様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第149回は興味開発型の学び舎、探究学舎でメインファシリテーターとしてご活躍中の柿木結允さんです。教育に関わりたいいう思いをもちつつも新卒ではIT企業へ就職された柿木さん。そんな柿木さんが再び探究学舎へ戻った理由と教育に関わり続ける理由についてお話いただきました。
受験指導ではなく、興味を増やす授業を
ーまずは簡単に現在のお仕事について教えてください。
今年の1月より受験指導ではなく興味開発を行っている塾、探究学舎で講師をしています。また、授業をするだけではなく、授業のコンテンツ作りや社内システム作りにも関わっています。前職は株式会社ワークスアプリケーションズで大手企業向けのコンサルティング営業を担当していました。
ーまだ転職して8ヶ月なのですね!
はい。学生時代に探究学舎でインターンをさせていただいており、いつか探究学舎で働きたいと思っていましたが、ファーストキャリアとしては株式会社ワークスアプリケーションズを選びました。いつか戻りたいという気持ちがあったので、前職で働いている時も週末は探究学舎でお手伝いをさせていただいていたんです。
ー探究学舎では具体的にどのような授業を開講されているのですか。
1つのテーマについて、様々なアプローチで学ぶ授業を提供しています。テーマは宇宙・元素・数学・歴史・芸術など様々です。これまでは小中学生対象の授業を主にやってきましたが、9月からは新しく中高生向けの授業をスタートさせます。哲学やマーケティングなどのテーマを取り扱う予定で現在はその授業準備に忙しくしています。
昔は実は勉強が苦手だった。
ー過去のお話も聞ければと思いますが、どんな幼少期・学生時代を過ごされていましたか。
何かしたいことがあると友達を集めてやってしまう、グループの中心にいる無鉄砲な子どもでした。一方で勉強は苦手な子どもでしたね。母親が教育熱心だったので中学受験をし、中高一貫の私立に進学しました。中高一貫だったため受験勉強をしなくてよかったので、中学3年までは勉強はせずに部活に熱中する日々を過ごしていました。
ー中学3年まで、ということはその後何か変わったのですか。
中学3年の時に出会った先生をきっかけに勉強を頑張ろうと思い始めました。その先生には「ナンバーワンを目指せ!」と言われたのですが、勉強で一番になるだけでは面白くないと思い、安直ではありますが生徒会長を目指そうと思ったんです。高校1年で生徒会長に出馬し、結局3年間生徒会長を務めました。
生徒会長という立場もあったため、中学から一転して真面目な高校生になりました。一方で生徒会長を務めたことで、大人の事情や暗黙のルールによりやりたいことができないことに対して不満を持つようになるようになったのもこの時期でした。
ーそんな中、大学の進路選択はどのように決められたのですか。
高校入学時は先生になりたいと思っていたのですが、その後、生徒会での経験から組織やリーダーシップについて学びたいと思うようになりました。また、父が海上保安庁に勤めていたこともあり、「父を超えたい。」という思いから、海保大を考えましたが、私は文系だったので防衛大学校に進学することを考え、防衛大学校を受験しました。結果は補欠合格だったため、防衛大学校に入って組織を体感するのではなく、経営学部で組織を勉強することに決め、横浜市立大学国際総合科学部経営学コースに進学しました。
自我を意識した大学時代と探究学舎との出会い
ー大学生活はいかがでしたか。
高校と違い校則がなくなり、生徒会長だった高校時代に比べるとかなり自由な学生生活を過ごすことができました。これまで両親の考え方を重視して選択してきたため、大学に入ってからは、自我があまりないことに気づくようになりました。そのため自分の考えや気持ちを元に行動したり発言したりすることを意識するようになりました。
また、物理的に家族と距離を取ることで自分らしい生活を送ることができるかもと思い、大学3年では1年間ウィーンへ留学もしました。欧米への留学を希望していたのですが、大学の留学制度には韓国・中国・オーストリアしか選択肢がなかったためオーストリアを選びました。しかし、ドイツ語がまったくできなかったため留学して初めの半年間はドイツ語教室に通う日々でした。結果的に、大学入学許可レベルまでは到達したものの、残りの半年間は思い切ってドイツ語で行われる授業ばかりを取ってしまい、流石に半年のドイツ語勉強だけでは無理があり、単位を取ることができませんでした…
ー探究学舎とはどのように出会われたのですか。
留学中にたまたま存在を知りました。「日本の教育社会学」というマスターのゼミがあり、そこで発表に向けた調べ物をしてる際にたまたま「京大3兄弟」の記事を見つけ、日本に帰国後関わりたいと思いました。単位が足りず留年が決まった大学5年の時に、直接メールを送り、インターンさせていただけることになりました。
ー探究学舎に惹かれた理由は何だったのでしょうか。
探究学舎が、自分自身がやりたいと思っていた教育の方法を実践していたことです。
教育に携わりたいと思い、それまでに他の塾で講師のバイトをしていたことがありましたが、成績をあげることを目的に授業をするのは面白くありませんでした。その塾で、一度塾の方針を無視して、自分なりの授業をやってみたところ、子どもたちからは評価がよかったのですが、塾長には「親御さんからは成績をあげてくださいと言われているからそのような授業は困ります」と言われてしまったんです。
それ以来、成績重視ではない、のびのびとした環境で教えられる塾で教えたいと考えていたので探究学舎を見つけた時「これだ!」と思いましたね。
子どもたちの「やりたい」をサポートし続けたい
ーそしていつか戻ると決めつつ、前職のワークスアプリケーションズを選んだ理由は何だったのでしょうか。
ビジネス経験のない先生よりもある先生の方がいいと思ったからです。探究学舎は受験勉強ではない教育の場だからこそ、ビジネス経験をしていた方がより多くのものを子どもたちに提供できると思いました。ワークスアプリケーションズは当時、高収入・自由な裁量がありそうという2つを重視していた私にぴったりだと思い入社を決めました。
ー実際入社してみていかがでしたか。
ちょうど会社が1年間に1000人規模で採用している過渡期で組織が急激に拡大しており、マネージメントスタイルがどんどん変わり、統制されている感じを入社して感じました。そういう意味で入社前のイメージとはギャップがありました。初めは営業を担当していたのですが、途中で企画兼営業の部署になってからは自由に仕事ができる環境になったのはよかったなと思います。
仕事中心の生活を送っていたのですが、月2回程は探究学舎にお手伝いしにいっていました。塾長の宝槻から「いつ戻ってくるの?」と言われることも多く、将来について考えた結果やはりIT業界ではなく教育に携わりたいと思い、担当していた仕事が落ち着く目処も立ったので、そのタイミングで転職を決意しました。
ーいつか戻ると決められていた探究学舎についに戻られたとのことですが、今後の目標があれば教えてください!
直近では子ども向けのベンチャーキャピタルを作りたいなと密かに考えています。ビジネスをやりたいと考えている子が実際に挑戦できるよう、必要な資金をサポートできればと思ったからです。
私自身が多方面に興味を持っていたものの、やりたいと思ったことが大人の事情やお金を理由にしてできなかった経験があるので、子どもたちがやりたいと思ったことを叶えられるようにサポートできる存在であり続けたいと思っています。やりたいことがある子どもたちの「やってみたい」を応援し続けたいです。
ーありがとうございました!益々のご活躍、応援しています。
取材者:高尾有沙 (Twitter)
執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter)
デザイナー:五十嵐有沙 (Twitter)