ONE JAPAN✕U-29コラボイベント~組織で働きながら自分自身をTransformする方法~

ユニークな価値観を持つ29歳以下の世代のためのコミュニティ型メディア「U-29.com」と、大企業の若手・中堅社員を中心とした約50の企業内有志団体が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」のコラボレーションイベントを先日オンラインで開催しました。

辞めるか、染まるか、変えるか。

大きな組織に所属しながら、自分自身の「ユニークネス」を大切にして、自分をTransform(変革)させ続けることは、多くの場合困難を伴います。

そんな中、ONE JAPANで活躍している大企業の若手社員はいかに染まらず、自分自身を、そして会社・社会をTransformさせ続けているのかについて迫っていきます。

■ゲストプロフィール

内山敦史
1995年三重県生まれ。2020年野村総合研究所に入社。新卒1年目。大学4年まで約15年間野球に打ち込み、そこで多くの価値観を形成。モットーは「何事にも全力投球」。大学院時代は研究に勤しむ傍ら、AIスタートアップや人材系ベンチャーで長期インターンするなど、精力的に活動。これらの経験や文理融合の情報系学部に所属していた背景から「ビジネスとテクノロジーの架け橋となる人材になりたい」との思いを抱き、野村総合研究所に入社。日本のDXを推進すべく、アプリケーションエンジニアの卵として現在絶賛修行中。

濱松 誠
1982年京都府生まれ。2006年パナソニックに入社。マーケティング、人事、ベンチャー出向などを経て、2018年12月にパナソニックを退職。本業の傍ら、2012年に組織活性化とオープンイノベーションをねらいとした有志の会「One Panasonic」を立ち上げる。2016年、NTTグループやトヨタなど、大企業の同世代で同じ課題意識を持つ者たちを集め「ONE JAPAN」を設立、代表に就任。現時点で約50社・2000名の有志が参画。企業間の共創や社内起業家育成、働き方意識調査など、挑戦の文化をつくる活動をしている。日経ビジネス「2017年 次代を創る100人」に選出。ONE JAPANとして「仕事はもっと楽しくできる 大企業若手50社1200人 会社変革ドキュメンタリー」を上梓。内閣府主催「第1回日本オープンイノベーション大賞」、日本の人事部「HRアワード 特別賞」等を受賞。2019年6月から夫婦で約1年間世界一周。5大陸52ヵ国116都市をまわり、現在は大企業やベンチャーのコミュニティ支援をしている。

組織と自分をTransformするには「使命感」「行動」「仲間の存在」が大切

本日はよろしくお願いします! まずは「マックさん」こと濱松誠さんから自己紹介や現在の取り組みなどについて教えてください。

濱松誠(以下、濱松):こんにちは、ONE JAPANで共同代表を務めている濱松誠です。僕は京都で生まれ育って、大阪の大学を卒業し、その後パナソニックに入社をして、主に海外営業と人事を経験してきました。また、Cancer Xという「がんと言われても動揺しない社会へ」をコンセプトにしたプロジェクトで妻や仲間たちと一緒に活動をしているほか、SUNDREDというベンチャーで共創のコミュニティ運営にも携わっています。

ここからは、実際に私が20代後半から30代前半にかけて行なったパナソニックでの社内活動について話したいと思います。

大企業でも公務員などの自治体でも、組織のサイロ化や「どうせ言っても無駄だよな…」という風潮など、多くの問題がありますよね。そんな中、2006年の新入社員のときから、飲み会・勉強会・懇親会などを積極的に開催してきました。とにかく継続をすることが大切だと信じて、6年ほど続けたら仲間が400人にも増えたんです。

また、ちょうど当時はパナソニック電工と三洋電気という会社との合併などもあったので「一緒になるなら、がんばろうぜ」という思いから、若手社員を中心に、社長やミドル層なども交えて500人ほどのイベントを開催しました。これが、One Panasonicのスタートになります。

活動内容としては主に「縦と横と斜めをつなぐ」もので、社内外問わず、人と人を繋げることを主な活動としています。アルムナイ(卒業生)ネットワークも作り「大企業を辞めたら裏切り者」という風潮をなくして、卒業生同士、卒業生と経営幹部や現役社員の繋がりをつくるイベントなども開催しました。

こうした活動を続けていたところ、2017年には日本マイクロソフト会長だった樋口泰行さんが経営幹部としてパナソニックに復帰するという当時国内では異例の出戻りとなったり、パナソニック全体としても出戻り社員を歓迎することを公式に発表したりなど、会社が大きく変わっていくことになりました。

有志の活動でも継続をすれば少しずつ個人や会社は変わっていきます。そしてその後に会社のレバレッジをかけて大きく変えていくことが大切だと感じました。

現在活動しているONE JAPANでは、世の中に「挑戦する文化をつくる」ことをミッションとして掲げていて「価値づくり」「人・土壌づくり」「空気づくり」など、さまざまな活動を行なっています。

例えば、先月リリースされた孫と祖父母をつなげる新しいコミュニケーションサービス「マゴ写レター」は、ONE JAPAN加盟企業の日本郵便とマッキャンエリクソンがコラボしてできたものです。

また、世の中を変革する挑戦者を育成・支援する「CHANGE」というプログラムには100チーム以上の応募があり、決勝ピッチには5人選抜されましたが、どれもすごく良い内容です。

その他にも、新型コロナウイルスの感染拡大による働き方の意識変化を調査したり、孤食をなくすために部署や会社を超えてランチをする「バーチャル食堂」や、日本全国の新入社員を集めてオンラインで交流する「オンライン新入社員交流会」などを開催しました。

「ソーシャルディスタンスは離れていてもエモーショナルディスタンスは近づける」という考えを意識して、活動をしています。

コロナ渦でも、新入社員として多くの活動に取り組む

ーそれでは続いて「ウッチー」こと内山敦史さん。自己紹介をお願いします。

内山敦史(以下、内山):今年の4月に野村総合研究所に入社した社会人1年目の内山です。システムエンジニアとして研修を受けており、現在はグループ会社のNRIデジタルに出向しています。企業のDX推進の仕事をするため、今後は日本全体の生産性を高められるような仕事をしたいと考えています。

ONE JAPANと出会ったのは、先ほどマックさんから説明があったように「つながれ!コロナ時代の新入社員〜今こそ一歩踏み出そう〜」というオンライン新入社員交流会がきっかけです。

今年の5月に開催をして、約80社から200名ほどが集まりました。コロナウイルスの影響を受け、新入社員は4月の間リモートで過ごしていたため、そのなかで生じたモヤモヤとした熱量が溢れ出したようなイベントでした。

じつは、このイベントがきっかけで色々な活動を始めることになりました。例えば、新入社員による新入社員のための学び場コミュニティ「ONE SCHOOL」を立ち上げて、隔週でONE JAPANの先輩社員を呼んで勉強会を開催しています。

また、新入社員と先輩社員で理想の働き方を考える「HELLO,NEW WORLD」も開催しました。あとは、IT界隈を盛り上げたい思いから「新入社員ハッカソン」を企画するなど、さまざまなことに挑戦していて、今できることを必死にがんばっています。

ー自己紹介ありがとうございます!

それぞれが、ファーストキャリアで大手企業に入社した理由

ーウッチーさんはなぜ新卒で大手企業に入社したのですか?

内山さん:学生時代に、友人が起業した人工知能に関するスタートアップを手伝ったことがきっかけです。その経験から「最近ではテック系のスタートアップが数多くある一方で、それが本当に世の中に広まっているのか?」という課題意識を持つようになりました。

なんとかその課題を解決することはできないかと考えた結果、影響力を持つ大きな会社にシステムを納入している会社であれば、よりスピード感を持って新しい技術を広めて、テクノロジーで世の中を豊かにできるのではないかと感じたんです。

ースタートアップと大手企業だと働き方に違いがあると思うのですが、その点でギャップは感じませんでしたか?

内山:大手企業に入るということは、研修という大きな投資を受けて、力を蓄えてから現場に出るものだと認識しています。なので、大きなギャップは感じませんでした。また、就活時にインターンシップに参加していたので、社員と話す機会も多く、実態を把握してから入社することができたのもギャップを感じない理由の1つです。

ーなるほど、そうだったんですね。マックさんは、どのような経緯でパナソニックに入社を決めたのですか?

濱松:パナソニックの「人々の社会をより良くする」という考えに共感したからです。留学で海外に行って「家電って、身近に感じられて、多くの人を幸せにできるな」「日本を代表するメーカーだな」と感じたことがきっかけです。また、選考中に出会った社員も良い人が多く、もっとも行きたい企業の1つだったので、入社を決めました。

全力で活動をしていれば、後に人生の転機となる

ー今回、視聴者から「もっとも聞きたい」という意見が多かった人生最大の転機について教えてください。

濱松:いくつかありますけど、夫婦で52カ国116都市を回る世界一周の旅に出たことですね。「大切な人と、後悔のない人生を歩む」ことをテーマに生きているので、本当に行って良かったなと思います。

ー素敵な人生のテーマですね!ちなみに奥様とはどこで出会ったのですか?

濱松:2016年にパナソニックで初めてベンチャー出向となって、それまでは大阪の本社で働いていたのですが、東京に転勤になったんです。ちょうどその時に、野村不動産の刈内さんという方が開催している「イノゆる会」というイントレプレナーが集まる勉強会でたまたま出会ったことがきっかけです。

ーそうだったんですね。さまざまな活動を積極的にしていたからこそ、奥様と出会えたのかもしれないですね。

濱松:本当にその通りです。積極的に活動をしていれば天から蜘蛛の糸が垂れてくるので、そのチャンスをいかに掴めるかが大切だと思います。人生の転機は、ONE JAPANの立ち上げとか、ベンチャー出向とか色々あるんですけど、実際すべてが繋がっているんですよね。

ー最愛のパートナーと出会うために意図してONE JAPANを立ち上げたわけではないけれど、実際に立ち上げて、さまざまな活動をしていたからこそ出会えたというわけですよね。そう考えると、自分の人生を変えるような出来事は偶発的に訪れるのではなく、積極的に行動を続けるなかでこそ出会えるものだなと、お話を聞いていて感じました。

濱松:まさにその通りです。僕は、頑張っている人にはきっと良いことがあると思っているので、頑張りましょうと常々言っています。

ーとてもいい考えですね!人生は行動した分だけ転機が訪れるということですよね。ウッチーさんも人生の転機を教えてください。

内山:高校野球で甲子園を目指して頑張っていたなかで、初戦で負けて引退になったことです。当時キャプテンを務めていたのですが、キャプテンとして真っ当なことを言い続ければ良いという思考だったので、周りが見えない状況に陥っていたんです。

結果的に、上手くチームが噛み合わないまま、一回戦敗退となってしまいました。後で振り返ると「個の力ではどうにもならない」という教訓を、そこで得ることができたと考えています。

本当は高校で野球を辞めようと思っていたのですが、モヤモヤとした思いがあったので大学でも続けることを決意しました。大学では更に多くの学びを得ることができて、仲間にも恵まれ、みんなで良いチームをつくることができました。

ー初戦敗退は、なかなか悔しいですよね…。

内山:そうですね。ただ、もし勝ち進んでいたら自分の行いを振り返ることはなかったと思います。初戦で負けたからこそ、大きな学びを得られました。

ー中途半端に取り組んで後悔するよりも、ウッチーさんみたいに全力を尽くして後悔したほうが後々バネになりますよね。

悩んだり、失敗したりすることは挑戦の証

ーここからは、せっかくなのでお互いに気になることを質問するクロストーク形式にしたいと思います。まずは、ウッチーさんからマックさんに質問をお願いします。

内山:さまざまな活動をしているからこそ、苦しく感じる場面も多いと思います。そんな時は、どのようにして乗り越えているのかをお聞きしたいです。

濱松:悩んだり、失敗したりすることは「挑戦の証」だと思っています。例えば、コミュニティやイベントで参加者が思ったより集まらないことも、すべては試行錯誤の挑戦の結果です。

「あいつまた失敗したな」「いつか失敗すると思ってたわ」と言ってくる人もいますけど、僕はそういった人が好きではありません。批判をするのは簡単だから。ただ、挑戦をするには1人ではできないので、色んな人が一緒に頑張ってくれるように、できるだけ人間力を高めたいと考えています。

とくに悩んだことがあれば、社内外問わず、相談をするようにしています。ちょうどこの前も、同い年のNPO法人クロスフィールズの小沼大地さんと、全国の公務員コミュニティ「よんなな会」の脇雅昭さんと会って、お互いに意見交換をしました。挑戦している者同士だからこそ、言い合えることを話したりしています。

内山:同じようにトップを走っている人だからこそ、話せることもあるんですよね。僕もマックさんのように走り続けていきたいと思います!

濱松:ウッチーなら絶対にできると思いますよ。経験とかお金は僕たちミドル世代が持っているので、今後はウッチーのような若い世代に投資をするという循環を世の中に生んでいきたいなと考えています。逆に質問で、今後どうなりたいとか考えていますか?

内山:技術に関してのノウハウは蓄えたうえで、お客さんの潜在的なニーズを汲み取って形にすることをやりたいです。そのために、まずはDXに関連したITスキルを身につけることが直近の目標です。

濱松:将来は手段として起業をするとか、ベンチャーに転職をするとかは考えていますか?

内山:あまり長期的なプランを考えるタイプではないので、具体的なことは考えていないです。今は残りの20代の期間をどのように過ごすかだけを考えています。マックさんは長期的に将来を考えるタイプですか?

濱松:僕は往復して考えるタイプですね。先のことまで考えようとするけれど「その通りに行かないしな…」と思って、結局目の前のことを頑張っています。

勉強会とかに参加すると、すごい人がたくさんいて良い刺激を受けるのですが、結局やることって自分のできることなので、長期的なことよりも目の前のことが大切なんですよね。いつ死ぬかわからないので、自分のやりたいことをしながら、できることを頑張るしかないと思っています。

社内外問わず、仲間をつくることが大切

ー入社直後は大志を抱いていた人でも、組織の中にいると出世を考えて会社に染まってしまう場合も多いですよね。マックさんは組織の中で、どのように「染まらない」「嫌われない」地位を築いたのですか?

濱松:組織の縁を歩くこと、組織の中と外の往復活動をすることを意識していました。中と外のハブになるイメージですね。そして、1人ではなく仲間と共に行動することで、出る杭にならずに済んだんです。

最初の方は本能的にやっていたのですが、ビジネス本などで「1人だと変人だが、5人だと変革の志士になる」という言葉を知り、自分のやっていることは正しかったと感じました。孤独と諦めが一番怖い、というか、多くの人の思考や行動を止めてしまうものだと思うので、仲間やコミュニティの存在を常に持つようにしています。

ーどうしても閉鎖的な世界にいると染まりやすくなるので、社内外問わず、しっかりと繋がりを持つことが大切ですよね。

濱松:そうですね。ただ、基本的には多くの時間を社内で過ごすことになるので、社内の繋がりも非常に大切です。社内に仲間がいないから、みんな夢を諦めてしまうのかなと思います。

ー社内で仲間をつくるために意識していることはありますか?

内山:適度にゆるさを持つことですかね。何か活動をすると「意識高い系」というイメージを持たれて一歩引かれてしまうこともあるので、上手くジャブを打ちつつ、少しずつ一緒にやっていくことを意識しています。

ーなるほど、事業作りに似ていますね。まずは、小さなことから始めるのが大切ということですよね。マックさんはどうですか?

濱松:相手から「ためになる」「面白い」「応援したくなる」と思われることが大切だと思います。例えばイベントの場合、どうしたらみんなが来たくなるかを考え込むことが大切です。あとは、チャーミングさが必要だと思うので、人の懐に飛び込むキャラクターでいようと意識しています。

また、僕の場合は20代・30代で仲間を作ってから、その上を巻き込むようにしていました。「みんながこういう思いを持っています」と伝えて、社長を呼んで、社長が来るならということで人が集まる。そういった設計作りをしていましたね。

ーなるほど、徐々に影響力を広げていくということですね。最後に、U-29世代に向けて何か一言メッセージをください!

内山:まずは行動してみることが大切です。思い切った行動ができれば、1つステージが上がって、また次にやりたいことが見えてきて……と、どんどんステップを上げることができます。これから自分も頑張るので、みなさんも一緒に頑張っていきましょう。

濱松:常に動き続けることが大切です。人はいつ死ぬかわからないので、後悔のない人生を生きてほしいと思います。

ー本日はありがとうございました!

取材者:西村創一朗(Twitter
執筆・編集者:下出翔太