未来のお仕事図鑑 | 山崎聡一郎、渡辺さきー自分の好きなことを仕事にするために本当に必要なこと

こどもたちに学校外の学びを届けるオンライン授業の検索・予約サイト「キッズウィークエンド」と、ユニークな価値観を持つ29歳以下の世代(U-29世代)のためのコミュニティ型メディア「U-29.com」との、小学生向けコラボレーション講座が実現!

「秋のオンラインこどもフェス」(9/21~22開催。主催:キッズウィークエンド)の目玉講座として、「未来のお仕事図鑑:大ヒット本著者×兼業YouTuber」を生配信しました。

イベントには、自分の将来を考えるヒントをくれる2名の方を講師としてお呼びいたしました。

山崎聡一郎

『こども六法』著者、教育研究者、写真家、俳優、合同会社Art&Arts社長。慶應義塾大学総合政策部卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学)。学部2年より「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究活動を開始。3年時に法教育副教材『こども六法』を作成した。現在は、いじめ問題に関する研究・情報発信を行いながらミュージカル俳優としても活動。劇団四季「ノートルダムの鐘」に出演するなど多方面で活躍し、各活動で相乗効果を発揮することを目指している。座右の銘は「二兎を追うものは三兎以上を得る」。

渡辺さき

(株)リクルート勤務/兼業YouTuber。首都大学東京(現 東京都立大学)理学部化学科卒業。2010年〜2015年、学業と並行してレースクイーンやMC・司会としても活動。2015年に入社後も、フリーのMC・司会業として活動を続けている。2019年より兼業YouTuberとして「ITすきま教室」の運営を開始。チャンネル登録者数は24,000人(2020/9月時点)。

 

キーワードは「夢中」になるものがあるということ。社会で活躍するふたりの幼少期に迫る!

ーお二方共に社会で活躍されているのですが、改めて今のお仕事について教えてください!

山崎聡一郎さん(以下、山崎):今僕は、大きく分けて4つの仕事をしています。1つ目が「教育研究者」として教育に関する調査・研究・執筆をすること。2つ目が「写真家」。3つ目が「ミュージカル俳優」。そして4つ目が「Art&Artsの社長」です。自分の好きなことを突き詰めていった結果、この4つの仕事を持つこととなりました。

渡辺さきさん(以下、渡辺)現在私は、(株)リクルートで働きながらYouTuberとして「ITすきま教室」の運営を行っています。このYouTubeは、スキマ時間でさくっと勉強できるIT国家資格のコンテンツを配信しているもので、なぜ私がこれをやろうと思ったかについては、また後ほど詳しくお話しさせていただきますね!

ーお二人とも非常に興味深い働き方をされているということで、その辺も気になるところなのですが、まずは過去に遡ってお話を聞いてみたいと思います。お二人はどんな幼少期を過ごされていたんですか?

山崎僕は小さい頃から夢中になる好きなことがたくさんあったんです。その関心は大きく分けて3つあって、一つ目が「囲碁」です。4歳で初めて囲碁に出会ってからはかなりのめり込んでいき、その後小学生時には、地元の大会で優勝したり、中学校では囲碁愛好会を立ち上げるほどの熱中具合でした。

二つ目に夢中だったことは「戦艦大和」です。これは、大日本帝国海軍が建造した大和型戦艦の1番艦のことで、僕は小学校5年生の時に見た映画「男たちの大和」の撮影用の実寸大セットを見学してこの戦艦と出会いました。大きさが東京タワー位あるそれはそれは大きな戦艦に、幼いながらにロマンを感じたんですよね。戦艦大和に関するあらゆる情報を調べていくうちに、太平洋戦争に興味が湧いてきて、ひいては外交・政治・文化・軍事技術などの分野にも詳しくなっていきました。この体験を通して、ここから政治への興味が強くなり、小学校5年生で市議会議員の後援会に入ったり、高校時代には社会科研究部に入部したりするようになりました。

三つ目に夢中だったことは「カメラ」です。きっかけは、小学校4年生の時に祖父のカメラコレクションを見て、「欲しい!」と言ったことなのですがその時に「インスタントカメラから始めてちゃんと撮れるようになったらあげる」と言われ、そのカメラ欲しさに写真を撮り始めたことにあります。その結果、一年後のクリスマスプレゼントには、コニカミノルタ製APSフィルム用コンパクトカメラをもらい、そこからはどんどん写真の世界に魅了されていきましたね。中学校では写真部に入部したり、大学生になってもその活動は続けていき、ディズニーランド・シーに行っては延々と写真を撮っていました。それらの経験が大成して、大学3年生でオペラ歌手の方のプロフィール写真撮影の仕事を受けることになり、それを皮切りにその後も舞台写真や宣材写真などを仕事として撮影していくようになります。

これ以外にも、城郭建築や合唱、携帯電話・スマートフォンの技術やビジネスモデルなどにも興味があり、本当に色々なことに熱中した学生時代を送っていました。

ー幼少期から学生時代に様々なことに熱中していたのですね!しかも、多趣味な上にそのどれもが何かで優勝したり、今の職業に繋がっていたりして、ただ趣味である範疇を超えて極めているところが流石だなと思いました。ちなみに政治家の後援会に入ったということですがこれはどういうきっかけで入ったんですか!?

さっきの話の通り、政治にはとても興味あって政治関連の番組などを見ていたりもしていました。後援会に入る直接的なきっかけは、塾に行く時に毎日駅で演説をしていた政治家を見て、シンプルに毎日演説を続けていることがすごいなと思ったんですよね。そこでなんとなく応援したくなり、その方の後援会に入会しました。ただ、後援会と言っても活動報告が書かれたものが家に届くだけなので、特別何かをすることはないんですけどね。

ーすごいな、と思っても後援会に入るというアクションはその年齢で起こせる人はあまりいないと思うので、その行動力が素晴らしいと思います!では、次に渡辺さんの幼少期のお話もお聞かせください。

渡辺私は、2歳からクラシックピアノを習っていたのですが、それにものすごく夢中になっていました。最初は、お母さんに引っ張られながらやっていて、友達もいるし行くか、くらいのテンションだったんですけど、小学校時にも続け中高は音楽に強い中高に進学しました。

音楽と同じく、幼少期の私がはまっていたのが「科学」でした。これに興味を持ったのは中学受験時で、その時に漠然と研究者になりたいという夢を描いていました。中高はピアノもやりつつ、「自然科学」の分野に興味を持って学びを深めていきました。自然科学というとイメージが沸きにくいと思うのですが、地球温暖化や砂漠化などの分野がそれに当たります。高校時には、ニュージーランドで水質や大気の勉強を英語で学んだこともありました。ということで、大学もそれを学びたい気持ちで理学部化学科に進学をするのですが、周りがあまりにも優秀すぎて入学3ヶ月にして研究者の道を諦めてしまったんです(笑)

そこからどうしようか、と考えひとまず優秀な人が多そうという理由で(株)リクルートに入社を決めました。ただ社会に足を踏み入れた時、それまで科学の勉強ばっかりしていたので、ITの知識がまるでない自分に気がついたんです。それが副業YouTuberの始まりで、自分の勉強して得た知識をYouTubeでシェアしようと思ったんです。

ー憧れていた研究者の道は閉ざされても挫折することなく人生を切り開くその姿が非常に素敵だと思いました。そして、自分の学びから得られたものをYouTubeでシェアするというアイデアもとてもいいですね!ぜひおふたりの大学の話ももう少し聞いてみたいと思うのですが、大学で勉強していたことも教えてください!

渡辺:私は、大学生の時は理論化学計算の研究室で、原子をあるレーザーに当てて違うものに変化させるという実験を行ったりしていました。これを勉強しようと思ったきっかけが東日本大震災でセシウムに興味を持ったことでした。また、エネルギーの計算ってパソコンで計算をかけるので、プログラミングの知識も学べるというのが魅力的で学んでいました。

山崎:大学時代は、様々なことを学んでいました。先ほどの政治に関しては引き続き勉強していましたし、あとは法律、学習環境デザインというものも勉強していました。この学習環境デザインというのは、ストレスが少なく頭に残りやすい学習の環境作りを考えたりするもののことです。

好きなことも極めればいつかそれが仕事になる。大切なのは仕事になるまで遊ぶということ

ー幼少期から様々なことに熱中してきて、それが今の仕事につながっていると思うのですが、当時からそれを仕事にしようと思っていたのですが?

山崎仕事にしようと思ってやっていたことは、一つもないです。僕は今は自分の好きなことを仕事にしていますが、それは親の想いとは少しかけ離れているんですよね。僕が親から言われていたのは、優秀な高校や大学に進学して立派な企業に就職して欲しいということで、今の僕とは全く違うんです。親のこういう想いを知っていたので、今はこんな僕ですが昔は大企業に就職をするのかな、と漠然と思っていた時期もありました。なので、大好きなカメラや歌うことがまさか仕事になるなんて考えてもいませんでしたね。

みんなに言えるとしたら、「仕事になるまで遊べ」ということです。僕は、好きなことを仕事にしようと思ってやっていたわけではないけど、仕事にするチャンスがたまたま来た時にその準備ができていたので、それをうまく仕事にすることができました。なので、遊びでやっていることも本気で取り組んで極めれば仕事になるということです。

ー「仕事になるまで遊べ」っていう言葉とっても素敵です。様々なことに熱中してくる中で多くの体験をしてきたと思うのですが、これは子供のうちに経験した方がいい、ということとかってありますか?

山崎生きるのに必要なことはやっておいたほうがいいと思います。例えば「水泳」です。僕は、もともと髪を洗うのも嫌なほど水が嫌いだったのですが、プールを始めてから水に顔つけらるようになりました。あとは、身体を動かす癖は付けておくといいかもしれません。僕は体育が嫌いだったのですが、子供のうちに運動しておいたほうが良かったと大人になって思いましたね。

渡辺:私も運動については賛成です!やっぱり体力をつけるというのが非常に大切だと思います。そのためには、やはり運動ですよね。私は、女子校で体育祭は2年に1回くらいしかなかったので、もう少し運動すればよかったかななんて思ったりもします(笑)実際私も受験や仕事体力を必要とする場面が多々ありまして、それを乗り越えるためにやはり体力は必要だと思いました。

周りにとやかく言われるかもしれない。大切なのはそれでも自分の信念を貫いて突き進むこと。

ー先ほど少し山崎さんのお話で親御さんのお話が出ましたが、おふたりはどんな家庭で育ったんですか?

渡辺:私の母は専業主婦で、父はシステムエンジニアとして働いています。母は、女の子が生まれた瞬間「女の子らしく音楽が好きで、花柄のワンピースを着るような子に育って欲しい」と思ったと思うのですが、小学校の時にうちの子はそういうタイプとは違うと気づいて、そこからは私のやりたいことをやらせてくれるようになりました。親であれば、自分が思い描く子供のイメージと現実にギャップが生じるということはよくあると思うのですが、私は自分が親にそうしてもらったように子供の意思を尊重できるスタンスがすごく素敵だなと思っています。

山崎:僕の父は宇宙航空技術者でロケットのエンジンを作ったりしています。母は元専業主婦で今はパートでとして働いています。先ほども話に出たように、親は僕に大企業に入って安定した人生を送って欲しいと思っていました。なので、僕は真逆の親がやって欲しくない職業ばかり攻めていったことになりますね(笑)「これをやりたい!」と声を上げても、支援はしてくれるような雰囲気はなかったですね。

ーそれでは、結構お二人は真逆の環境で育ったということですね。今の山崎さんの話にもありましたが「やりたいことを仕事にしたいと思った時に、反対されたらどういう対応したらいい?」という質問もあったのですがこれに対してはどうですか?

山崎:「諦めて自分が納得できるか」が全ての指標になると僕は思います。自分の人生は一回しかないですし、自分の人生なので周りにとやかく言われても、最終的に責任を取るのは自分です。周りから言われて、手放すような決意であればそれはその程度だったということなんですよね。反対されてもやりたいことであれば、どんな手段を使ってもやったほうがいいと僕は思います!もし、周りの反対を聞き入れて諦める決断をしたら、将来後悔したとしても結局やらないと決めた「自分の選択」を後悔することになるので。

渡辺:私の場合、今副業でやっているYouTuberがまさにそれでした。今でこそYouTuberは職業としても社会で認められてきましたが、当時は「そんな歳で何やってるの?」というのが周りの反応だったんです。もちろん最初は、フォロワーもチャンネル登録者数もいなし、再生回数全くありません。周りからは「そんなことやって何になるの」というような冷ややかな目でみられていても、私は自分の座右の銘「100歳から舞い戻ってきた人生を生きる」という言葉で自分を立て直し、その信念を貫き通しました。あとは、ここでやらなかったら、この後同じ道を歩む人たちが私と同じ苦労を味わうという正義感にも駆られていました(笑)

ー質問の中には「夢がありすぎて決められない」というお悩みも届いています。こちらに関してはどうですか?

渡辺:二つやり方があると思います。一つは、いろいろな興味があるということで、そのそれぞれを点と点をつなげて、延長線上に何があるかというのを考えてみてる方法です。もう一つは、本屋さんに行ってみてどんなものに興味があるかを本を手に取りながら探してみるという方法です。これも結構おすすめで、自分が思ってもみないような興味やアイデアを見つけたり、それこそ思わぬ点と点がつながったりすることもありますよ。

山崎:やりたいものから順番に手をつけていくのが僕おすすめです!「好き」と「できる」は実は違うんですよね。どこでわかるかというと、それはやってみないとわかりません。僕は、好きでやってみたこともあったけど、ものにならないこともありました。例えば、プラモデルが好きだったけど、できるようにはならなかったみたいなことです。囲碁は本当に熱中したことだったけど、棋士にはなれなかったし。そういう意味でやってみないとわからないことは多いと思うので、まずはやってみましょう!やってみないうちから「できない」と決めつけるのは大きな機会を損失することになるので、まずは挑戦のマインドでやってみるのがおすすめです。

ー様々な夢の見つけ方があっていいですね!すごく参考になります。また、ちょっと角度は変わりますが「将来の夢はありますが不登校になってしまって将来の夢が叶えられないのでは、という不安があります」という質問も来ています。こちらはどうでしょう?

山崎:僕は、学校に行かないと叶えられない夢はないと思っています。学校に行かない分、家にいる時間を最大限夢を叶えるために注ぐことができると思うからです。確かに、これから夢が変わるかもしれない、様々な場面に対応できるように勉強は必要だけれど、学校に行けないから夢が叶わないということはないと思います。叶えられるかどうかは、自分次第だと思いますよ!

渡辺:何かできるようになるには、何かできるようにならないことだと私は思うんです。例えば、「料理極めるぞ!」ってなった時、おそらくそこに時間を費やした分、スポーツだったりお裁縫をする時間は無くなりますよね。それと同じで、学校に行かない分、自分の好きなことに使える時間が増えているんです。時間の優先度が変わってるだけなので、学校に行けないから夢が叶わない、ということは私もないと思いますよ。

ー最後の質問は、全国の不登校で同じ悩みを抱える子供たち、そして親御さんへのエールにもつながるメッセージだと思いました。本日は、夢を描く子供たちにたくさんヒントとなるお話を聞けたのではないかと思います。本当にありがとうございました!

イベントモデレーター:西村創一朗(Twitter
執筆・編集:後藤田眞季
デザイン:藤井 蓮(Twitter