高校生CDO松永幸樹が見据える新しい日本の教育のスタイル

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第251回となる今回は、株式会社UnpackedのCDO(チーフデザインオフィサー)として高校生の教育支援事業に携わる、自身も現役高校生の松永幸樹さん。

デザイナーにとどまらず、フォトグラファーや高校生コミュニティ「HIMITSUKICHI」のリーダーとしても幅広く活動されている松永さんのこれまでの歩みと今後の展望について伺いました。

現役高校生による高校生のためのキャリア事業

ー本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。

高校2年生で都立の学校に通っている松永幸樹です。株式会社UnpackedでCDO(チーフデザインオフィサー)として制作の指揮をとったり、高校生コミュニティ「HIMITSUKICHI」のリーダーとしてコミュニティの運営を行っています。

ーCDOと言いますと、具体的にどのようなことをされているのですか。

CDOとして、会社のホームページをはじめとした事業に関わる制作物のデザインや業務委託の指示・管理、また、会社全体のブランディングにも携わり、どういう名前でどういうサービスを展開していくのかを考えています。

ーありがとうございます。松永さんがジョインされている株式会社Unpackedとはどんな会社ですか?

高校生向けのキャリア教育事業を行っている会社です。「高校生が高校生の為に」をコンセプトに、新しい形の教育事業を探究しようと高校生5人と相談役の計6名で立ち上げた会社になります。企業とタッグを組んで教育のプロジェクト開発を支援したり、また高校生向けイベント「U18キャリアサミット」という高校生が自分たちのキャリアと向き合う機会を提供するイベントを開催したりしています。

 

日本教育のスタンダードに違和感を感じる日々

ー現役の高校生が、高校生に向けたキャリア事業を作っているというのは新しいですね。どのようなきっかけがあったのですか?

きっかけはUnpackedにジョインする前、僕が高校1年生の時に遡ります。いわゆる「進学校」と呼ばれる高校に通い始めたのですが、そこでの教育のあり方に疑問を感じました。

ーと言いますと?

僕のいた地元の中学校では、授業中のディスカッションや発言が活発に行われる学校で、「授業は先生だけでなく自分たち生徒も一緒に作るものだ」という意識が強くありました。そのような学校で生活してきて、いざ高校の授業を受けてみると、生徒は黙って先生の話を聞き、ノートを取って、テストを受けている。生徒には主体的な意見を発言する場が少なく、「先生」と「生徒」という位置関係ができている受動型教育に強い違和感を覚えました。

ー日本だとそのような授業形式が一般的ですよね。

友人に聞いたら、僕がいた中学校の授業形式は珍しいと言われ、受動型教育が日本のスタンダードなんだと初めて気がつきました。このような教育がスタンダードだとしたら、日本の教育の行く末はどうなってしまうのだろうと。社会を作っていくための自主的な意見をどのように持ち、発信する方法をどこで学べば良いんだろうというところに疑問を抱いたのが教育事業に携わることになったきっかけになります。

 

既存の在り方に囚われず、新しい枠は自分で作る

ーその後、その疑問を事業にぶつけていくまでにどのような経緯があったのでしょうか?

はい、高校の文化祭で担任の先生と衝突したことが転機となりました。文化祭担当委員としてクラスをまとめていた僕は、取り組みの中で先生に呼び出され、「私の方が偉いんだぞ」という言葉を投げかけられました。その言葉を聞いて、「先生」と「生徒」という上下関係が生まれてしまっている日本の教育の在り方への疑問がより鮮明になりました。

そこでその時抱えていたモヤモヤを、UnpackedのCTOで幼馴染の高津悠樹に相談したところ、「既存の枠にはまりたくないなら、居場所は自分で作ればいいじゃん」という言葉をもらい、高校生のコミュニティを作ることにしました。

ーなるほど、それがコミュニティを立ち上げたきっかけになったんですね。

高校は住んでいる街の区分や偏差値によって分けられるため、会える人が自然と限られてしまいます。ですが、高校生も学校以外でアクティブに活動する場所があってもいいよねという思いがあり、新しくコミュニティ「HIMITSUKICHI」を立ち上げることにしました。

立ち上げ後は「学校の枠に囚われず、仲良くなろう」というのをテーマに、HIMITSUKICHIの初めてのミートアップを開催しました。高校生が企画する同様のイベントでは、SDGsをはじめとした難しい課題についてディスカッションをするなどといったテーマを設けられていることが多いのですが、テーマを設けることで会える人の枠を縛ってしまうことに疑問を感じていたため、HIMITSUKICHIミートアップでは敢えてテーマを設けず、ジャンル問わず面白い人が交流すれば面白くなるよねという考え方のもとで場を設定しました。

ー実際に開催してみて、どうでしたか?

コミュニティのコンセプトが「誰よりも楽しんでやろう」なので、スタッフが一番楽しむという意気込みで会の運営をしました。当日参加した20〜30人ほどの高校生は、いろんなことに取り組んでいる人が集まりましたが、その場では一旦それぞれやっている活動を置いておいて、人間として楽しく関わろうねという形で少人数の会ならではの深い交流をすることができました。

また、そのミートアップにはUnpackedのCOOの中澤治大も参加していて、そこで彼と意気投合しUnpackedへのジョインを決めました。

ー高校生向けのキャリア事業に携わるようになったのは、ご自身が立ち上げたコミュニティでの出会いが始まりだったのですね。Unpackedの中澤さんと仲良くなった理由というのはなんだったのでしょうか。

彼自身も高校生のキャリアに関するプロジェクトを企画していたところで、そのプロジェクトに誘われたのが一つかなと思います。また、ミートアップに来た人の中でも、彼の「交流」を躊躇しない姿勢が印象的でした。ぐいぐいと積極的に会話のキャッチボールをしようとするその勢いに圧倒され、彼との会話がすごく楽しかったと覚えています。

 

デザイナーとしての道は祖父がくれたカメラ

ー現在松永さんはUnpackedでCDOとして働かれていますが、そのスキルや知識はどこで身につけていたんでしょうか。

デザインに関する専門的な知識やスキルを身につけたのは高校に入学してからです。祖父にもらったカメラで写真を撮り始め、撮った写真を加工したいなと思ったのが始まりになります。初めは色味の調整だけでしたが、だんだんと素材の切り貼りにも手を広げ、独学で細かな編集を勉強し始めました。
僕自身、まだまだわからないことが多いですが、学びながら取り組んでいる形になります。

ーデザイナーに限らず、フォトグラファーなどさまざまな創作活動に取り組まれていますが、クリエイティブに目覚めたきっかけはカメラを買ってもらったことが始まりだったのですか?

一番初めは小学生のころに自分で好きな曲を集めたCDを作り、そのラベルも自分で作ってみようと思ったことです。中学生の時には、プログラミングや動画編集、HP制作にも興味を持ち、世の中に出ている制作物を自分も作ってみたいと考えていました。

ーその時から、何かを作っていくということに関心を持たれていたんですね。

はい、特にappleの製品が身近にあったことが大きいと思います。動画編集は専門的な知識と高額な機材が必要になるイメージでしたが、iPad一台でなんでもできることに衝撃を受けました。そこから動画編集やコラ画像の制作など自分で色々作ることに挑戦していましたね。

 

「それはおもろいんか?」を常に自分に問い続ける

ーさまざまな分野に関心を持ち邁進されている松永さんですが、大事にしている軸やモットーはなんですか?

モットーとして「それはおもろいんか?」という言葉を大事にしています。飽き性な性格というのもあるのですが、今自分が取り組んでいることはおもろいんか?と自分自身に問いかけ、チャレンジすることを取捨選択するようにしています。また、会社の会議でも、他の人の意見に妥協して賛同するのではなく、常にこの言葉を意識し、会議がより良い方向に進むよう考えるようにしています。もちろん、会議ではいろんなアイデアがあっていいと思いますが、自分自身に言い聞かせる意味でも意識しています。

ーHIMITSUKICHIのコンセプト「誰よりも楽しんでやろう」もこの言葉に通じるところがありますね。

はい、HIMITSUKICHIは小さい頃に秘密基地を作ったあのワクワク感を忘れないようにという意味を込めて名付けました。

ーありがとうございます。最後に、Unpackedのメンバーとして、またHIMITSUKICHIのリーダーとして活躍されている松永さんの今後の展望を教えてください。

日本の学生の課題である「自分の意見をもつ力」、さらにそれを発信する「アウトプットの力」を伸ばすために、発信する力を養う意味で、人間にしかできない表現・アートを学ぶことに可能性を感じています。
現在AI技術が進歩していますが、それ以上に人間は究極のクリエイティブな生き物だと思うので、
人間にしかできない部分を研ぎ澄ますため、高校だけでなく、小学校の頃から教育パッケージとして「表現」を学べる仕組みを作っていきたいと考えています。
今はプログラミング教育が進んでいますが、さらに「その次」の教育を作っていくイメージです。

また、一個人としては、いつまでも子供の心をもった人間でありたいです。ユニークな人とたくさん関わり、自分自身もワクワクする体験を忘れず、楽しみながらストレスフリーで生きていきたいと考えています。

ーありがとうございます!松永さんの今後のご活躍を期待しています!

取材者:山崎貴大(Twitter)
執筆者:青砥杏奈(Facebook)
デザイナー:五十嵐有沙(Twitter)