もっと身近に「木」を感じてほしい!今、私が伝えたい森のこと 森林デザイナー・森本達郎さん

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第252回目となる今回は、森林デザイナーの森本達郎さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

「木材という資源を身近に感じてほしい」と語る森本さん。森本さんが家業の林業に関わるきっかけになったエピソードや今の世の中の人に伝えたいことを詳しくお伺いしました。

スポーツと街づくりに熱中した学生時代

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

森庄銘木産業株式会社で林業や銘木をはじめとした木材販売をしている森本達郎といいます。

主な事業は林業で、林業とは木を植える、苗をつくる、生えてる木を間伐する、道を作ったりするなど森に携わることのすべてが「林業」と呼ばれています。

もう1つしている生産業の「銘木」とは、建築資材のことです。名木は見た目の木目が綺麗なため、木造住宅で見えるところの柱に使われるものです。

銘木の1つで森庄銘木産業が製造している商品に「磨き丸太」があります。磨き丸太とは、日本伝統産業の1つで床柱などに利用される皮をむいて磨き上げられたスギで、会社がある奈良県の宇陀市の気候が適していて品質のいい丸太が作れるんです。

「林業」と「銘木生産業」、2足の草鞋で経営している会社が森庄銘木産業で、その会社の4代目として修行をしているのが私です。

ー子供時代はどんなお子さんだったかお伺いできますか?

絵に描いたような活発な男の子でした。3つ違いの兄と一緒に野球をしたり、空き地で友達とスポーツをしていましたね。家の近くに会社の工場があり、幼少期から家業と関わる機会が多く、ずっと憧れはありました。

学生になってからは野球と街づくりについての勉強を積極的にしていました。

「街づくり」とは具体的に、現代でいうところの「少子高齢化」を改善することや「地域活性化」のための対策を考えることです。

当時、「少子高齢化」や「地域活性化」が他人事のように感じられず、地域問題を自分に近い課題として認識していました。周りの大人の方々が考えている意見と違った考え方があり、自分なりの方法を模索するために日々勉強をしていました。

地域問題に気づいたきっかけはクラス替えでした。今となってはクラス替えがあることが当たり前ですが、私が住んでいる地域はクラス替えはなかったんです。そのことに気づいたときに地域としての問題や人口が少なくなることの理由を真剣に考えるようになりました。

ー少子高齢化について勉強する一方で、ボランティアにも参加されてるようですがボランティアの活動について詳しくお話いただけますか?

僕は地元を離れて滋賀県草津市の大学で経営学を学んでいました。学部内だけの学びではなく、学校外で地域の方と関わるような活動することで、自分に今できることを考えるような機会が授業としてありました。

その授業の一環でボランティアをしていたんです。例えば、滋賀のお祭りでお祭りの運営や展示物の管理などをしたりしました。

ボランティアでお祭りを手伝うことで、地域の方々との関わりがとても楽しく、勉強になると感じていましたね。

第二の故郷ができたような気分でとても嬉しかったのを覚えています。

家業である林業の難しさとロマン

ー大学卒業後の進路について詳しくお話いただけますか?

大学4年生の時には、周りと同じように就活はしていました。金融機関や広告会社などのインターンに行ってましたが、「その会社に入って自分しかできない仕事があるのか」という考えや地元を離れるのが寂しい気持ちから、実家の家業を継ぎたいと思いました。

しかし卒業後いきなり家業を継ぐわけにもいかず、取引先の大手の商社に就職しました。家業にはいつ戻るかは決めてましたし、辞める時期も就職先に伝えてましたね。

就職した商社は扱っている木材が違っていて、家業とは違う部分の知識に繋がり、1度違う会社に就職してよかったと思いました。

ー家業に活かせた知識や家業に戻ってみて思ったことはありますか?

まず、家業で使ってる木材と就職先で使っている木材は違っていたんです。就職先は輸入材を使うことが多かったんです。一方家業は日本製のものを取り扱っていました。

扱う資材が違っている中で、家族や家業に対して何ができるかを考えたときに「どんな木に需要があるか」「お客様の提案方法」などを商社で学んで家業に戻ってきました。

実際、家業に戻ってからは価値観の違いで喧嘩が多かったです。元々家族の働く姿に憧れがあり、家業の役に立つために勉強をし戻ってきたのにけんかばかりしていたので、喧嘩のために戻ってきたわけじゃない……と気持ちが沈むこともありました。

林業は自分がしたことの答えが出るまでに40年かかるんです。そのため、今していることが正解かどうかわからない点が難しいですね。

ー林業に対するロマンをお伺いできますか?

木を見上げると歴史を感じるんです。自分が植えた木はどうなっていくかはわからないですが、今向き合うのは先代が植えた木で歴史や林業の壮大さにロマンを感じますね。

身近な小さなことから伝えていきたい、限りある資源

ー木が身近にない方々に伝えたいメッセージはありますか?

まず1つは世の中の資源がどう活用されているかを調べてほしいです。木材は限りがあるので代々継承していくべき資源です。今ある資源が私たちの子孫の時には木材が残っているのか考えて欲しいです。

身近な生活の中で、木材と思っていたものが違う物から作られていたり、逆にこの製品は木材で作られていたんだ、と発見があったりします。木材が意外と身近にあることをSNSなどで発信し、多くの方に広めていきたいと思っています。

また、ニュースで土砂崩れのニュースなどをみると、他人事のように思ってる方が多いですが、それは木が減少していることが影響していて、自分の身近に関係があることだと認識してほしいです

ー最後に森本さんの今後の展望をお伺いできますか?

林業は私だけの力で解決できない問題が多く、林業と親和性が深い業界とも協力して課題解決に向かっていく必要があると思います。課題解決に関して、インターネットなどを通してしっかり訴えていきたいです。

今の子供達が大きくなった時の森がよくなっているように1つ1つ身近なところから変えていきたい思っています。子供に胸を張って渡せるような会社にしていきたいと考えています。

ー本当に今日はあっという間でした!素敵なお話ありがとうございました。今後の森本さんのご活躍楽しみにしています。

執筆:ゆず(Twitter
インタビュー:吉永里美(Twitter/note
デザイン:五十嵐有沙(Twitter