様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第504回目となる今回は、マンション管理のフロント営業である田代悠太さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
高校でのスタートダッシュに失敗した経験から「どうすれば人に好かれるのか」を考え続け、人間関係の構築を大切にしてきた田代さん。仕事やプライベートに通じる、人との向き合い方について教えていただきました。
人前に出る経験をした中学時代
ー自己紹介をお願いします。
田代悠太です。マンション管理会社で勤務している、社会人5年目の27歳です。
実家が不動産関係なので、勉強のためにマンション管理に携わっています。
大学時代は、駒澤大学で中国史を学んでいました。最近は転職活動中なので、いろいろな人と会ってインプットをしています。
ーそれでは過去に遡ってお話を伺っていきます。中学校の時に印象に残っている出来事はありましたか?
中学生の時は、学級委員や体育祭の実行委員をしていました。もともと人前に出ることが好きではなかったのですが、人前に出る経験が一番できたのは中学生の時でした。
実行委員をしていると「注目されるのが楽しい」と思っている自分がいました。その経験がきっかけで、人前に出ることが苦手ではなくなったのだろうと思います。
ー人前に出るとなんでも挑戦できて、自信がついてきたのでしょうか?
そうですね。「意外と大丈夫だった。失敗していないな」と実感して、自分は人前慣れしているのではと思うようになりました。
人前に立つのに、すごく緊張したという感じではありませんでした。
人の話を聞いた上で、自分を出していく
ー高校時代はどんな生活でしたか?
高校時代は、漫画に出てくるような高校で、盛り上がっていました。
一方、入学当初は自信満々で「自分なんでもできる!」という気持ちで入ってみたら、浮いてしまいました。皆は仲良くしてくれるんですけど、最初の数ヶ月は浮いてしまったような気がして、友達がいないかも?と思う時もあって。
「自信満々なだけじゃダメなんだな」というのも人生で初めて知りました。
ー高校入学のときは、周りからの評価を気にしていたのでしょうか?
気にしていましたね。中学生の時は、周りがいい人たちだったので、マイナスの評価はされていなかったと思います。
でも高校では、このままだとクラス内で浮いたままではないかと感じ取りました。自分を出していくよりも、謙虚になってお話していくのが大事だと思った時期ですね。
ー人に好かれるために、実践されていたことはあるのでしょうか?
3つ、心がけていたことがあります。
「謙虚になること」「人に興味を持つ」「その人のことを知る」
人の話を聞いた上で、自分を出していくのが大事なのかなと。
お互い話していると、出てくる感情があると思います。それについて話をしていると、自然に理解してくれる感じがします。
当時の自分が意識して行動したからこそ、高校生活を終えた時には友達に恵まれている実感がありました。
仕事の基礎となった大学時代の学び
ー大学時代はどのようなことを学んでいましたか?
中国史を学んでいました。
日本史の年号を覚える時に「白紙に戻そう遣唐使」(894年に日本が遣唐使の派遣を取り止めた出来事)という語呂合わせがあります。遣唐使が白紙に戻されるほどに混乱していた、その当時の唐王朝を研究していました。
もともとイスラム教やユダヤ教をやりたかったんですけど、アラビア語を読むのは大変。でもトルコ人の歴史なら、中国を通して漢文でも資料が残っていて、それなら研究できるかなと。調べていく中で唐王朝を学ぶことにつながりました。
ーイスラム教やユダヤ教への興味からたどり着いたのが中国史だったんですね。学部はどのように決めたのですか?
大学進学時は、教員免許を取りたいと思っていました。父が教員だったので。でも予備校に通っている時に、予備校の先生が歴史に博識だったのをきっかけに歴史の面白さを知って、歴史学科に入りました。
ー田代さんは周りから小さなきっかけを見つけて、自身の行動に繋げているのですね。意識しておられますか?
意識してやっていますね。「自分で自分の面倒を見ている」と思っていて、やりたいと思ったことを自分にやらせてあげると、機嫌もよくなります。
「やりたいことをすぐにやる」を意識しています。
ー大学時代のゼミではどのようなことを学んでいたのか、ぜひ教えてください。
中国史そのものよりは、人への伝え方や、相手が理解する見せ方などを学びました。
ゼミでは、集団の中で相手に伝わりやすい伝え方を叩き込まれました。
学んだことに「暗黙知」という概念があります。暗黙知を知っていると、お互いの共通の認識がかみ合った時に会話がうまく回っていくのを経験しました。
卒業論文は、ゼミの指導教諭から卒論発表の候補と言われるまでに高く評価していただきました。そう思ってもらえたのは本当に嬉しかったです。
社会人になっても、ゼミで学んだことが役に立っています。
ーサークルでのエピソードを教えてください。
バスケサークルで活動していました。大学内では、由緒ある古いサークルでした。
多くの先輩に気に入ってもらえたからか、代替わりの時にサークルの会長に選ばれました。次の会長として周りから推薦されたのですが「ちょっと重いな」と思って一度は断ったんです。
それでも周りから「お前がやらないといけない」と言われて、会長になったのが転機でしたね。
ーサークルの運営にあたって、心がけたことはありますか?
サークル内の関係構築の必要性を感じました。
人間関係ができていれば辞めないと思うし、相手は相手なりに楽しんでくれると思います。
相手にどれだけ時間を使うかで、自分と相手の関係はどんどん蓄積されていくことを経験から学びました。この考え方は、今でも仕事に役立っています。
ー対面やSNSといったコミュニケーション方法がある中、どのような関係構築をしていたのでしょうか?
大学で会ったらもちろん声をかけるし、飲みに一緒に行くこともありました。挨拶などの当たり前のこともしっかりやっていました。
加えて、時間と回数が掛け合わさると関係ができるのだという、私なりの方程式がありました。
今の仕事では、お客さんと私は別々の場所にいることが多いので、メールや電話で接触を多くして「田代という人間を意識してもらう瞬間を、いかに増やすか」と考えています。
サークルの会長をしていた当時は大変でしたが、今となっては、いい経験をさせてもらったと思っています。
ー時間と回数を積み重ねていくことによって、どのような関係ができるのでしょうか?
相手から信頼してもらうと、自分の言葉が通りやすくなると思っています。
「根回し」という言葉があるじゃないですか。時間と回数をかけて相手を細かく知っていくと、相手に言葉がスッと入っていくことが、自分の経験からもあります。
「田代さんが言うなら」と思ってもらえるのが嬉しいですね。
モチベーションはお客様からの感謝
ーここからは社会人になってからのお話を伺います。マンション管理のフロント営業とはどういったお仕事なのでしょうか?
電車の中吊り広告で見かけるような、分譲マンションの管理をしています。
マンションには、部屋の所有者が形成している管理組合という組織があります。
この管理組合に対して、管理方法を助言するポジションですね。マンション専門の法律家のようなイメージです。例えば「規約違反があった」と相談されたときに、解決策をお話する立場です。
ー田代さんのような営業がいらっしゃると、きっと安心ですよね。やはり営業として頼りにされているのでしょうか?
今の仕事を4年半続けていますが、3年経った頃から「ありがとう」の言葉をもらえるようになりました。
「一緒に飲みに行きたい」と声をかけてもらうこともあるので、きっとお役に立てているのではないかと思います。
ー今の会社に入った決め手は何でしたか?
「人間関係を築くのが楽しい」と高校や大学の経験から思っていたので、お客さんと向き合える仕事がいいと思いました。
お客さんの入れ替わりが激しいのではなく、一人のお客さんとある程度長い時間を過ごせるように、担当を持って接したかったんです。
実家が不動産関係の仕事をしていて、今の会社にいるのもマンション管理の勉強のためなんです。
ー実際に入社をされて、環境の変化はありましたか?
社会人1年目と2年目の時は、上司が怖くてずっと萎縮していました。当時は会社と家の往復で、家に帰ってもゲームしかしていなかったです。
しかし3年目には良い上司に恵まれ、状況が好転しました。新しい上司は任せるところはしっかり任せてくれる方で、「今まで学んできたことは、間違っていなかったんだな」と感じました。
以来、自分で判断ができるようになって、仕事も楽しくなり、心の余裕も生まれてきました。
ー大変なこともあったと思いますが、どうやって乗り越えていますか?
なぜ仕事を続けられるのか聞かれた時に「お客さんからの『ありがとう』は麻薬」という話をしています。お客さんからの感謝をいただくと、気持ちが高まりますし、もう一度「ありがとう」と言われたくなるんです。
トラブル解決をして「田代さん、動いてくれてありがとう」と言われると、特に嬉しいです。
信頼関係構築を軸に、新たな挑戦へ
ー今後挑戦したいことはありますか?
これから転職をしようと思っています。
マンション管理の業務は一通りできるようになった感じがあるので、違う媒体を使ってお客さんと話したいと考えるようになりました。今の仕事はトラブル解決がメインなので、次の仕事では本当に役に立つ商品を扱いたいです。
営業という職種だけど、今までがっつり営業をしていたわけではなかったので。もっと役に立った実感を得られたらと思っています。
ー田代さんは、人間関係の構築やサークル運営など、人生において石橋を叩いて渡っている印象がありますね。
慎重に進むことを心がけています。なんなら石橋を叩きすぎて、壊すこともあるぐらいです。
自分が提供できるものを、完成した上で渡すことを心がけています。
ーこれから田代さんが目指していきたいことを教えてください。
最終的には人に囲まれていたいです。
それを成し遂げるためにも、信頼される人間であり続けたいです。時間と回数を重ねていって、小さなエラーでは傷が付かないくらいの信頼関係を作ることが理想ですね。
ーありがとうございました!田代さんの今後のご活躍を応援しております!
取材:大庭周(Facebook/note/Twitter)
執筆:馬場史織(Twitter/note)
編集:杉山大樹(Facebook / note)
デザイン:安田遥(Twitter)