“大人”なバナナプロジェクト発起人・北本真唯が「やってみたい」を原点に仲間と行動し続ける秘訣とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第339回目となる今回は、北本真唯(きたもと・まゆい)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

北本さんは大学時代にスウェーデンに留学。留学中に食品ロス問題について学んだ際にゴミ箱に多くの果物が捨てられていた点に着目。帰国後、スーパーでバナナが多く廃棄されていることを知り、「“大人”なバナナプロジェクト」を立ち上げました。

「“大人”なバナナプロジェクト」は身近なバナナを通して食品ロス問題について考えてもらおうと企画。茶色くなったバナナは、まだ食べられるにもかかわらず、見た目の悪さから捨てられています。まだ食べられるバナナが捨てられている現状と、茶色いバナナがまだ食べられるバナナである事実を伝えるため、茶色い「大人」なバナナでケーキを作って子どもたちに振る舞ったり、歌を作ったりしています。

社会課題への興味をプロジェクト運営につなげるのに必要なマインドや仲間と一緒に行動を続ける秘訣を、北本さんのこれまでの人生から探りました。

タイ、アメリカ、スウェーデン。異国での気付きから身についた行動力

タイで過ごした幼少期。左端で段差に腰掛けている女の子が北本さん

—早速インタビューを始めていきましょう!まず自己紹介をお願いします。
「“大人”なバナナプロジェクト」発起人の北本真唯です。私は幼少期をタイで過ごし、高校でアメリカ留学、大学ではスウェーデン留学と様々な国でいろんな経験をしました。その経験が今の「“大人”なバナナプロジェクト」につながっています。

—グローバルな経験をされているんですね。タイではどんな思い出がありますか。
「微笑みの国」と言われるように、町中の人たちがニコニコしていて、お店の人やタクシーの運転手さんなど知らない人とでも楽しくおしゃべりしてたなって記憶があります。

楽しい思い出だけでなく、生活の格差も目の当たりにしました。路上にお金を求めて声をかける人がいる一方で、通っていたインターナショナルスクールには裕福な友達がいることに、小さいながらもギャップを感じていました。

私が社会課題に興味を持つようになったのは、タイでの景色が忘れられないからかもしれません。

—なるほど、小さい頃に肌で感じたギャップが原体験なんですね。高校時代の留学でアメリカを選んだのはどうしてですか?
自分の視野をもっと広げたいと思ったからです。

日本で通っていた中高一貫校にはいろんな国からの帰国子女がいました。友達からいろんな国の話を聞いていると、まだまだ自分には知らない世界がたくさんあると思うようになって。

自分の視野を広げるにはいろんな人や文化がある国がいいんじゃないかと、アメリカを選びました。

—アメリカのどこに留学したんですか?
ワシントン州のイートンビルです。カフェラテの商品名にもなっているマウントレーニアの麓にあります。人口3000人ほどの小さな町です。最初は「3000人の町で何ができるんだろう」と不安だったのですが、いざ行ってみるとたくさんチャレンジができました。

—例えばどんなチャレンジですか?
チアリーディングです。ダンスは未経験だったのですが、100種類くらいの振り付けを覚えました。ボランティアにも参加しましたね。

アメリカではチアリーディングに挑戦した

—面白そうですね!アメリカでの生活からはどんな学びがありましたか。
行動すると、いろんな人に出会えていろんな経験ができて視野が広がると実感しました。

また何に関しても自分の意見や意思を伝えるのが大事だと痛感しました。アメリカの人は政治でもそれ以外についてでも、自分の意見を持っているんです。「なんでもいい」「わからない」だとそこでコミュニケーションが終わってしまうので、どんなことに対しても考えて言葉にする力が鍛えられました。

—大学でのスウェーデン留学が「“大人”なバナナプロジェクト」のきっかけと冒頭でお話ししていましたが、もともと食品ロス問題に関心があってスウェーデンを選んだのでしょうか?
いいえ、経済大国アメリカとは違う文化や風土の場所に行こうと、福祉大国のスウェーデンを選びました。

ウプサラの都市自体がサステナビリティに関して先進的で、留学したウプサラ大学には専門の授業もあったんです。サステナビリティを学びながら実際にプロジェクトの企画・運営する授業で、食品ロス問題を学びました。

—授業ではどんなプロジェクトに取り組んだんですか。
捨てられてしまう食材を集めて必要としている人たちに配るプロジェクトです。一緒に授業を受けている学生と、自分たちで問題を設定して立ち上げました。

スウェーデンというと、裕福な国のイメージを持つ人もいると思うんです。でも実際には貧民や難民、毎日の食べ物に困る方々もいます。一方で捨てられる食材が多い先進国共通の問題がありました。もったいないですよね。

そこで廃棄予定の食材を使って料理を作り、お客さんに食べてもらうイベントを開催しました。街中のスーパーをリストアップして、「協力してください」と自転車で回ったんです。料理を振る舞うときには70人くらいに集まって、「これは捨てられる予定の食材だったけどこんなに美味しいものを作れるんですよ」とアピールしました。

その過程でゴミ箱にバナナがたくさん捨てられているのを目にしたのが、“大人”なバナナプロジェクトの着想源になっています。

—「“大人”なバナナプロジェクト」の原型がスウェーデンでできたんですね。

留学中に食料廃棄削減を目指したプロジェクトに取り組む北本さんと友人たち

動けば変わり、言えば叶う。自分が楽しめば、仲間がついてくる

“大人”なバナナプロジェクトに取り組む仲間たち

—北本さんは未経験のことに挑戦したり、小さな気付きからプロジェクトを立ち上げたりする力が強いですよね。どのようにその力が身についたのでしょうか。
「やってみたい」を言葉にすると実現する、少しずつ動くと実現する体験を積み重ねてきたからだと思います。

—海外での経験が大きかったのでしょうか?
もちろんそれもあります。でも海外に行かないと挑戦できないわけではありません。日本でも中学生のときにクラスの友達に声をかけて、商店街で地域交流イベントをやりました。

何かを企画して実現していたのは私だけではありません。中高の同級生にもウプサラ大学の学生たちにも、アクションする人たちが多かった。やりたいことは言葉にしたり行動に移したりすれば実現できるのを、自分でも周囲の姿でも実感していたのが大きいと思います。

—北本さんは周囲を巻き込んだり、仲間を作ったりするのも上手ですよね。仲間づくりの極意はありますか?
スキルよりも「思い」を重視しています。“大人”なバナナプロジェクトにはスウェーデンで一緒にプロジェクトをしていた友達と、サステナビリティに関心がある早稲田大学の友人がメンバーです。同じサステナビリティへの熱意があったから続けられているんだと思います。

—ちなみに北本さんが卒業後は“大人”なバナナプロジェクトの活動はどうするのですか。
プロジェクトに興味がある後輩がいるので、私たちが仕事で動けない平日の活動を任せつつ、新しいメンバーを巻き込んでこれからも活動を続けたいですね。

—周りの人をいい意味で巻き込みながら活動が続くのはどうしてでしょうか。
私たち自身が楽しんでいるのが周りにも伝わっているからでしょうか。

ケーキって作るのも食べるのも楽しいし、捨てられるバナナを少しでも減らせているやりがいもある。私たちの正直な気持ちがプロジェクトを通して出会ったスーパーの人や輸入業者の人、イベントに来てくれた子どもたちなどに伝わっているんだと思います。

—北本さんは挑戦したり一歩踏み出すときに「不安」や「分からない」といった負の感情とはどう付き合っていますか。
私はどんどん分かりそうな人を探して話を聞きに行きます。“大人”なバナナプロジェクトでいえば、そもそも「本当に日本でバナナって廃棄されているの?」という不明点があったんです。そこでスーパーの人に廃棄について聞いたり、統計を調べたりしました。

「分からない」「知りたい」と言っていると自然とその知識を持った人が現れる気がします。そうして話しているうちに接点が増えてだんだんと知識や仲間も増えるので、まずは足を動かすのが不安を消す一歩だと思います。

—不安なまま動かないのではなく、不安もエネルギーにして動くのが大事なんですね。

世の中が少しでも良くなるように、熱い気持ちを持ち続けたい

卒業式では大学生活を過ごしたバナナと共に写真を撮った

—就職後のプロジェクトの展望を聞かせてください。
先日、スーパーの社長からいちごも廃棄が多いと聞いたので、いちごも救えたらなと思います。果物は柔らかいので人が触るとすぐに傷んでしまって廃棄につながってしまう。バナナ以外の果物のロスに対してもなにかできたらと考えているところです。

—「大人な〇〇プロジェクト」はまだまだ広がりそうですね。最後に今後の北本さんの抱負を教えてください。
世の中の課題を解決したい、社会を良くしたい思いは今も強いし、就職しても消えません。行動する大切さを忘れずに、何事においても常に熱い気持ちを持って、仲間とともに楽しく世の中が良くなるように頑張りたいです。

—ありがとうございました。今後の北本さんのご活躍を応援しています!

取材者:山崎貴大(Twitter
執筆者:成田愛恵(Twitter/note
デザイナー:五十嵐有沙(Twitter