「なんとかなる」精神でハッタリをかまして成長し続ける、元・学生パパの人生観

色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第14回目のゲストは、元・学生パパであり、現在は株式会社COUNTERWORKSで事業開発を行なっている竹信瑞基(たけのぶ・みずき)さんです。

海外でのインターン経験から「なんとかなる」という精神を身につけ、学生パパとなる決断から自分のやりたいことを見据えたキャリア選択まで、後悔しないための道を選んで成長を続けてきた竹信さん。

知識ゼロから自学自習でスキルを身につける方法や、さまざまな選択肢がある中でのキャリアの選び方など、大学生やU-29世代必見の話題が盛りだくさんです。また、2児のパパでありながら仕事で成果を出すための両立のコツも話していただきました。

 

「なんとかなる」精神を身につけた大学時代

ー 竹信さんの簡単な経歴を教えてください。

明治大学出身で、元学生パパです。大学1年の3月、当時付き合っていた彼女との間に子供ができ、大学2年の4月に結婚しました。

大学1年の夏には、1ヶ月半ほどインドで海外インターンを経験。その後、子供ができたことがわかって「稼がなくては」と思い、大学在学中に株式会社アイタンクジャパンが運営する『キャリアバイト』などでインターンとしてマーケティングに携わらせてもらいました。

そして、現在の株式会社COUNTERWORKS(以降、COUNTERWORKS)立ち上げのタイミングで代表の方に声をかけてもらい、第一号インターンに。ここまでが学生時代の仕事のお話です。

大学卒業後は株式会社リクルートホールディングス(以降、リクルート)に入社し、UXデザイナーやプロダクトオーナーの仕事を経て、HR領域のアナリストなどを経験。2019年4月からは、現在の職場であるCOUNTERWORKSに移りました。

ー インドへ海外インターンに行かれたのは、どんなきっかけがあったんでしょう?

大学に入ってすぐ、NPO法人アイセック・ジャパンという海外インターンシッププログラムを提供しているところでインターンとして働かせてもらったのがきっかけです。そこで営業の仕事を行いながら、インドに興味を持つようになり、実際に行ってみたいと思うようになりました。

ー 実際にインドへ行ってみてどうでした?

現地で仕事をするつもりで行ったんですが、いざ入国して現地のNGOの人たちと面接をしたところ「ここ(インド)に仕事はない」と言われてしまって。そこからインドでの仕事探しが始まりました。ただ、僕がいたところはヒンディー語圏だったため、必死で勉強した英語が通じないんですよ。

だから現地でヒンディー語を勉強して話せるようにしました。そして、インドの女性や子供たちに数学と英語、ヒンディー語の読み書きを教える仕事をすることになったんです。僕はヒンディー語のスピーキングを教えてもらいながら、教えてもらったヒンディー語を使ってヒンディー語の読み書きを教えていく、という。

ー 学びながら教えるということですね。1ヶ月半のインド滞在で、得られたものは多かったんじゃないでしょうか。

やりきれなかった部分も多かったですが、学べた部分もありました。僕が思っていた以上にインドでの識字率が低いことや、話せるけど字がわからない人がいるという現実を感じましたね。

また、本人の自学自習に頼ってしまうというNGOの体質に課題があるなとも思いました。NGOは非営利なので、利益も出ず、あまり人件費が割けないんです。その分、コンテンツを充実させようとか、意欲を持って教えようという雰囲気になりにくい。なので、NGOをより良くしていく活動ができたらいいな、と思うきっかけにもなりました。

それに、「なんとかなる」という精神が身についたのは大きいですね。インドで仕事がなかったり、現地の言葉が喋れなかったり、いろいろトラブルもありましたが、運やご縁で助けていただけて、「死ななければなんとかなるんだな」ということが分かった1ヶ月半でした。

 

「後悔する選択をしたくない」だから学生パパになる決断ができた

ー 大学1年で子供ができたことがわかったのは、完全に青天の霹靂だったと思うのですが。

そうですね。でも、高校生の頃から付き合っていた彼女だったので、このまま結婚してもいいかなと考えていたんですよ。とはいえ、大学生で大した稼ぎもなかったので「これはいろいろと考えなくては」と思いました。ただ、堕ろすという選択肢はなかったですね。

ー 子供を産むのはお互いの決断だった、と。

ご縁だと思ったこともあり、少なくとも僕はそうでした。彼女からも、堕ろすつもりはなかったと聞いています。インドでの「死ぬ気になればなんとかなる」という経験もありましたし、あとは単純に堕ろすのが嫌だなと思ったんです。

責任を取らなかったと見られるのも嫌だし、後悔する選択をしたくなかったので。僕が頑張ればいいのなら、頑張れると思いました。

ー 授かったからにはなんとかしてやるぞ、という気持ちで決断されたんですね。それにしてもご両親の説得は大変だったんじゃないでしょうか?

僕も彼女も両親が授かり婚だったこともありましたが、ちゃんと責任持って真摯に向き合うということ、そして具体的にどうするのかという話をして交渉に臨みました。両親もはじめは難しい反応でしたが、僕たちの意志を尊重してくれて、結果的には金銭面で支えてもらえることになりましたね。

 

「ハッタリ」からの自学自習でスキルを増やしていく

ー 学生パパになることを決断したあとから「稼がなくては」とマインドが変化されたそうですが、具体的な行動はどう変わったんでしょうか?

どうやったら新卒で就職していいポジションが取れるだろうと考えるようになりました。そこで、当時はまだWebマーケティングを実際にやっている学生は多くないと思い、マーケティングの世界に踏み入れることにしたんです。

ー 当時はWebマーケティングのスキルはゼロだったわけですよね。それでもインターンとして採用してもらえたのはなぜだと思いますか?

「Webマーケティングをやっている」とハッタリをかましたからだと思います(笑)と言っても、実際にGoogleアナリティクス(Webサイトの解析ツール)などは使ったことがありましたし、海外インターンの営業の仕事もやった経験があるということもアピールしたのが効いたんじゃないかな、と。

ー その結果、なんとかなったんですね。

なんとかなりました。入社初日には「オウンドメディアにはこんな記事を書いたほうがいい」といった提案書を持っていったり、かなり頑張りましたけどね。マーケティングは僕のやりたいことだったので、ハッタリをかましても頑張れると思っていた部分はあります。

もちろん仕事ではトラブルもありましたが、「頑張ればなんとかなる」ということを実感しました。当時はWebメディアにいろんな記事が載っていたので、家でもそれを見て勉強しましたし、勉強会で詳しい人に教えてもらえる環境もあったので。

ー 知識がない状態から自学自習をしてスキルを身に付けていくスタンスや行動力は、竹信さんの強みだと思います。自学自習のコツはありますか?

誰に教えても理解できるような、第三者目線のノートを作ることですかね。紙のノートでもパソコン上でのドキュメントでも構いません。まず全体像を把握し、そこから情報を各パートに分けて、「どう書いたら伝わるか?」という視点で知識をまとめていくんです。セルフティーチングみたいな感じで、自分に教科書を作る感覚ですね。

あとは、そもそもの意味や目的をはじめに理解するよう意識しています。会社であれば、その事業の目的を理解し、それを自分の足元に置いておくイメージ。たくさんある情報の中から自分に必要なものを選ばないといけないので、今抱えている問題や勉強の目的をはっきりさせておくことが大切です。

ー おすすめの勉強法のステップがあれば教えてください。

僕の勉強ステップはこのような感じです。

①なぜそれに興味を持っているのか言語化し、意義づけ
②自分のやりたいことと紐付けて、勉強するジャンルを絞る

僕の場合、マーケティングに興味を持った理由は「営業は苦手だからしたくないから」「効率よく人を集められる仕事だったら幅広く使えるから」という2点。次に、当時働いていたキャリアバイトでやりたかったのは「インターンをより広く知ってもらうこと」なので、そのためにはWebのSEOから勉強しよう、と考えました。

ここまで絞れたら、習得したい知識について詳しいWebメディアをいくつか探し、それを読み込んで勉強していくんです。

ー 書籍より、Webメディアの記事をベースに勉強されていたんですね。

最初は、ハードルを下げることを大事にしていたんです。書籍にお金をかけても、なかなか読めずにいると罪悪感が生まれて逆に動けなくなってしまうので、毎朝Web記事を読んでメモをするというところから始めました。

僕自身はサボり屋なので、三日坊主を防ぐために小さく重ねていく。そしてWeb記事が完全に理解できたと思ったら書籍で勉強して、また分からないものが出てきたらWeb記事読み返したり、それでも分からないものについては専門家の方に聞きに行ったりしていました。

ー 専門家の方には、すぐに会って教えてもらえたんでしょうか?

いえ、ツテもなにもなかったので、直接メールを送って会ってもらえないか連絡していました。大学生であることや、自分が今やっていること、困りごとなどを伝えましたね。それでも見送られることは多かったです。

もし会ってもらえることになったら、ランチをご馳走していろいろな知識を教えてもらっていました。その人からまた専門家を紹介してもらえて、ツテができて……という感じでどんどん勉強していったんです。

 

「選んだ道を正解にしよう」と決めた就職先

ー いま働かれているCOUNTERWORKSには、大学在学中にインターンをされていたんですよね。どのようなきっかけがあったんでしょう?

大学3年で夏のインターンをしていたときに、ちょうど今のCOUNTERWORKSの社長がインターンを探していて、声をかけてもらったのがきっかけでした。

これまでやっていたWebマーケティングではなく、営業とプロジェクトマネージャーの仕事をさせてもらうことになったんですが、そこで営業に対する意識が変わりました。実はマーケティングも営業も、お客さんにサービスをお勧めし選んでもらう手段として、1対1なのか1対多なのかの違いがあるだけだな、と。

ー 営業への苦手意識が薄れたわけですね。COUNTERWORKSでは1年半もの間、インターンをされていたそうですが、長く続いた理由はなんですか?

僕がずっとやりたかった仕事に近いものができたからだと思います。会社の登記とほぼ同じタイミングでインターンとして入り、お客さんの声を聞きながらサービスの改善をするなど、自分でいろいろな策を講じることができる環境で、やりがいを感じていたんです。

今までのWebマーケティングだと、関われる範囲に限界があってサービスの中にまで踏み込めなかった。でもそれがCOUNTERWORKSではできたんですよね。

ー そのままCOUNTERWORKSに入社する選択肢もあった中で、リクルートへ就職されたのはなぜでしょうか?

就活では他の企業も受けていましたし、リクルートに就職するという選択肢もあるなと思いつつ、COUNTERWORKSが第一志望でした。ただ、僕には子供もいて、家族としては安定を求めて大企業に入ってほしいという気持ちもあるかな、と思ったんです。COUNTERWORKSはそのとき、まだ創業2期目でしたし。

それに、COUNTERWORKSで力になるには、今の自分のスキルレベルは不十分だなとも感じていました。だから、「リクルートで得られるものを100%得てからCOUNTERWORKSに戻ろう」「自分の選んだ道を正解にしよう」と心に決め、リクルートを新卒の就職先に選んだんです。

ー 戻るつもりとはいえ、苦渋の決断だったんですね。

はい。でもリクルートで過ごした3年間で、語りきれないほどの学びを得ることができました。たとえば、プロダクトの機能を作る上でのお客さんとの向き合い方や、改善をスピーディーに行うことで数字としてはどう返ってくるのか、また組織の運営に対する考え方や組織を活性化させる方法など、今の職場で活かせる知見を身につけられたと思います。

 

時間を区切ることが、子育てとキャリアを両立させるコツ

ー 学生でパパになり、今は2人の子供がいらっしゃる中で、子育てとキャリアはどのように両立させてきたんでしょうか?

それぞれの時間を区切ることで両立させています。平日の日中は仕事があるため、夜は妻の負担を減らせるように家事をしたり、土日の日中は基本的に子育てと家事をしようと決めているんです。そうすることで、心の余裕も保てています。

ワンオペ育児が大変なのもわかるし、かといって仕事は集中してやらないと成果が出せない。なので、妻には「平日は仕事のことだけ考えるし夜遅くなることもある」と言い切って、その代わりに細かな部分で妻が少しでも楽できるようにと配慮して動いています。土日も、家事は五分五分でやるようにしていますし。

ー 平日のスケジュールはどんな感じでしょうか?

日によるのですが、だいたい朝9時頃に子供と一緒に家を出て、幼稚園に送っています。帰る時間は早い日だと夜7〜8時くらいで一緒にご飯を食べることもできるんですが、仕事も忙しいため月の半分くらいは帰宅が夜9〜10時くらいになってしまいますね。理想は月の8割を早めに帰りたいんですが。

ー 会社の飲み会なんかもありますよね。それはどれくらいの頻度で行かれていますか?

月2回までに抑えるようにしています。そもそも飲むのがそんなに好きじゃないのと、夜はできるだけ仕事に充てたり早く帰ったりしたいので、本当に行きたい飲み会だけに絞るようにしているんです。

ー 家庭や子育ても大切にしつつ、仕事でも成果を出すために工夫されているんですね。

 

社会的意義まで見据えたプロダクトづくりがしたい

ー 現在、COUNTERWORKSで新規事業に関わっているとのことですが。

はい。IoT(=Internet of Things)を利用して、お店や商業施設の中でどのように人が動いているのかを可視化し、「場」の収益性を改善できるようにする事業に取り組んでいます。もともと、「SHOPCOUNTER」というポップアップストアや展示会などが開ける空間のマーケットプレイスを運営しているんですが、データを使って空間を持っている方も使う方も更に場の活用・収益の改善ができる方法を見つけたいな、と思ってこの事業を始めました。

「なんとかする」という気持ちで、どうお店や施設を良くするのかという部分に向き合っていきたいです。

ー では、竹信さんの当面のミッションは、その事業を形にするということですか?

短期的にはそうなんですが、このシステムの社会的な意義は「まちづくり」にあると思っていて。街の企業や住む人たちの意見をちゃんと反映できるよう、まちづくりのOS(基幹システム)として機能させられるようにしていきたいんですよね。

従来のように、不動産開発業者が施設建設の計画を立ててテナントを誘致するというやり方だけではなく、街の人たちが「いいな」「使いやすいな」と思えるかどうかを主軸としてお店や施設を作る・運用するというやり方が実現できるようにしたい。事業としてしっかり利益を作っていくことはもちろんですが、その後の社会的意義まで考えてこの事業を形にしたいと考えています。

 

(取材:西村創一朗、写真:山崎貴大、編集:ユキガオ、デザイン:矢野拓実)