「ときめき」を可視化する!? 14歳で起業すると決めた山本愛優美の目指す世界とは

色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。今回のゲストは、慶應義塾大学の2年生でありながら、NexstarCEOとして活躍される山本愛優美(やまもと・あゆみ)さんです!

北海道の14歳の少女がナゼ起業家の道を志したのか…?「ときめき」の研究とは…?とてもユニークな山本さんの経歴と、魅力とエネルギーの源についてたっぷり伺いました!

山本さんのテーマ・「ときめき」を可視化する研究とは!?

ー現在、大学2年生の山本さんは、どのような分野の学問を専攻しているのですか?

私は慶応義塾大学環境情報学部にて、「ときめき」の研究を行っています。私の行動軸である「ときめきで溢れる世界を作る」をビジョンに、ときめきを可視化する研究をしています!

また、学業以外にビジネスの分野では、NexterのCEOとして活動しています。

メインの事業は教育×エンタメの分野の事業づくりで、2020年1月まで、学べる恋愛ゲーム「Smart Kiss」の制作をしたり、高校生の時には「超学校祭」というような学校の垣根を超えた学園祭イベントのプロデュースなどをしていました。

現在でも生まれ育った北海道にて、プログラミング教室を開催したり地元のラジオ番組に出演したりしています。

ー早速ですが、「ときめきの可視化」ってすごくユニークな研究テーマですね!

ありがとうございます!私も、まだ分からないことだらけの領域なのですが、非常に面白いですし、やりがいがあります。「ときめき」という言葉は、実はすごく定義が曖昧な日本独自の言葉なんです。

辞書で調べると、未実現の事に関する憧れ・期待感という定義が広く使われています。1000年前の枕草子や源氏物語では、「時めく」とは、長く時間に乗って栄えるという定義があり、最近だと『人生がときめく片づけの魔法』の著者・こんまりさんが海外でも話題で、「spark joy」のような意味のときめきもあると思っています。

私は、ときめきの定義は、その人や瞬間によって移り変わっていくものと捉えています。そして、このときめきの違いを通じてどのような身体変化があるのか…?ここを解明して言語化し、ときめきの研究家になりたいです!

ー面白そうですね!「ときめきの研究」では、どのようなことを取り組んでいますか?

何かテクノロジーを使って幸せ・喜びといったときめく瞬間を可視化できないかな…?と考え、現在は推理指標として心拍と表情を用いた可視化を目指しているところです。

近年は非常に簡単に計測できるキットのようなものがあり、小さなチップを手や耳たぶにあてたり、イヤリングのようなカタチで身につけられるもので心拍を計測しています。

また、表情はカメラで撮影して分析するプログラムを活用しています!

ーときめきの研究だけでも面白そうですが、高校生で起業をした経歴もなかなか面白そうですよね!以前からリーダーシップを発揮する場面は多かったのですか?

過去に遡ると、中学2年生の頃に生徒会長をやっていました。ですが…実はこのときの出来事が、私の人生で初めて自己肯定感が下がった、挫折経験にもなっています。

ー中学生の山本さんに、一体何があったのでしょう?

当時の私は、「生徒会長になったからには、何かしら生徒が楽しい学校生活を送れるような工夫がしたい」と考え、色々なプロジェクトの企画を先生に提案をしていたのですが、ことごとくうまく行かず空回りしていました。

結局、自分がやりたいことは何ひとつ実現できないまま、次の時期の選挙に突入したんです。当然、選挙に出るつもりでした。

ですが、選挙に出るか・出ないかのタイミングで先生に突然呼び出され、「山本は、生徒会長の器じゃないから生徒会長の選挙には出ない方がいいんじゃないか? これまで、自分自身でちゃんと生徒会長をやれたという自覚はあるか?」と言われてしまったんです。

その一言で、自分が全力を注いでいたものを否定され、自信を失くしたのと同時に、学校内での居場所もなくなってしまったような感覚でした。非常に凹みましたし、毎日泣くほど辛かったです。結局、中学3年生では生徒会長にはならずに終わってしまいました。

ーなんと…。その後、中学3年生で起業をしたとのことですが、その時の悔しさが影響しているのでしょうか?

生徒会長になれなかったこと、器じゃないと言われたことが悔しくて悲しくて、自分の居場所が学校にないように感じてから、「何かしら自分のエネルギーをぶつけられる、学校以外の場所を探そう」と思うようになっていました。

でもそれだけがキッカケではないんです。もう1つの起業のキッカケは、中2〜中3になる春休みに、漫画『銀の匙 Silver Spoon』を読んだのが影響しています!

 

悔しさと漫画がキッカケで起業家の道へ!高校生起業家が北海道に爆誕した瞬間

ーまさか漫画が起業に影響しているとは!その理由を教えて下さい!

この漫画は酪農高校の話なのですが、私の出身の北海道の帯広市が舞台でして、作中に出てくる風景が毎日使う通学路だったり、実生活と重なっている部分が非常に多く好きな作品なんです。

ちょうど生徒会の件で落ち込んでいたくらいの時期に、主人公が起業するエピソードが発売されたんです。なんとなく学校の外に居場所が欲しい気持ちと、いつか起業したいなという気持ちが、その主人公と重なって明確になりました!

この2つのキッカケがあって、起業家の道に進むようになっていきました。それほど『銀の匙』は、人生を変えてくれた一冊に選ぶほど、影響を受けた漫画です!

ー起業家になろう!と思った後は、どのような行動に出ましたか?

起業しよう!と思ってから、すごくラッキーなタイミングで、北海道の帯広信用金庫と野村総合研究所(NRI)が一緒になって、十勝の起業家人材を育成しようというプログラム「とかちイノベーションプログラム」の開催が発表されました。

私が中3の4月にそのリリースが地元の新聞に出ており、6月から参加しました。

当時は14歳。一番年齢が近い人でも22歳という、年齢や経験も圧倒的に上の方々に混ざって参加していました。非常に刺激的な影響を受けながら行動をしはじめました!

ー14歳で起業家を目指すなんて、大人の方からすごく可愛がられそうですね!

そうですね(笑)スーツの人に混ざって、1人だけ制服でした。すごく目立ってましたし、起業したい10代なんて地元にいなかったので、「14歳で起業なんて、期待の星だ!」という感じで注目を浴びました。

自分では、子供だからって舐められないようにちゃんとしよう…しなくちゃ…と頑張っていたものの、周囲の期待がどんどん大きくなる一方、自分自身が想定していた以上に期待され、求められてしまうことに苦しみました。

「山本さん、こんな事もできないの?」と思われてしまうことで自信を失くしましたし、期待に答えられないことも、事業が前に踏み出せないことも精神的にすごくしんどいなと思ってました。キラキラしながら話している自分と、実際に何も出来ない自分の虚像に苦しんだスタートでした。

ーその苦しい時期は、どう乗り越えたのですか?

うんと年上の方々にやりたいことやビジョンに共感してもらえないことが辛かったので、

高校に入ってからは学生団体を立ち上げ、まずは身近な考えをもっているような同年代の仲間を集めようと思うようになりました。

結果、4つの学生団体の代表をすることになり、自然と共感してくれる仲間が増えていってくれ、乗り越えていきました。

ー高校生活では、学生起業家として注目されたのでは?

そうですね。高校のクラスでも浮きました(笑)アウェーな感じがしたのを覚えています。

クラスの中で馴染めないこともあって、仲のいい子は数名いたのですが、距離を感じる場面もありました。学校の外で頑張ったら、学校の中で居づらくなってしまい、それがストレスで学校に行きたくないこともありましたね…。

しかし、転機があったのも、高校時代です。

学祭期間で授業などがなく、時間的に余裕があった時期に開業届を提出したところ、地元の新聞に大きく「高校生起業家・山本さん誕生!」と掲載され、メディアに出るようになってからクラスの中でも一目置かれるようになっていきました。そこから、北海道の中で自分のやりたいことをやるんだ!と無双していた気がします(笑)

注目され、メディアに出ることもしばしばありました。でも実は、起業した当初は全然うまく行かなかったんです。

 

クラス・学校・地元の枠を超えるムーブメントを実現!今後は日本一の「ときめき研究家」を目指す。

ー高校生の時はどのような事業を行っていたのですか?

最初は高校生の様々なデータを集め、高校生向けのマーケティングを行っている企業さんに活用いただけるように売り込んでいました。企業さん側も、高校生かつ起業家として活動する私に会ってくれるものの、実際の業務提携には結びつかない…ということが続きました。

このままでは良くないなと感じていた際に、学生団体に所属していた友人から、「私も学生団体を作りたいんだけど、どうしたら良い?」「私もアユみたいに起業したい!」相談を受け始めるようになっていました。

その量が、ただ友人と話す時間とかで収まらないほどに増えていった際に、「これはもしかしたら、事業になるかもしれない!」と考え、中学生・高校生の起業のコンサルティングとしての相談件数を実績として増やしていき、企業さんと育成プログラムを立ち上げるなど、事業提携が出来るようになっていきました。

そのキッカケもあって、BSジャパンで放送されていたTV番組、「14歳からのスタートアップ」にも、登壇させていただきました。それでさらに自分の知名度も上がったと思います。

ー学校の垣根を超えた取り組み「超学校祭」についても知りたいです!

中高生向けコンサルティング事業の立ち上げ当時の自分のビジョンは、「教育の機会格差を是正したい」というちょっと硬いテーマだったんです。

これは私が小中高と地元の学校に通う中で、日常生活だけでは学びの楽しさに触れる機会が全然ないな〜と考えはじめたのがキッカケでした。勉強だけではなく様々な学びが、世の中にはあることを、学校の外に作れないか?と思い、奮闘していました。

「超学校祭」は地元の商店街と、地域の色々な高校が集まってコラボし、文化祭のようなものを実施するというイベントです。

日常生活では、他校の生徒に会う機会なんてないけれど、面白い人に出会いたい!という気持ちが原動力になって、学校外の友人と繋がれる瞬間を文化祭というカタチにしました。

また、地元のシャッター商店街をなんとかしたいという思いもあったので、開催場所として地元の商店街を選び、活気を取り戻したい!という願いが多くの人を動かしたんだと思います。

ーやってみてどうでしたか?

反響はかなり大きく、大分県の高校生が「私も超学校祭を開催したいです!」という連絡をくれて、わざわざ東京まで会いに来てくれました。今年の秋に、オンラインで実施する予定になっています。

こういったカタチで、自分がやったことがムーブメントのように北海道以外に普及しているのはすごく嬉しいですし、やってよかった!と思える理由です。

また、メディアにも注目され、憧れだったTED×Sapporoで登壇でき、自分のことをアウトプットできたのもすごく大きな自信に繋がりました。

このイベントをやってみて、自分の好きなこと(自分のときめき)と、社会にとって意義があること(世界のときめき)…この2つが重なるポイントを見つけることが、自分は得意なのかもしれないという発見もありました。

ー中高生向けの支援事業から、「ときめき」がテーマになったのはいつから?

「超学校祭」が大盛況で終わった高校3年生の8月頃に、急に虚無感に襲われたんです。

それまで私が使ってきた”高校生起業家”という肩書きがアイデンティティになっていたけれど、高校を卒業すると、このアイデンティティも無くなってしまう…というのが急に怖くなったんです。

そこから、年齢に関係なくやりたいことをやろう。高校生の自分ではなく「山本愛優美」だから出来ることをやりたい!と考えた際に、たどり着いたのが「ときめき」だったんです。

これまで自分がやってきた行動軸を考えた時、ぱっと口に出た言葉が「ときめき」でした。すごくシンプルで、でも腑に落ちる言葉が直感的に出てきたという感じです!

ーそこから東京の大学に進学するときにも、ドラマがあったんですよね。

そうです。かねてより東京大学の教育学部の推薦入試で合格することを目標に、自分なりに資料を作ったり合格者に話を聞いたりして、頑張って臨んだ結果…落ちてしまいました。

その時、実は「ときめきを追求したいのに、何で教育学部なんだろう」というちょっとしたモヤモヤはあったんですね。でも、ときめきを追求したい理由をうまく言語化出来ずに受験に臨んだので、もしかしたらその軸が揺れていたのが原因だったのかもしれません。

落ちた結果、本当に大学に行きたいのか?やりたいことは何か?ととことん自分に向き合う事ができ、結果、やっぱり「ときめきを研究したい!」と感じ、慶應義塾大学に進学することが出来ました。今では、あの時不合格になったからこそ、今の私がいるんだと思います。

当時の出来事は漫画にもなっているので、良かったら読んでみてください!

ー大学に入学してから、事業の方は何か進展がありましたか?

高校を卒業して一緒に起業しようと誘っていた友人と、一緒に事業のアイディアを考えた時、「自分のときめきと、世界のときめきが重なる箇所ってどこだろう?」「世界をどうやったらときめかせることが出来るんだろう?」と考え、恋愛ゲームを考えました!

これは自分が高校生だった頃に、知名度や偏差値を元に、地元の有名大学への進学しか決められない進路選択への疑問や違和感をなくしたい!辛そうな受験勉強を楽しくさせたい!という課題感から発案したものでした。

また、自分自身が知的なイケメンにときめいたり、少女漫画や恋愛ゲーム好きだったことも関係しています。

制作した「Smart Kiss」という恋愛ゲームは、大学を舞台に色々な分野を専攻しているイケメンと出会い、楽しく進路選択や大学生活をスタートさせていくゲーム。進路選択や将来を考える入り口となるようなエンタメとして、恋愛×教育ゲームというプロダクトでした!

ー面白いテーマですよね!でもストップしてしまった背景は…?

10ヶ月ほどプロダクトに関わってβ版もリリースしていたのですが、中止した理由は、「本当に世界を幸せにできているのか?」という疑問を持ち始めたからです。

すごくありがたいことに、ゲームのファンもいてくれるのですが、数としてはまだまだ少ない状態でした。日常生活において、無くてはならないものではないですし、事業としてお金になるイメージもなかったんですね。

ずっと育ててきた我が子のようなプロダクトがストップすることも、周囲の関わってくれていた人のことを考えても、苦渋の決断でした。

今は、この決断があったからこその次の進展があるので、プラスに捉えています!

ーときめきをベースに、山本さんが今後実現していきたいことは?

高校生として起業していたバックグラウンドと大学での研究を軸に、ビジネスとアカデミアの両面から「ときめきで溢れる世界を作る」というのが大きな目標です!

今後も、ビジネスの分野でときめくようなモノを生み出しつつ、学業の面でもときめきの追求・解明を続けていきたいと考えています。

現時点では、大学院への進学を考えていますが、私がときめきに関して日本で一番詳しくなったと感じたら、ときめきの研究や理論を元にした事業展開も考え挑戦していきたいです。

将来的には、地元の北海道に関わり続けながら、東京と、あとは海外や好きになった方の地元など、複数拠点を股に掛けて活躍していきたいと思っています。

ー最後に、山本さんにとっての「ときめき」とは?

一言で言うと、ときめきとは「人生のコンパス」です。

ときめきの研究を続けることで、他人に決められる幸せの定義ではなく、自分が感じる好きなものを追い求めていく人生を歩んで良いんだ!ということを伝えたいです。

ときめきとを軸に、皆がやりたいことを自分の力で実現できるような、そしてそんな人を周囲も理解し、応援できる…そんな社会になると良いなと思っています。

ー今後の活躍も非常に楽しみです。素敵なお話、ありがとうございました!

参考:
高校生起業家になった時の新聞記事
超学校祭Twitter
TED×Sapporp登壇の様子

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取材:西村創一朗(Twitter
写真:山本さんご提供
執筆:Moe
デザイン:五十嵐有沙