様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第186回のゲストは、体験型リゾート施設「BUB RESORT」を運営する株式会社BUB代表の一戸 悠人(27)さんです。
一戸さんは、青山学院大学を卒業後、リクルートに入社しました。
2018年10月、26才の若さで株式会社BUBを創業。
「手軽に非日常の体験ができる」をコンセプトに、アウトドアや自然文化体験など様々な仕掛けを用意する宿泊所は、家族連れに人気です。
彼がなぜ、珍しい体験ができる宿泊所を建てたのか。
生き方や人生観を伺いました。
人生が豊かになるきっかけを提供したい
ーまずは、簡単に自己紹介からお願いします。
株式会社BUBの代表取締役で、千葉県の九十九里でグランピング施設(豪華なキャンプ場)を運営しています。「きっかけが未来をつくる」をビジョンに、グローバル展開を目標に取り組んでいます。
ー「きっかけが未来をつくる」がとても素敵です。コンセプトは何でしょう?
自然とか文化の体験をベースに、目の前の関わる人に人生が豊かになるきっかけを提供したいと思っています。
一回の宿泊で、どれだけ多くの気づきやきっかけを与えられるかを重要視しています。例えば、普通に生きているとやらないであろう蟹漁や火起こし体験、地元のそば打ち体験などです。
ーアクティビティーが沢山あるんですね。ゲストとスタッフの交流も多いんですか?
もちろん、人との繋がりを大事にしています。
よく社内でも「人で人を変えていくんだ」と話していて、アクティビティーをベースにスタッフが一人一人、どんな形で提供するか意識しています。
お客さんとの交流の中で「自分だったらどういうきっかけが与えられるのかな?」と積極的に関わり、接していこうと心がけています。
そして、お客さんとスタッフだけでなく、お客さん同士での交流もできるよう、声を掛け、輪を広げているんです。人との交流の中でもきっかけが生まれると思い、大切にしています。
北海道から上京。ルフィーみたいな気持ちで世界へ
ーどんな人生を歩み、なぜきっかけを大切にしようと思ったのかが気になります。
幼少期はどんな子でした?
スポーツが好きでした。バスケ、サッカー、ハンド、少林寺拳法など色んな事に興味を持ちやっていましたね。
気になることがあったらすぐやってみる性格でした。器用ではあったので、学校でもそれなりの成績を収めていたと思います。
ーそこから中学、高校進学と…。大学の軸はなんだったんですか?
高校から大学に行くタイミングで結構悩みましたね。
ルフィーみたいな気持ちで「北海道から、俺は世界に行くんだ!」と考えていました。
卒業したら海外に行きたいと漠然と思っていたのですが、最終的には、なんとなく大学に行った方が良さそうだということで進学を決意しました。大学ライフが楽しめそうな青山学院を選択し、上京をしました。
ー大学生活はどうでした?
最初の方は居酒屋でアルバイトをしつつボクシング部に入り、忙しい生活をしていました。
ですが、一年の終わりに交通事故に遭ったのを機に部活を辞めたんです。
それからは、飲んでバイトして、無駄な時間を過ごしていたんじゃないかなと思います(笑)
大学の三年生でフィリピンでボランティアへ。豊かな人生とは
ーそうだったんですね。大学三年生でのボランティア経験が自分の転換点だったと伺ったのですが、訪れたきっかけは何だったんですか?
SNSから、お得に旅行に行ける情報を知ったからです。
よく見たら旅行ではなくボランティアだったんですけど、海外に行きたいとも思っていたので、すぐに興味を持ちました。
行き先は、フィリピンのクリオン島でした。
当時、台風の影響で屋奥が倒壊していたので、修繕のお手伝いを必要としてたんです。
クリオン島は元々は、ハンセン病の回復者の人たちが隔離されていた小さな島なんです。
ハンセン病の影響があって普通に働くことができない人も多く貧困地域でした。
手足不自由で自分自身で家屋修繕とか困難な人が多かったんです。
ー行ってみてどうでしたか?
一つ目に、島の状況と人々の雰囲気が真逆すぎて驚きました。
貧しく、家は倒壊し悲惨なのにめちゃくちゃ明るい人たちが多かったんです。
すごい笑って楽しそうに生活しているので「豊かな人生ってなんだろう?」と考えさせられました。
裕福な人が幸せだと思っていたので、大きな気づきでしたね。
もう一つは、ボランティア仲間の1人の友人が、ハンセン病の回復者から自身の価値や生きる意味を見出し、号泣したことです。
彼は「昔アトピーがあって虐められていたけど、その経験が今に生きている」と泣きながら語ってくれたことがあったんです。
彼自身が当時、アトピーを他人に見られないように悩んで、真夏で長袖長ズボンとか着ていたんですね。今回ハンセン病の回復者の方も身体的に特徴が出ている人もいて、差別的なこと言われることもあったようなんです。
彼は、それを聞き「自分がいじめられたりアトピーで身体を隠した辛い経験があったからこそ、ハンセン病の人達に寄り添えるし、共感できるんだ。」と話してくれました。
それを聞いた時、私の心は大きく動かされました。
彼は、ネガティブな思い出であったアトピーやいじめの経験がクレヨン島がきっかけで自分の特徴として受け入れられたんですよね。
数日間の体験でも人の考え方を変えられた出来事は、とてもいいなと思い心に残りました。
ー価値観がガラッと変わったんですね。そこから海外を回ろうと思ったんですか?
高校生で抱いた世界に行きたい気持ちも取り戻し、他の国も見たくなりました。
でも、そう思った当時は大学三年生で、就職活動の直前だったんです。
日本に戻り、就職活動を始めたのですが、二社ぐらい受けたタイミングで休学を決意しました。とにかく外の世界をもっと見たかったんですね。
それから日本を旅立ち、約1年半でバックパッカーとして、25ヶ国を巡りました。
ー1年半もなんですね!中でも印象的なのはどこですか?
すぐに思い出すのは、アフリカです。
マライアにかかり死にかけたんですよ。
実際、自分がかかって40度ぐらいの熱を出し、結構簡単に人は死ぬんだと思いましたね(笑)。
他にもタンザニアでバスに乗車したとき、マサイ族が普通に隣に座ってきたりもしました。テレビで見ていた民族が隣にいることに驚きましたね。
思わず「ジャンプ力いいんですか?」「視力いいんですか?」とか話しかけてしまいました(笑)。
その土地の常識的なことや体験は、他人の人生にとっては、大きな価値になります。
海外は、普段の生活が自分の中では、ビックイベントになるのがすごい楽しかったですね。
土地の体験を届け、それにより人生が好転するきっかけを多くの人に与えたいと思うようになりました。
海外で経験した刺激のハイライトを届けたい
ー帰国されて、就活しリクルートに入社したんですね。
なぜリクルートを選んだのですか?
海外に行っているとき、色んなところに泊まったので、宿泊業に興味がありました。
また、ちょうど僕にとっては、一つ一つの体験が非常に影響を受けるタイミングでした。
それが、日常、人や土地にとっては普通なことでも影響を与えてくれたんです。ジェットコースターやスキーなど、非日常的ですごいことをしなくても、日常から刺激を受けられます。
逆にいうと、海外の人が日本に来たときも刺激を受けられます。この感覚を、グローバル規模でやりたかったんです。
そのためには、チームでやって行かないと大きな規模に成長するには難しいと考え、勉強のためリクルートに入社しました。
組織の動かし方、人事制度だけでなく、リクルートキャリアで様々な企業組織に触れられると思いました。
ー当時から起業は視野に入れた上での軸だったんですね!
2年で起業しようと思ったきっかけは何だったんですか?
2年でも営業と企画の全体を触れられたので、自分の中で勝手に学びがあったと思っています。
働いている中で、学生時代みたいに海外に行き、刺激を得たいと思ってもあと何回あるかないかの現実に虚しさを覚えました。
就職しても刺激を受け続けていきたかったんです。
もし、土日の二日間で、自分の約2年間の海外旅行で貰った刺激のハイライトだけを集まれば、人生を変える体験だけでも数日でもできるんじゃないかと思い立ちました。
調べてみると他にないことが分かり、だったら自分が挑戦してみようと決意しました。
ーなるほど。その後「BUB CAMP GROUND」はオープンして2ヶ月で黒字化するなど成功を納めていましたね。この要因は何だったんですか?
ビジネスモデル的にコストが抑えられたのと少ないメンバーで気持ちだけでやっていたので、人件費が少ない状況でやっていたことです。
普通の宿泊施設の単価は、日本だと一部屋あたりの平均2万7千円とかでうちの客室単価10万円ぐらい。客単価が高いので、人件費を少なく抑えて、始められたんです。
ー施設は、コロナ禍でも楽天トラベルで総合一位を獲得されましたね。
これもすごい業績です。どんなことを意識されてましたか?
楽天トラベルで選んで頂いたのは、コロナ禍の前からのお客さんの口コミが非常に高かったので、それの蓄積がありますね。
満足度が高いのは、お客さんの人数を増やすよりもリピートを目指しているので関係が良いからですね。
来てもらった時、本当に楽しんでもらえるかを念頭に置いているので、口コミも友達のお店に投稿する気持ちみたいなもので、すごく素敵な気持ちになります。
ー施設のファンが沢山いらっしゃるんですね!
最後に、これからの展望について教えて下さい。
グローバルでアクセスしやすい所に拠点を増やすことを目指しています。
また、広げるだけでなく、何度でも来れるよう沢山の刺激を変化し続けて提供していきたいです。
あとは、社員一人一人のメンバーがBUBをきっかけに、自分が本質的に豊かな人生を歩んで行ったりとか、自分らしく働けることを最も大事に思っています。
これからもグローバルで挑戦できる環境や様々な働き方を実現していきたいです!
取材者:中原瑞彩
執筆者:三田理紗子
デザイナー:五十嵐有沙(Twitter)