7歳からヴィーガン。吉川夕葉が空白の学生時代を経てイベントプロデューサーになるまで

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第407回はヴィーガンイベントプロデューサーとして活動中の吉川夕葉さんです。幼い頃からずっとお肉を食べてこなかったという吉川さん。ヴィーガンになられたきっかけや、ヴィーガンイベントを主催する理由などをお話いただきました。

今年から本業もヴィーガンな生活に

ーまずは簡単な自己紹介をお願いいたします。

現在社会人3年目で、2021年5月より株式会社ブイクックでECサイト設立など複数のプロジェクトに関わっています、吉川夕葉です。株式会社ブイクックもヴィーガン事業を行うスタートアップなのですが、本業とは別に日本で唯一の若者向けヴィーガンイベント「Green Rabbits Club」を主催しています。

ーGreen Rabbits Clubについてもう少し詳しく教えていただけますか。

Green Rabbits Clubでは「若者×ジャンクフード×ヴィーガン」をテーマに、ヴィーガンに興味がある人たちが交流できるイベントを開催しています。現在はコロナで開催できていませんが、コロナ前は毎回テーマを決め、ホットドックやタピオカ、ヴィーガンアフタヌーンティ、焼肉などを楽しんでもらえるイベントを2ヶ月に1回のペースで開催していました。

Green Rabbits Clubで大事にしていることはヴィーガンを広めることを目的とした場ではなく、楽しくヴィーガンに出会える場であることと、ヴィーガンに興味のある若者同士が知り合える場であることです。楽しそうなイベントに行ってみたら、全部ヴィーガンだった!というのを理想としています。

2019年の夏から初めは30-40名規模でスタートし、多いときは100名規模のイベントを運営してきました。最新のイベントではチケットが4時間で完売するくらいの人気イベントに成長しています。

ーGreen Rabbits Clubは全て一人で運営しているのでしょうか。

私ともう1人のメンバーで運営をしていて、あとはイベント当日にヘルプできてくれる友人等が数人います。また、毎回イベントでは他の企業さんともコラボすることを意識しており、植物肉など、ヴィーガン商品を展開されている企業さんとコラボさせていただくことが多いです。知り合い経由でコラボできる企業さんやブランドさんを探し、毎回素敵なご縁に恵まれてイベント開催が実現しています。

一番直近では8月1日にモデル/デザイナーのマリエさんとコラボで、POP UPイベントを開催しました。ヴィーガンスナック4社に出店いただき、100名以上のお客様にご来場いただくなど大盛況で終わりました。

ヴィーガンを始めたきっかけ

ー現在に至るまでのお話も聞かせてください。ヴィーガンはいつ頃から始められたのですか。

明確には覚えていないのですが、物心がついた頃からヴィーガンな食生活をしていました。分かりやすくざっくり「7歳から」と言っています。当時はヴィーガンと意識していた訳でも、ヴィーガンという言葉を知っていた訳でもなかったので自分がヴィーガンだと認識したのは高校生の頃になります。

もともと卵と乳製品がアレルギーだったので、小さい頃から食べるを選ぶ際には内容物をチェックする習慣がありました。その習慣から、だんだんそれらの食べ物がどうできているのかを考えるようになり、お肉を食べるために動物を殺していると気づいて、食べるのをやめたのがヴィーガンを始めた理由です。同じ理由で魚介類もやめました。

ーなるほど。ご両親の反応はいかがでしたか。

両親はヴィーガンだった訳ではなかったので「ちゃんとお肉も食べなさい」と言われました。食事はみんなと一緒のメニューだったので、厳格なヴィーガンではなく、一緒にお肉も炒められていたらお肉だけ取り除いて食べたりしていましたね。給食もそんな感じでした。

動物を殺したものを食べたくないから、とは伝えていなかったので、ただ好き嫌いの多い子だと思われていたかと思います。子どもながらに親や周りの友達が普通にお肉を食べているので、そのことを責めたくないという気持ちがあったのかもしれません。

 

勉強も部活もせず、なんとなく過ごしていた中高時代

ー中高生活はどのように過ごされていたのでしょうか。

中学受験をして中高一貫校に進学しました。受験で燃え尽きてしまったこともあり、中高では部活も勉強もやる気が出ず、空白の6年間と私は呼んでいます。唯一、3歳から続けていた新体操の習い事は中高でも続けていました。

中学入学後はほとんど友達もいなかったので、文化祭も修学旅行も全然楽しく過ごせなかったのですが、このまま卒業しちゃったら青春の思い出が何もないと気づいたのが高校2年でした。であれば、せめて最後の文化祭で何か思い出を作ろうと思ったのが私にとっての大きなターニングポイントとなっています。

ー具体的には文化祭で何をされたのですか。

友達もほぼいなかったので勇気を出して仲間を見つけ、有志で出し物をしました。それまでは何事もただ参加する側でとにかく受け身だった私が、初めて運営する側を経験。運営する側の方がただ参加する側よりも濃密で楽しい時間が過ごせ、思い出ができ、人との新しい繋がりができるなど得るものが多いことを知りました。それ以来、運営側にいたいと思うようになったことは今の活動にも影響していると思います。

ー大学の進路についても考える時期に入っていったかと思いますが、進路についてはどのように考えられていましたか。

勉強は好きではなかったのですが、大学を卒業していた方が社会に出てから色々なハードルが低くなるだろうと思っていたので進学しようと決めていました。

大学に入ったら友達をたくさん作りたいという目標ができたのでとりあえず目先の受験勉強を頑張ることにしました。中学3年と高校1年の時に短期留学をしていたことから、英語ができれば日本語だけよりも広い世界を見ることができると実感していたのでので英語が勉強できる環境に行きたいと思っていたこと、大人数の大学には苦手意識を感じていたことから、比較的小規模だった上智大学総合グローバル学部に進学しました。

 

イベントの企画運営の楽しさを知った大学生活

ー大学に進学してみていかがでしたか。

学部選びの際、私はどちらかというと消去法で国際政治を選んだのですが、入学してみたら周りの子たちが皆、具体的に学びたいことが決まっている子や学びたいことに対して原体験を持っている子が多くてびっくりしました。入学してすぐに周りとのレベルの差を感じましたね。

それに加えて、中高では特に何もしてこなかったので、人よりも経験が少ないということにも焦りを感じていました。大学ではとにかくなんでも経験して周りとの差を埋めなければと思っていました。

ー大学ではどのようなことに挑戦されたのでしょうか。

大学ではアジア研究を副専攻に選んでいたのですが、アジアに全然行ったことがなかったのでアジアに行くことを目的に大学教授と共同でネパールとベトナムでのスタディーツアー「AAEE」の企画・運営を大学1年から始めました。AAEEは春休みあるいは夏休みに約2週間、日本人学生10人とネパール人などの現地学生10人がテーマにあわせて国際機関や村、学校などを訪問しながら共同生活を送るプログラムになります。

ースタディーツアーの企画と運営を行う中で大変だったことは何かありましたか。

企画、運営、集客、宣伝などイベントを開催するにあたって必要な全工程を経験できたことはとても良い経験になりました。大学教授が訪問先とのやり取りなどに尽力してくださっていたのでなんとしても人を集めないといけないと思っていたのですが、集客には結構苦労しました。どんな人に来て欲しいか、来て欲しい大学生はどこに集まるのかを考え、集客のためにJICAでイベントをさせていただいたり、同じ学部の人に声かけをしたりしました。

ーAAEE以外で何か他にも挑戦されたことはあったのでしょうか。

大学3年生の時に長期インターンをベンチャーでさせていただきました。急成長中の会社だったので、会社が15人から50人規模まで成長する過程を見ることができたのはラッキーだったなと思います。

また、インターンをしたことで、会社で働くこと、社会人になるとはどういうことがイメージできるようになりました。どんな環境が自分に合っているのかの基準をインターン経験を通して持てたことから就活時に会社選びをしやすかったです。

 

ヴィーガンを誰もが気軽に選択できる社会に

ー就職先はどのように決められたのですか。

AAEEの活動の中で集客に困った経験があったことから、誰かに何かを伝える・広めることについてもっと勉強したいと思い、広告系を中心に就活していました。新卒で入社した会社はブランディングを行っているベンチャー企業でした。2年間、新卒採用のサイトの制作や、合同説明会で配られるようなパンフレット、プロモーション映像、株主総会映像など、媒体問わず幅広い制作に関わりました。

ーそこから転職を決められたきっかけは何だったのでしょうか。

大学4年の頃からヴィーガンについて発信を始め、社会人1年目でGreen Rabbits Clubをスタートさせていたことから、いつかヴィーガンを本業にしたいなという気持ちがあったんです。ただ、環境問題や健康に気を遣う人が増えたことからヴィーガンに注目が集まり、思っていたより早くヴィーガンが流行りだしました。これからヴィーガンが行きやすくなる社会になっていくのに消費者側としてみたくない、ヴィーガンが生きやすくなる社会を作る側に行きたいと思ったことから転職を決意しました。

ー転職してみていかがでしたか。

ブイクックはクックパッドのヴィーガンバージョンのようなレシピサイトを提供していたり、ヴィーガンお惣菜のサブスクを提供しているまだ2期目のスタートアップです。期間限定ECサイトの立ち上げにあたっては私が大好きだったヴィーガンバーガーのお店にお声かけさせていただき、出店していただけただけではなく、限定商品まで用意していただくことができました。

スタートアップだからこそ、自分と誰かの出会いがきっかけで新しい事業が生まれたり、新しいものを世に生み出せることに喜びと楽しさを感じて働いています。

ー吉川さんの行動力や頑張るモチベーションはどこから来ているのでしょうか。

何かやりたい、こんなものがあったらいいな、と思った時に、すぐに行動して実現できる人になりたいと思っているから、かなと思います。

日々意識していることは人生を楽しく生きること。今この瞬間が楽しいかどうかが大事だと思っています。でも楽しく生きるためには自分がどんな時に楽しいと感じるかを知っている必要があります。それさえわかっていれば自分に最適な環境を見つけられるんですよね。

自分の人生なので、自分でモチベーションも楽しいと思える場所も見つけないといけないのですが、そのためには主体性を持って行動することが大事だと思っています。そういう意味では何事もただみているのではなく自分ごとで考えること、主体性も大事にしています。

ー最後に今後挑戦したいことが何かあればぜひ教えてください!

やっとヴィーガンを本業にできたので、ヴィーガンを誰でも気軽に選択できる環境づくりにひとまずは注力したいです。コロナの影響で断念したヴィーガンジャンクフードのフェスも、いつか必ず実現させたいです。

いつか実現させたい夢は、外のオープンスペースで日光を浴びながら仕事ができるような場を作ること。日本にはまだまだオープンスペースが少なく、コワーキングスペースも建物の中ばかりなので、外で仕事をできる環境が増えて欲しいなと思っています。

インタビュー:武海夢(Facebook)
執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter
デザイナー:高橋りえ(Twitter