままでいいんだっけと、思うようになりました。正直、勉強が嫌だったというのもありましたが、そんなに勉強するほどその大学いきたいんだっけという疑問を持ちました。

そんな中で、自分の人生どうするのがいいんだろうなって時に、東京で色々な先輩方が起業して事業を始めたりとかをしているのを見て、そういう選択肢を今まででは考えもしなかったので衝撃を受けました。浪人中に上京して自分で会社を作ってみたいなって思ったのが、すべてのスタートですね。

ー自分のコミュニティの外側への関心は大学受験以前にもあったのですか?

すごく印象に残っているのは中学の時です。同級生が東京の高校を受験するので、勉強を教えてほしいと相談を受けたことがあります。そんなに仲の良い友達ではなかったんですけど、表現の道に進みたいから東京の高校に進学すると言われ、そんな生き方あるんだってなって思いました。

その当時から自分は何者なんだろうという悩みは、今になって振り返るとあったなぁという感じですね。中学生が東京行ってなにかしたいなんて思ってもいなかったので、負けたなというと変な感覚ですけど、当時はそんなことを考えてましたね。

自分らしくいられる場としてシェアハウスの立ち上げ

ー20歳の時、今働いている会社の代表に声をかけられたそうですね。代表との関係や、声をかけられた経緯を教えてください。

代表の奥野との関係は、高校で仲良かった友達の1人という感じですね。家が近かったのですが、よく一緒に帰ったり、真面目な話からくだらない話までしていた間柄です。

浪人していた時に、自分は東京に行って起業したいんだという話をしたのも覚えていて、「そういえばあいつそんなこと言ってたな」というのを思い出したみたいで、連絡をくれました。

ー同級生からの久しぶりの連絡って、どう思いましたか?

素直に嬉しかったですね。上京してしばらくは色々やってみたのですが、結果的に大学生活も楽しくなってきてしまって、遊んでしまっていました。

このままあっという間に大学生活が終わることに危機感を感じていた時だったので、本当にいいきっかけをもらったなと思っています。話をもらった時に、大学を休学して一緒に頑張ろうと即決でしたね。

ー実際に起業されてみて、つまずきはありましたか?

起業するといっても、何もわからない状態で始めたので、最初は手探り状態でした。当時から奥野はエンタメ、面白いものを作りたいとずっと言っていたので、ゲーム作りをしようという話から始まりました。

とりあえず最初の目標として、ゲームを作ってコンテストに応募することに決めました。でも、僕自身奥野に乗っかる形で始めてしまったので、別にエンタメをやりたいというわけでもなく、本当にこれがやりたいんだっけ?と疑問に思うようになりました。

そこから話し合って、結果僕はシェアハウスをやることになり、奥野は今の会社の前身になるものをやってきた、という感じです。

ーシェアハウスに着目したポイントは何だったんですか?

奥野と別々のことをやろうと決めた後、まずはやりたいこと探しから始めなくてはいけませんでした。何がやりたいんだろう?と東京でFacebookを使って凄そうだなって思う人30人位に連絡をして、なんでそういうことがしたいんですか?とインタビューに近いことをしていました。

その後、人材系の会社や、起業家支援をやっている会社でインターンとして働き始めました。当時は働きすぎて無理をしていた部分があったのですが、たまたま住んだシェアハウスにすごく落ち着きを感じる部分がありました。

「おかえり」「ただいま」を言い合える関係もよかったし、素の自分で話せる時間がそこにあったというか。ふっと自分に帰る感覚が心地よくて、こういうのやりたいなって思ったのがきっかけでした。

ーシェアハウスの立ち上げは、やってみて実際どうでしたか?

最初はシェアハウスを運営している知り合いから借りるような形で始めました。その頃にはある程度人脈があったので、友達に一緒に住まないか聞いてまわったり、あとは地方の学生が東京で就活するときに泊まれる宿の支援もやっていましたね。

色々とやっていく中で、自分で立ち上げたいなという気持ちが強くなりました。池袋で1から始めたのですが、また声をかけるところからのスタートです。高校の同級生が留学から帰ってきて家がないと困っていたので、家がないなら作ろうと思ってるんだけど一緒にやらない?と勧誘しました。

しかし運営がうまくいかず、1年くらいで他の人に引き継ぐ形で閉じてしまいました。

ー実際にやってみて良かった点、勉強になった点などありますか?

自分で何かを立ち上げるという体験はすごくおもしろかったです。自分の寂しがり屋な部分や、家庭環境に歪みを感じている部分があったり、自分の現体験とも向き合える時間でしたし、何よりも仲間が増えて、そういう場を作っていくこと自体が楽しかったです。

今でもそれが活きているし、家でやっていることを会社でやっているだけなので、やっていることの本質は変わらないなと思ってますね。

悪かったことでいうと、最初に軸を明確にしなかったことは反省点ですね。家作りたいのか会社作りたいのかよくわからなくなっていましたし、メンバーもそれぞれ別の方向を向いていました。

かつ、家に住みながら働くような感じだったので、休まる場所もなく、会議室なのか家なのか分からなくなっていき、どんどん疲弊していってしまいました。作りたかったものと全く違うものになっていってしまったので、そういう部分は失敗だったなぁと思います。

シェアハウスの運営に失敗して人生のどん底へ

ー失敗された原因は何だったと考えていますか?

僕の代表としての軸のなさだったと思います。シェアハウスを拡大しようと、区との連携など色々活動広げていこうという計画を立てていました。

でも当初やりたかったことは、自分らしくいられる場所をつくりたいという想いだったわけで。そのあたりの軸のブレがメンバーを混乱させてしまい、メンバー間でも方向性が一致しなくなってしまいました。

ーシェアハウスの運営に失敗されて、その後はどのように過ごしたのですか?

シェアハウスの運営に失敗して、内部崩壊して休まる家もなくて、漫画喫茶で過ごすことも多くなりました。その時同棲していた彼女ともうまくいかなくて、色々重なった時期だったんですけど、鬱みたいな状態になってしまって。そこが人生のどん底だったなと今では思います。

精神的にかなり参って通院とかもしたんですけど、少し休んだほうがいいんじゃないかとお医者さんに助言をいただき、実家で療養する期間が2か月程ありましたね。実家では寝て起きて、コンビニでご飯買って食べて、映画見るだけの生活でした。

ー改めて帰った実家はいかがでしたか。

落ち着くな、というのはありました。当時は精神的余裕もなく、映画見てボーっと過ごしている日々でした。2か月くらいすると、心に余裕を持てるようになり、だんだんこの生活にも飽きてきて。そうなった時に、改めてなんのために上京したのか、と考え直すようになりました。

しかし東京に戻っても家もお金もなかったですし、精神的に不安定だったことも友達に言いづらく、2回目の上京後は日雇いのバイトをしながら漫画喫茶で暮らしていました。

ーそこから現在の会社に入社するに至った経緯は何ですか?

たまたま奥野から連絡が来て、というのが最初でした。日雇いの仕事をしながら漫画喫茶で暮らしているという状況を話したら、それならうちの会社に来なよ、ということで入社に至りました。

声をかけてもらった時は、拾ってもらったという感覚でした。漫画喫茶暮らしという現状からなかなか抜けられなかったので、今まで縁のあった友達に声をかけてもらい、一緒に何かできるというのは当時の自分にとってとても幸せでした。

ー入社後はどんな仕事をされたのですか。

Youtubeアニメの制作をしている会社ですが、チャンネルの立ち上げから関わりました。最初は人事ではなく、ビジネスサイドでの入社でした。仕事内容をわかりやすくいうと、漫画編集者のYoutube版です。

制作進行したり、企画考えたり、クリエイターとのコミュニケーションや、チャンネルをどう育てるか考えることが業務内容です。

ありのままの自分でいられる場所をつくりたい


ーその後、どのような経緯で人事に関わるようになったのですか?

最初は仕事に困っていたのでお金を稼げれば良いと思って、がむしゃらに仕事をしていました。仕事をしていく中で、少しずつ社内での人間関係が生まれ、会社自体に愛着を持つようになりました。

その中で、ずっとYoutubeアニメを作っていく仕事をするのか、と疑問に思うようになり、面談を経て、人事に移りました。これまでシェアハウスで培ってきたことを、改めて会社という場所で挑戦していこうと思いました。

ー人事統括として、今作ろうとしている組織の方向性を教えてください。

「遊ぶように働こう」という言葉を体現できる組織を目指しています。Plottのミッションが「本気のアソビで世界をアッと言わせよう」で、ミッションの実現に必要なのが、心に目を向けよう・分かち合おう・やっちゃおう、という3つのバリューです。

「心に目を向けよう」というのは自分自身なにがやりたいのか、自分が感じていることに目を向けるということです。「分かち合おう」というのは、感じていることをみんなで共有しよう、相手のありのままを受け入れようということです。その2つがあったら「やっちゃおう」、自分がやりたいことを自分事で動いていこう、という3つの価値観を大事にしています。

そういったバリューを大事にしながら、メンバー同士のありのままを出せて、やりたいことを自由に表現できる会社でありたいなと思っています。

ー場所にとらわれない働き方というのも会社として取り組まれているところですか?

場所や時間に縛られず、その人が働きやすい環境をつくるために、コロナ後もリモートワークは続けていきますし、フルフレックス制も導入しています。

ホラクラシーという制度も導入しており、職種や階層に縛られない組織というのも大事にしています。

導入のきっかけは、各自がやりたいことをできるようにという想いが大きいです。弊社は社員の半分がクリエイターで、自分で作品を作りたくて入社したのに、階層が上がっていくことでマネジメント業務が増え、作りたいものが作れなくなっていく、という課題を生みたくなかったんです。

職種や階層をなくして、全部を小さい役割に落とし込んでいき、やりたいことを体現できるような組織を目指しています。

ー久野さんにとって自分らしくいられる場所というのは、どんな場所だと考えていますか?

自分をつくらず飾らずいられる場所、感じたことをそのまま出せる場所だと思っています。

僕自身も会社をそういう場にしたいと思っていますし、僕が誰かと接する時もありのままを受け入れる姿勢を大事にしています。

ー最後に、今後個人的にやってみたいこと、会社でのビジョンを教えてください。

まず会社でいうと、Plottらしさを大事にしながら会社を大きくしていきたいです。本当にやりたいことをやろうという、自由奔放なカルチャーなので、それをいかに保ちながら、影響力の大きい会社になっていけるかが今後の課題です。

弊社だけではなく、社会で関わる人たちも、遊び仲間として接することができるような会社にしていきたいですし、クリエイターとして働くならPlottだよね、と言ってもらえる会社にしていきたいです。

僕個人としては、やりたいことは日々変わっていくものだと思っているので、10年後こうなっているんだと決めつけすぎると、逆に狭まるものがあるなと思っています。

漠然としていますが、かっこいい30代になっていたいなと思っているので、日々の積み重ねを大事にしていきたいです。

ーありがとうございました!久野さんの今後のご活躍を応援しております!

取材者:山崎貴大(Twitter
執筆:川鍋由紀
編集:杉山大樹(Facebook / note
デザイン:安田遥(Twitter