アナログとデジタル、大企業とスタートアップー”真逆”を経験した國井大地ならではの事業とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。今回は株式会社リデルタで代表取締役を務めている國井大地さんにお話をお伺いしました。

2019年10月に起業し、フランチャイズ化とIT効率化によって会計事務所のポテンシャルを解放する事業を展開している國井さん。

起業する前は、会計士試験への挑戦や、監査法人での勤務経験、不動産テックのスタートアップでCFOを務めるなど、数多くの経験をされてきました。

公認会計士を目指したキッカケ、そしてどうして株式会社リデルタを創業したのか。國井さんのユニークなキャリアに迫ります。

部活への熱量を勉強にシフト。何かに打ち込みたくて公認会計士へ。

本日はよろしくお願いします。まずは國井さんの現在のお仕事についてお聞かせください。

國井大地です。株式会社リデルタの代表取締役をしています。

僕は公認会計士・税理士で、最初のキャリアは監査法人で大企業をクライアントに、3年間監査業務に従事しました。そのあと、不動産テックのスタートアップでCFOとしてIPO準備に携わりました。そこでは資金調達や内部統制を構築し、上場するための業務に2年間関与していましたね。

そして2019年10月に株式会社リデルタを創業しました。リデルタでは、アナログで後継者課題を抱える会計事務所にノウハウと人材を提供するフランチャイズ事業とIT効率化を促すプラットフォームを提供する事業を展開しています。会計事務所業界はかなりIT化が遅れていて、いまだに紙の伝票を使っているところもあるんです。そうした会計事務所のITインフラを構築しています。

またIT化の遅れに伴い、今は所長さんの頭の中に顧問先の情報が詰まっている状態なんです。それをデータベースに落とし込んで、お客様の事業承継までサポートするためのインフラを創ろうとしています。

会計事務所のデジタルトランスフォーメーション(DX)に留まらないお仕事をされてるんですね。こうした会計事務所の現状を変えていこうと考えたきっかけはどこにあったのですか?

実家が会計事務所というのが要因ですね。実は、それまで会計事務所業務に興味を持ったことはありませんでした。実家の事務所の事業承継に関与していく中で、まったくIT技術を使っていない業務が当たり前だという現状を知りました。

もともと不動産テックのスタートアップで勤めていたのもあり、アナログな業務が非常に衝撃的でした。同時に、こうした業界課題を目の当たりにして「このままだと業界が衰退する」という危機感を覚えました。

実家で会計士事務所をやられている一方で、最先端の業務推進にも携わるという両方を知っている國井さんならではのテーマですね。グッと時代を遡って、会計士試験を目指したのはいつ頃からなのですか?

大学2年生の頃からですね。

高校の頃は、ずっと部活動でテニスに打ち込んでいました。大学でもサークルに入ったのですが、やっぱりサークルはワイワイというか飲みがメインというか…(笑)

高校時代はテニスに熱量を注いでいたので、その落差に違和感を覚えたんです。運動は高校の時に完全燃焼していたので、何か勉強に打ち込みたいと考える始めるようになりました。そんな中、大学の図書館で友人が懸命に会計士試験の勉強をしている姿を見て、それが僕にはとても格好良く映りました。

こうした環境要因と、経済学部で勉強している領域が近かったことから会計士試験を目指すようになりました。難易度が高くて熱量を注げそうだったと言うのもあります。

自ら誘惑を消し、勉強にフルコミット

ー周囲の影響もあって目指されたんですね。どれくらいで合格したのですか?

卒業した年の8月に合格したので、ちょうど丸3年かかりました。法人に入って、周りの平均新卒年齢が30歳手前の方が多かったことから、業界では若手であると感じましたね。

会計士試験に合格する年数は、人によって大きく差があるんです。僕のいた予備校は、高校時代に部活に熱量を注いでいた人が多かったように思えます。そういう人達は全力で打ち込む対象を運動から勉強に変えただけなので、2~3年で合格する人が多かったのではないでしょうか。

ー同級生が就活をしている姿を横目で見ながら会計士の勉強をし続けるのは、モチベーションを保つことが難しそうですね。

正直、それはキツかったですね。周りは4年生春になると就活を終えて、「○○に内定もらった」「同期飲みしてきた」といった話をしていて、とても華やかに見えました。そんな中、自分は受かるかどうかも分からない試験にフルコミットしてて、このままで大丈夫なのかと引け目に感じていました。

そんな状況なので、同じように勉強をしていた人の中には、そこで就活にシフトする人もいました。僕は退路があると逃げてしまう性格で…そのため、絶対に就活はしないと決めていました。

諦めてしまうと思い入れや人生の時間のかけ方、熱量も変わってしまいますよね。そう思って、勉強に打ち込んでいました。精神力が強くないことは自覚していたため、勉強に一直線になれるよう、誘惑を自ら消し、甘えを受けない環境を整えることを意識していました。それでも当時は辛かったですね。

社会人の基礎を積み、経営への道を目指す

ー持ち前のストイックさが発揮されたんですね。試験合格後、最初のキャリアに就くまではどういう就活をしたのですか?

有難いことに、受けたところはすべて内定を貰えました。

業界的にコミュニケーションが苦手な方が多いという特徴があります。僕は、体育会出身で、それが有利に働いたように思っていますね。会計士の就活では、コミュニケーションが一番見られるんです。会計士試験で能力はある程度フィルタリングされているので、それ以外の部分、人間性や相性、ストレス耐性などが重視される傾向にあります。就活生にとっては、どの法人に勤めても業務内容は大きく変わらないんです。なので、僕は法人のカルチャーや国際色の強さを軸に選んでいました。最終的には、体育会気質な法人であり、4~5年ほどで海外に行ける部署に所属できるという点から、デロイトトーマツに入所しました。

仕事は忙しかったですが、社会人の基礎を築くことができました。優秀な人と働くことがとてもいい経験になりましたし、クライアントも要求水準が高く、自分の中の会計士としての土台が構築されましたね。

ーデロイトトーマツは3年ほどで辞められたんですよね。何がきっかけで転職しようと思ったのですか?

本音を言うと、ずっと監査法人にいる気は無かったんです。

実は、会計士試験が終わった翌日からボストンに留学に行き、ボストンキャリアフォーラムで就活をしていたんです。色々な企業を見ていた中で、外資系コンサルティングなどの経営領域が面白そうだと感じました。その時から、3年ほど勤めたら次は経営領域に行きたいと考えていたんです。

また、会計士協会の研修で経営共創基盤の冨山さんの研修を受ける中で、”経営とは何か?”というお話を伺ったことも後押しとなりましたね。その時に冨山さんは「経営は、意思決定と行動力のかけ算だ」とおっしゃっていました。「どれだけ意思決定が強くても、行動していなければ経営としては0になってしまう。」経営の第一線に立っている方がそう言うのであれば、とにかく行動しないと経営は分からないだろうと考え、経営の道に進もうと決意しました。

ー冨山さんのお話が強く背中を押してくれたんですね。どんな行動に移したのでしょうか?

どうやったら経営に携われるかなと模索しました。選択肢としてコンサルも考えたのですが、コンサルは意思決定に関与はできても最終的に決めるのはクライアントというところが監査法人と同じで第三者目線だなと思い、やはり自分で経営したいな、と。それに、大企業だと自分で意思決定できる領域が少なくなります。そのため、自然とサイズの小さい企業、スタートアップに注目するようになりました。

自分の経歴を活かして経営に携われるポジションとなると、必然的にChief Financial Officer(CFO:最高財務責任者)になります。ただ、社会人経験3年ということで、企業によっては経験の浅さを指摘されることも。そんな中、不動産テックのスタートアップ企業の代表と出会いました。代表は、僕のポテンシャルと能力を買ってくれて、CFOに就任することになります。

真逆の文化で経験を積み、起業を決意する

ー実際にジョインされて、印象的だったエピソードなどありますか?

前職の監査法人時代のクライアントはどの会社も当たり前のように利益が出ていたのですが、スタートアップだとまず資金繰りを考える必要があります。資金繰りを気にするという概念が無かったので、それが一番衝撃的でした。資金調達に走った時も「キャッシュが無くなってしまう…」とワナワナすることもありましたね(笑)

また、チーム内で能力にバラツキがあるのも初めての経験でした。チームでの動き方の違いをはじめとしたカルチャーギャップが新鮮で面白かったです。

ーたしかに真逆の文化ですよね。忙しくも充実した日々を過ごされていたと思うのですが、起業を考えたきっかけはあったのですか?

マーケティング業務に携わった経験から、起業を意識するようになりました。

マーケティングは営業と連携するため、事業のフロントに関与する機会が増えたのです。そこでマーケティングファネルの設計や顧客ヒアリングすることが楽しくなっていって、経験を積んでいく中で自分のビジネスを考えるようになりました。ビジネスのフロントもバックもやれるようになったことが、起業への具体性を増したんです。

0→1の大変さを知り、自分の見える景色が変わった

ー既存の企業にジョインするのと、0から自分で起業するのとでは全く異なりますよね。実際に起業していかがでしたか?

まずは純粋に起業している方々への尊敬の念が膨らみましたね。CFOだった頃は、どれだけCEOと意見が対立したとしても、最終的にはCEOの意思決定をサポートしていました。そこに不満を覚えていた時もあったんです。しかし、実際に自分がその立場に立つと、今まで僕が見えていなかったところが見えるようになりました。特に採用を加速してる期は、企業が「10→100」に成長するタイミングが多いですよね。そのため、「0→1」や「1→10」の大変さを理解している人は多くありません。僕もそのひとりでした。実際に自分が企業を成長させていくことで、大きくなっていく組織の苦しみ、それを乗り越えていく経験を重ね、新しい発見と日々出会っています。

起業して8ヵ月が経ちました。仮説検証を繰り返しながら顧客や1次情報に触れていく中で、手応えは感じ始めています。

ー会計士試験・転職・起業とそれぞれ大きな決断をされていますが、意思決定をする上で意識していることはありますか?

選択する前に、色々な可能性を考えるようにしています。会計士試験に挑んだ時には、資格がない状態で描ける将来のキャリアと、資格を取ることにより描けるキャリア像とで、どういう差が出るのかをシミュレーションしました。

何かを投じた後にどうなるのかをイメージした方が、意思決定の解像度が上がると思っています。そのため、イメージを膨らませるための情報を取ることを心がけているんです。それで「やる」と決めたら後は忠実に目指すだけ。また、僕は怠惰な人間で、退路があるとそれに甘んじてしまうんです。周りにいるメンバーから刺激を受けて、燃え尽きないようにモチベーションの維持を心がけています。

ー最後に、今後の展望について教えてください。

会計事務所業界は、AIによって専門的な経理能力が人から機械に置き換わり、提供できる付加価値が下がってきているという課題があります。しかし、業界全体の高齢化を背景にDXは進まず、事務所の後継者課題が加速して、業界全体が衰退の一途を辿っています。

まずは、しっかりと顧問先に付加価値を提供できる仕組みづくりに取り組みます。その仕組みをフランチャイズという形式で日本全国の会計事務所に展開することで、後継者課題の解決と、会計事務所業界のDXをしていくことで、業界を発展させていきたいです。

スタートアップへの就職人気があるように、会計事務所で働くことが魅力的な選択として映る世の中にしたいと思っています。

ー改善の余地がある業界だからこそポテンシャルは非常に大きいですよね。今後のご活躍を応援しています!

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取材:西村創一朗(Twitter
執筆:みやっち(ブログ/Twitter
編集:野里のどか(ブログ/Twitter