自分の人生を生きる人を増やす。女性経営者・金井芽衣が描くキャリアカウンセリングの可能性

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第240回目となる今回は、ポジウィル株式会社・代表取締役の金井芽衣さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

「POSIWILL CAREER(ポジウィルキャリア)」でキャリアのパーソナルトレーニングという新しい概念を作り上げた金井さん。なぜ、ここまで真摯に人のキャリアに向き合うのでしょうか。金井さんの幼少期の原体験から、ポジウィルキャリアの着想までを語っていただきます。

キャリアカウンセリングに見出した、虐待解決の糸口

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

ポジウィル株式会社で代表取締役をしている金井と申します。現在は「ポジウィルキャリア(旧:ゲキサポ!)」という、キャリアのパーソナル・トレーニングサービスを運営しています。端的に言うと「キャリア版ライザップ」のようなサービスですね。

ー金井さんの子供時代について教えてください。

昔から人とあまり群れず、虫や雨の水滴を眺めているような子供でした。人に流されたりせず、自分の世界に閉じこもってずっと考えているような子供で(笑)

ー学生時代はどんな勉強をされていましたか?

一度保育系の短大に入学し、2年通ってから4年制の大学に編入しています。編入先の大学では主にキャリアデザインについて学びました。

私自身が子供時代に両親の離婚で辛い思いをしてきたので、自分の子供にはそんな思いをさせたくないと思い、初めは保育について学ぼうと思っていました。当時は短大の授業と実習、さらに編入試験の勉強をしていたので正直とても大変で。1年間くらいは睡眠時間2時間くらいでした。

辛すぎて保育の免許は諦めようとも思っていたのですが、母に「自分で決めたことなのにやりきれないの?」と厳しい意見をもらって……。「そこまで言うならやってやる!」と母の言葉をバネに保育士免許を取得し切りました。

ーすごくハードな学生生活だったのですね……!短大から4年制大学に編入したのはなぜでしょうか?

保育園や養護施設での実習で、日本には虐待を受けていたりご飯さえ食べられなかったりする子供がいることを知って。私も辛い経験をした子供だと思っていたのですが、両親には大事にされていたし、恵まれていたんだと衝撃を受けました。

しかし、虐待は100%親が悪いわけではなく、虐待せざるをえないストレスや環境に問題があると思ったんです。だからこそ、ストレスや環境に問題がある社会構造を変えられる仕組みを作りたいと思うようになりました。

そこで初めて「キャリアカウンセリング」の存在を知りました。人生の大半を占める仕事での悩みが減れば、虐待に繋がるようなストレスが減るんじゃないかと。もっとキャリアを深く学びたいと思い、キャリアカウンセリングの日本の第一人者である宮城まり子先生先生がいる、法政大学のキャリアデザイン学部に編入を決めました。

「金井はリクルートに受からない」と言われ、無我夢中でしたOB訪問

ーそれで就職もキャリア関係の会社に進んだのですね。

はい。新卒では人材紹介事業を行う、リクルートエージェント(現:リクルートキャリア)に就職しました。キャリアに関わることがしたいと思いが強く、人の人生の分岐点に関われる人材系の会社だけを6社受けました。

周囲の方からは「金井は受からない」と思われていたんですよね。そこで元リクルート社員が経営しているバーで「お金はいらないので働かせてください!」と頼みました。バーにはリクルートの社員さんが多くいらっしゃったので、さまざまな方にOB訪問をしていました。

OBの方にも「金井さんじゃ受からないよ」など、厳しい言葉もいただいていました。本当に悔しくて。そんな悔しさをバネにして、リクルートに内定をもらいましたね!

ー金井さんは人生で多くの厳しい言葉や批判を受けている印象を受けるのですが、どうやってやる気に変えているのでしょうか?

「信念を持つこと」が重要だと思います。

就活や起業の時にも「お前なんかにできるわけない」と厳しいお言葉をいただいてきました。でも結局、否定をしてくる人はその人の感情を満たしたいだけで、相手にうまくいってほしくないだけの人は多いです。私を応援してくれない人のために、脳の容量を使うこと自体がもったいないなって。

もちろん、真っ当な意見をくださる方は大切にしたほうがいいです。でも「応援してくれない人の言葉は自分の人生には必要ない」と割り切って、聞き流すことをおすすめします。

ーリクルート時代はどんな社会人でしたか?

最初の1年半くらいは売れたり売れなかったりを繰り返していて、正直、中途半端な社員でした。私自身もいままで自分でやり切ってきた自負があったので、今思えばとても生意気な、扱いにくい新人だったと思います(笑)

契約社員さんよりも売り上げていないのに給料が高く、「金井さんは全然仕事ができていない」なんて厳しい言葉もいただきました。今まで比較された経験が少なかったので、当時は非常に傷ついていましたね。

ーどんなきっかけで成績が上がったのでしょうか?

2年目で本気で私に向き合ってくれる上司との出会いです。上司に言われた「お客さんは営業を選べない」「中途半端な仕事しかしない金井さんが担当になったお客さんが可哀想」という言葉がきっかけで、「私はいままでお客さんや会社など他責にしていた」と気づいて。そこからもっと本気で仕事に向き合おうと思ったんです。

その後、また上司が変わったのですが、この方もまた私に本気で向き合ってくれて。「これだけやってもらっているのに成果出なかったら申し訳ない。3ヵ月で成果がでなかったら辞めよう」と腹を括りました。

その2つの出会いがきっかけで、周りの目を気にしない、他人と比較をしないようにしたら無双状態になってましたね。

ー当時、成果が出なかった理由は何だったのでしょうか?

「このまま頑張ってれば、いつかは勝手に報われるだろう」と思っていたことですね。でも、努力は自分で報いに行かないと報われませんから。

また、人の目を気にしていたことも要因でしょうか。今思うと「人の目を気にするくらいなら、自分のことを気にしたほうがいいよ!」とは思います(笑)当時はそのくらい余裕がなかったのかなと。

サービス成功のポイントは「誰へ何をするか」をわかりやすく伝えること

ーどんな経緯で独立・起業をされたのでしょうか?

はじめは「頑張りたくなかった」から独立しました。

もともと会社に長くいるつもりはなく、いつかキャリア関係での独立は考えていたんです。実際に26歳で独立を決めて、27歳で独立したのですが、当時は会社員を辞めた方が楽そうに見えたとか、人材紹介や研修でお金を稼げるアテがあったなど、甘い考えで独立を決めましたね。

独立したては、人材紹介や研修講師と、組織コンサル、単発のキャリアカウンセリングなどの仕事をしていました。でも、時間に余裕のある生活は私に合わなくて。頑張りたくないから独立したのに、頑張っていない自分が辛かったんです(笑)

そんな時、少しずつスタートアップ業界の方とお会いしたり、Twitter経由で投資家の方からお声がけをいただける機会が増えました。

初めて投資をしていただいた投資家の方に「このままだと、適当に会社作って偉そうにしている人になるよ」と言われまして。悔しかったけど、その通りだと思ったんです。

ーそこからそうだんドットミーを作ったのですか?

いいえ。そうだんドットミーの前身として30分500円でキャリア相談ができる「ミレニティ」というサービスを作ったのですが、課金ユーザーが1人しかいなくて。投資を受けてから本格的にそうだんドットミーを作りました。

ーミレニティとそうだんドットミーの違いはどんなところに?

正直に言って、ミレニティとそうだんドットミーのサービスの中身はほとんど同じなんです。同じことをしても見せ方次第で結果が変わるんですよね。

ミレニティのときは誰向けのどのようなサービスかがわからなかったので、そうだんドットミーではターゲットを明確にして、わかりやすくしただけなんです。例えば、「カウンセリング」や「コンサルティング」という言葉は敷居が高いので、日本でも浸透している「相談」という言葉を使いました。

サービスが多くの人に愛されるかどうかは、伝え方がとても大事だと実感しましたね。

「相談だけでは人生は変えられない」点を線へと変化させた『ポジウィルキャリア』

ーそうだんドットミーからポジウィルキャリア(旧:ゲキサポ!)に事業を転換した理由を教えてください。

単発のキャリアカウンセリングであるそうだんドットミーだと、ユーザーへ十分な価値提供ができないと思ったからです。

ある時そうだんドットミーのイベントで、サービスを5回も利用しているのに軸が決まらず、転職もうまくいかないユーザーさんに出会いました。どれだけキャリア相談しても「点ばかりで線になっていない」、今のサービスはまったくユーザーの価値に繋がっていないと痛感したんです。

そこで「5万円で、私がマンツーマンでキャリアのサポートします」と提案したんです。結局そのユーザーさんは希望の会社に転職することができて、変化するまで伴走するこの事業のほうが意味がある事業だと気が付きました。

キャリア相談にももちろん意味はあります。しかし、単発の相談だけでは人生が変わるところまでアプローチするのは難しいと気づいたことが転機でしたね。

ーその後、ポジウィルキャリアはいかがですか?

ポジウィルキャリアのユーザーさんは「人間が変わる」と確信しています。

ポジウィルキャリアでは、今までの人生をすべて振り返る機会があります。怒りや恐怖、男性不信……そんな悩みの根本には両親や友達との関係があることがほとんどなんです。サービスの入り口はキャリアですが、カウンセリングを受ける中で自分の価値を認識でき、人生の意味を見出すことができるのがポジウィルキャリアです。

また、キャリアの悩みはもちろんですが、使ってくれたユーザーさんからはそれ以上に「自分を肯定できた」との声をいただいています。これまでの環境や経験で認知が歪むことで、自己肯定感が低くなってしまっている方もおられます。難しい問題ですが、結局はどう捉えるかが大事です。

今までの経験は変えることはできませんが、だからこそ捉え方を変えて人生の糧にすることが大切だと思います。

自分の人生を生きる人を増やす。ポジウィル代表・金井芽衣が描く

ー金井さんが実現したいのはどんな世界でしょうか?

会社のミッションである「あるべき、こわそう。」の通り、固定観念を壊したいと思っています。

生きていると「いい会社に入らなきゃ」「いいお母さんでいなきゃ」など、縛られてるものが大きいんですよね。でも、自分が本当にいいと思って選んだらそれでいいと思うんです。自分の人生には誰も責任とってくれませんから。

自分の考えで自分の人生を生きる人を増やしたいと思っています。

ー金井さん自身のビジョンはありますか?

「家庭が幸せであるか」はとても大切だと思っています。

ただ、私自身人生をかけて叶えたいミッションもありますし、会社のメンバーやユーザーさんが大好きなので今はそこに集中して頑張りたいです。

仕事は極論「大事な人たちの役に立ちたい」という考えの延長線上にあると思っていて。また、その総量を増やし、少しでも誰かの人生にとっての意味のある存在になれたらいいなと。

公私共に後悔しない人生を送るべく、今やるべきことにコミットして成果を出していきたいです。

ー最後に、U-29世代へメッセージをお願いします!

私は20代で頑張ったことが人生の武器になるなと思っていて。20代の期間で自分の価値をどれだけ高められるかが30代、40代に影響します。

その期間をいかに悔いなく生きられるか。私も失敗はたくさんしましたが、すべてが今の私の糧になっていると思います。ぜひ皆さんにも20代を楽しんで、やりきって欲しいです!

ーありがとうございました!金井さんの今後の活動を楽しみにしています!

金井さんが代表を務めるポジウィル株式会社が運営する、キャリアのパーソナルトレーニングサービス「POSIWILL CAREER」の詳細はこちら

執筆・インタビュー:えるも(Twitter/ブログ
デザイン:五十嵐有沙(Twitter