劣等感がエネルギー源!?行動し続け自分の価値観を見つけてきた調香師 中田侑見

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第528回目となる今回は香りの仕立て屋である中田さんに、どのような価値観の変化を経て今に至ったのかをお話いただきます。

居心地のよい場所である「サードプレイス」を作り始めた学生時代

-まずは簡単に自己紹介をお願いします!

初めまして、中田侑見と申します。大学の卒論では「サードプレイス」をテーマに執筆し、その後IT系ベンチャー企業に新卒で入社しました。海外事業部に4年半勤め、2021年10月1日から調香師として社内起業で動き始めました。本日はよろしくお願いいたします!

-ありがとうございます!ではここから中田さんの幼少期に遡ってお話をお伺いしていきます。学生時代はかなり勉強ができたとのことですが、そのような中で辛かった経験はありましたか?

一番辛かったことは中学3年生のときの人間関係ですかね。学生時代はよくある話かなと思いますが、人間関係にモヤモヤする時期があるかと思います。私もその経験をした1人で、部活ではぶられた経験があります。部活で孤立するとクラスでも孤立し、居場所を見出せずにいました。

また、もともと教員だった母親からの指導もあり昔から優等生ではありましたが、そんな母に対する反抗期と重なり成績は落ちどん底の気分でしたね。

-当時の辛い経験はどのように乗り越えられましたか?

塾というサードプレイスを作り、家とも学校とも違う新しい人間関係を作ったことで乗り越えました!私が通っていたのは進学校の中高一貫校だったため、受験自体は深く考える必要はありませんでした。しかし、成績も落ちていてこのままでは大学にも受からないんじゃないかと思い、高校に進学したタイミングで両親にお願いして通わせてもらいましたね。

塾では勉強に没頭したり、疲れたらチューターさんや他の学校の生徒さんと話をしていました。そのことがすごく居心地がよかったです。

-やはりサードプレイスは大事ですね!社会人になった今でもサードプレイスがあれば教えてください。

今は、働きながら通学していたファッションの専門学校やソーシャルバー「PORTO」などが私のサードプレイスとなっています。「そもそも私ってどういう風に生きたいんだっけ?」「どういう人になりたいんだっけ?」と考える事も多く、そのように考えた時に自分が居心地がよいと思える場所を見つけ続けコミュニティなどにもにいろいろ参加しています。

海外で見つけた「生きているだけで幸せ」という価値観

-大学進学後は海外に興味を持ち、国連で働ける海外大学への留学を目指していたとのことですが、どのようなきっかけで海外や国連に興味を持たれましたか?

指定校推薦で大学が決まってから、入学までの間に経験したハワイでのホームステイが興味を持ったきっかけです。

ハワイではホストファミリーに恵まれ、観光やキラキラしているハワイのみならず「貧困問題」や「環境問題」について気づかせてくれる経験をさせてくれ、私が知っている世界は狭いなと感じました。また言語の壁にぶち当たりながらも生活できていることが、どれだけありがたいことなんだろうと痛感し、自分が恵まれている立場だからこそ何かしたいなと思いましたね。そのような中で世の中の基盤を変えるにはどうしたらよいだろうと考えていて、それなら国連だ!と思い国連を目指しました(笑)

-ハワイでのホームステイは大学入学前とのことですが、入学後はどのように過ごされましたか?印象に残っているエピソードなどあれば教えてください!

留学中の体験が私の中で一番印象に残っています。大学に入学してから間もなく、国連に行くために猛勉強しました。追い込みすぎて心身のバランスを崩してしまいましたが、それでも実力不足で第一志望の留学先には行くことができませんでした。だからこそ、ご縁があった留学先のニューヨークでの1年間は「やりつくす!」をテーマに活動していました。

その中でも特に濃ゆい経験だったのは、夏休みや冬休みの期間でオーガニック農家さんのところに2週間ほどホームステイしたことです。農家さんとは、WWOOFというオーガニック農家さんとそれを学びたい人をマッチングするサイトがあり、そこでマッチングしました!

ホストファミリーとは一緒にコーヒーを1杯飲んで朝日を見たり、作った牛肉をお客様に直接手渡しに行ったり、2週間家族として、そして従業員として一緒に生活をしました。彼らと過ごす中で、生活の豊かさと相手への思いやりの深さに気づき感動を受けましたね。妻を亡くし娘2人を1人で育てあげたホストファーザーからは、「人生ってよいよね」「生きてることってありがたいよね」ということを常々私に伝えてくれました。心も温まり、自分の幸せを改めて考え直すきっかけになりました。

-生きているだけで幸せという価値観を感じにくい世の中ですが、その価値観を感じられたことは中田さんにとってよい影響だったんですね。

そうですね。ホストファーザーのサンディとその恋人のローラーは、私利私欲のために生きておらず、人のことを考えた上で生きており、そのことがすごく素敵だなと思っています。そんなホストファーザーから「チャンスがやってきたら、そんなドアなんて開けずに蹴り倒せ!」という言葉を贈ってもらいました(笑)今でも困ったり悩んだりしたときは、贈ってもらった言葉を思い出しています。

-ハワイとニューヨークで色んな経験をされて大きく価値観が変わっていったかと思いますが、留学後の学生生活はどのように過ごされましたか?

留学から帰ってきた後はバーンアウトになりたくなくて、留学中からバイトを探し帰国してから約2週間後に働き始めましたね(笑)留学でオーガニックに興味を持っていたので、バイト先はオーガニックのレストランで働きました。また大学では、「人の幸せってなんなんだろう」と考えながら、興味がある授業を手当たり次第に受けていました。

何度も自分に繰り返し問いかけ、行動し続けた社会人

-すごく活力的に大学生活を過ごされたかと思います。社会人になってからの状況も知りたいです!

大学生活はすごくやり切りましたが、社会人3~4年目あたりまでは実はめちゃめちゃ凹んでいました…周りの方々が素晴らしく優秀で、さらに自分の成績が思うようについてこなかったりして存在意義が見出せず、かなり辛かったのを覚えています。

挫折経験も多く転職なども検討しましたが、改めて自分に「今ここで辞めて本当に満足なの?」と問いかけたときに、まだやり切れていないという思いが湧き上がってきました。この気持ちがある以上、転職してもまた同じことの繰り返しだと思い耐えていたら今に至りましたね(笑)

-中田さんの中で当時「まだやり切れていない」という答えを出された理由はあるんでしょうか?

そうですね、会社としてどういう人を求めているかという採用基準があると思いますが、自分を俯瞰的にみた時にその基準を満たせられているのかどうか自信がなかったからですね。今の会社から外に出たときに勝負できるのか不安はありました。

また、お世話になった人たちから背中を押してもらえるほどの貢献をしてから次のステージに進みたいと思っており、そのときは自分がまだそこまでのレベルに達していないと感じたのも理由の1つですね。

-ありがとうございます。ちなみに現在は働いている環境以外での活動もされていますが、どのようなきっかけで始められたのか教えてください。

仕事で壁にぶち当たり、この先どいう風に生きていくか、キャリアを積んでいくか悩む時期があり、視野を広げたいと思ったことがきっけですね。当時はクリエイターへの憧れが強く、クリエイターに囲まれる環境に身を置きたいと思いファッションの専門学校に進むことを決めました。

しかし、専門学校に行ったものの自分はクリエイターではないし、単なる自分探しで終わってしまうと思い1年休学しました。そして2021年復学し卒業しました!

香りでより美しい世の中へ

-おめでとうございます!調香を始めるきっかけは、ファッション専門学校に通っている時と同じタイミングだったのでしょうか?

調香はファッションの専門学校を休学しているときに始めました。当時は休学もしているし、仕事もうまくいっておらずこの先どうしようと考えていたときに、何がどう繋がったのかは正直自分でも分かりませんが「香りをしないといけない!」思いましたね(笑)

調香師についてたくさん調べ、いろんな先生方にも会いに行きました。そこで今の先生に出会いました!もともと香りは好きでしたが、香りが仕事になるなどは知らず、まずは自分を癒したり、何かを作るということに没頭したいなと思っていました。

-中田さんの行動力が素晴らしいです!そのエネルギー源はどこからきているんでしょうか?

劣等感です(笑)他人の素敵なところを見つけ出すのが得意なため、自分の至らなさを日々痛感しています。自分に対して掲げる理想が高いともいわれますが、至らない自分がすごく悔しいです。まだまだだと思うため努力し、磨きをかけていきたいという気持ちがエネルギーとなっています。他には深く関わっている人たちに対して恩返したいという気持ちもエネルギーの1つです。

また、調香師として経験を積み始めたタイミングで家族に対して香りを贈ったとき、鬱気味だった家族が行動や考え方が外向きになったという変化を見せてもらえてすごく感動したのを覚えています。香りが全てではないですが、1つのツールとして誰かの幸せに貢献できるかもしれないと思ったときに「これはやるしかない!」と感じました(笑)

-ありがとうございます。最後に今後の展望や目標について教えて下さい!

今後の展望は生涯現役で働きたいなということです。働くというのは、社会との接点であり、社会への恩返しだと思っているからです。また、香りを使ってより美しい世の中にしていけたらよいなと思っています!

-劣等感をプラスの方向に変えていける中田さんのエネルギーの使い方が素晴らしいです!これからも応援しています。

取材:新井麻希(Facebook)
執筆:藤川結貴(Facebook/note
デザイン:高橋りえ(Twitter