大人がイキイキと働ける社会を目指して ー チャレンジし続ける新卒採用責任者の想い

 

色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第8回目のゲストとして、サイボウズ株式会社の新卒採用責任者である綱嶋 航平さんをお呼びしました。

新潟県で高校までの18年間を過ごし、京都大学へ進学された綱嶋さん。大学を一年間休学しての長期インターンを経て、サイボウズ株式会社へ入社。新卒採用を担当しながら、人事や働き方についての話をTwitterで、またサイボウズという会社の考えや内側の話をnoteで発信されています。

複業としてキャリアに悩める学生向けのコーチングを行うなど、幅広く精力的に活動されている綱嶋さんが、かつてどのようなことに悩み、どのような決断をして今に至ったのか。また、なぜ企業の人事として発信活動を続けているのか。

就活に悩む学生はもちろん、複業やSNSを活用した採用に興味のあるビジネスパーソンにも参考になるような貴重なお話を伺ってきました。

 

「このままでいいのだろうか」就活中に感じた2つの危機感

ー これまでの経歴を教えてください。

1994年生まれで現在25歳です。18歳のとき、新潟を出て京都大学文学部へ進学。大学4回生のときには一年間休学して、企業の働き方をコンサルティングする株式会社ワーク・ライフバランスでインターンとして働きました。

この会社で、サイボウズ株式会社(以下、サイボウズ)の製品を使っていたことや、会社同士の仲が良かったこともあり、就活でサイボウズを受けて入社することとなりました。

ー 京都大学を選んだ理由は?

もともと、京都大学なんて自分には手が届かないと思っていました。高校も進学校というわけではなかったですし、新潟の国公立大学に進学して教師になれたらいいなくらいに考えていたんです。

でも、高校3年生のときの担任教師が「京大を目指してみないか?」と勧めてくれて、そこから視界が広がりましたね。東京にはいずれ働き始めたら行くと思っていたので、それなら大学はワクワクする土地に行きたいなと考え、京都大学を受験することにしました。

ー 受験はスムーズに進んだんでしょうか?

全然(笑)模試も、ギリギリまでE判定でした。高校のカリキュラムも、京都大学の入試レベルに対応していなかったので、授業が間に合っていなかったんですよね。「自分は、進学校の生徒とは違う戦い方をしなければならないんだ」と自覚して、先生とマンツーマンで勉強させてもらい、なんとか受験に間に合わせました。

ー 京都大学に合格したことは、きっと成功体験になりましたよね。

センター試験が終わった頃に、クラスメイトから「綱嶋くんが朝から晩まで教室の一番前の席で勉強してレベルの高い大学を目指しているのを見ていたら、俺も頑張れる」と言われるようになったんです。そのときに「人の頑張りを素直に認められる人って素敵だな」と思いましたし、「大学受験は自分だけの戦いではないんだな」と感じたんです。

だから合格がわかったときは嬉しさもありましたけど、その後、いろんな人に感謝の電話やメールをしました。これはすごくいい経験でしたね。

ー いい仲間に恵まれたわけですね。大学ではどんな風に過ごされました?

小学校2年生くらいからずっとバスケをやっていたので、大学でもすぐバスケ部に入部したんですが、自分の思い描いていたキャンパスライフと違うことに気づき一年目の8月に退部。大学3回生の夏まではサークル、バイト、授業、テスト……と楽しかったものの、あまり起伏のない日々を過ごしていました。

ー 休学してインターンシップに行こうと決める前は、就職活動もしていたんですよね?

大学3年の夏にサマーインターンシップが開催されるので、説明会を聞きに行きました。その頃はまだ就活に関する情報収集もあまりしておらず、有名企業のインターンにだけ申し込んだんですよ。だけど、結果はすべて落選。

周りの同世代がこれまでの経験や将来やりたいことなどについてしっかり話している一方で、自分には話せるようなことが何もないという事実を突きつけられました。

ー それは本当になかったんでしょうか?それとも自己分析が足りなかっただけでしょうか?

両方だと思います。人に話せるような大きな経験もしていませんでしたし、自分の経験を人に伝える技術もなかったので。

ー それがショックでこのままじゃダメだと思ったんですね。

そうですね。それに、大企業に就職した大学の先輩に会って話を聞くと「めっちゃ辛い」と話している人がけっこういたんです。もし自分も、このまま何も考えずネームバリューばかり気にして就活していたらまずいのでは……と気づきました。

やりたいことがない自分に対する危機感と、このままなんとなく就職してしまうことに対する危機感。この2つをどうにかしなきゃいけないと思ったのが大学3回生の8月あたりのことです。

 

自分のやりたいことを見つめ直した長期インターン

ー 大学を休学してインターンに行く、というのは勇気のいる決断だと思うのですが、その原動力は何でだったんでしょう?

周りにいる京大生は本当に天才・秀才ばかりだったんですが、このままここにいたら、京都という土地柄のゆったりした流れに飲まれてしまいそうだなとも感じる部分もあったんですよね。

「大学のどこか一年間で、東京という場所でフルタイムで働くという、今と全く違う経験をしたら、自分はどう変化するんだろう」ということにワクワクを感じたため、思いきって休学を決断できました。

ー 休学を決めてからインターン先を探したんですか?

はい。自分が何をやりたいんだろうと考えたとき、もともと子供の教育に関心があることを思い出しまして。子供たちが「早く大人になりたいな」とワクワクできる社会ってどんな形なのか?と考えた結果、身近にいる大人が背中を見せるのが一番だと思ったんです。

一方で、日本人は残業も多く、ワクワクしながら働いている人はごく少数であると知って、自分の理想とは違うな、と。そこでワークライフバランスという考え方を知り、ちょうど株式会社ワーク・ライフバランスのインターン募集を見つけたため、「ここだ」と思いすぐに決めました。

ー インターンで得られたものはありましたか?

働き方に対する知見が得られました。「長時間残業よりも、効率的に時間を使って空いた時間をしっかり余暇に使うほうが成果が出る」ということをデータで知ることができたんです。また、ベンチャー企業だったため、インターン生であることを気にせずコミュニケーションを取ってくれることも、新たな気づきでした。

ー インターン期間中はそちらの仕事にコミットし、そのあと就活を始められた綱嶋さん。準備が間に合わない、といったことはなかったですか?

いえ、インターン中に就活の準備はしていなかったものの、インターンの仕事でさまざまな企業に出向いて話を聞く機会があったので、それが最高の就職活動になったなと感じています。普通の就活生では聞くことができないような人事担当者の話を聞くこともできましたしね。

だから就活をスタートさせた3月には、どんな企業に就職したいのかも、おおよそ決めていました。

ー 子供の教育に関心があったという話がありましたが、そのビジョンは変わらなかったんでしょうか?

もともとは「働く大人の環境を変えて、子供たちの教育も変えたい」と思っていたんですが、ワーク・ライフバランス社でインターンシップをしている間に「教育はそんなに簡単に変えられない」と気づきました。

一方で、自分がインターンとして働いていてワクワクしていることにも気づき、「今の社会人がイキイキできるよう支援するほうが楽しいな」と、気持ちが変わっていったんです。

まずは自分の両手が届く範囲の人たちを幸せにしたい。いつか自分にも子供ができたとしたら、自分の家族からハッピーにしていきたい、というのが今持っている教育への思いです。また、今は学生さんと接する機会もあるので、どうすればイキイキとした社会人になれるのかということも伝えたいな、と思っています。

 

「ここで人事の仕事がしたい」サイボウズを選んだ理由

ー 就活を経てサイボウズに入社されたわけですが、サイボウズを選んだ決め手は何だったんでしょう?

サイボウズに行ったら面白い気がする、という予感があったんです。たとえばTwitterですごく発信されている社長の存在や、「サイボウズ式」というオウンドメディアなど、自分にピンとくるキーワードがとても多かった。また、サイボウズは働き方に対して考え方が柔軟で、自由さを併せ持っていたことも魅力でした。

ー 入社してどんな仕事がしたいと思っていましたか?

実は、はじめから人事の仕事がしたかったんです。就活の軸が、ワーク・ライフバランス社に学んだ「働き方」だったので、人事ならそこにダイレクトに関われるな、と。

とはいえ、人事というのはどこの会社にもある仕事です。でも僕は、働き方に関しても先進的で既存の枠組みに捉われないサイボウズだからこそ、ここで人事の仕事をやる意味があると思っていました。

ー 内定をもらったあとで「本当にこの会社でいいんだろうか」と悩んだことはありますか?

僕が内定をもらった当時、サイボウズはまだ認知度が低く、友人に社名を言ってもわかってもらえないことが多かったんですよね。周りには大企業に就職する友人もいる中で、「本当にここで社会人一年目のキャリアをスタートさせていいんだろうか?」と悩むことはありました。

ですが、「絶対に今よりいい会社にしてやるから見てろよ!」という気持ちで、3年後の未来を見るようにしたんです。その気持ちをバネに、3年後の自分がもっとイキイキできてるように頑張ろう、と思っていました。

 

SNSで発信し始めたら採用現場が変わった

ー これまでのサイボウズでの仕事を振り返って印象に残っている出来事といえば?

1年ほど前からTwitterをきちんと使い始めたのですが、そこからのご縁で仕事が始まることもあったのが印象的でした。SNSを使った会社の認知の広げ方や、なぜ人事がSNSで発信をする必要があるのかといったことに興味を持っていただき、記事として取り上げてもらったこともあります。

自分の発信を見てくれている人と「想い」でつながった仕事が生まれるんだな、というのがとても心に残っていますね。

ー そもそも今のようにTwitterを使い始めたキッカケは何ですか?

人事に入ってみて、これまで当たり前に使っていた就活サイトに掛かるコストを知ったことがキッカケです。就活サイトではたくさんの人を集めることができるんですが、会社の考えに共感して集まってくれる層は少ないんですよね。そこで「Twitterでフォロワーがたくさんいたら、会社の考えを広く伝えることができるんじゃないか」と考えました。

ー Twitterを続けるというのはなかなか難しいことだと思うんですが、続けられた理由は何でしょう?

最初はフォロワーも少ないので、いいねはほとんどつかないのですが、1~2件でもいいねがついたら嬉しかったんですよね。見てくれる人がいるんだな、と実感できて。

そしてどんな人がフォローしてくれてるのか、どんな人がいいねしてくれているのかを見にいったら、その人たちの悩みを知ることができたので、その答えになりそうなことをツイートすることが自分にとっての楽しみになっていったんです。

ー 発信するようになって、サイボウズの採用が変わった実感はありますか?

最も成果があったなと思うのは、「【勝手にまとめてみた】採用担当が個人的にオススメする、サイボウズを知るならフォローしておきたいTwitterアカウント30選」というnoteの記事に多くの反響をいただけたことですね。その記事を見て会社説明会に来てくれた学生さんや社会人の方がいたり、面接で「あの記事を読んでサイボウズの社員について調べていた」と言ってもらえたりしたんですよ。

ー 実際にTwitterを通して採用に繋がったこともあるんでしょうか?

直接ではないですが、Twitterでごくプライベートな趣味の集まりを企画した際に、そこに来てくれた人たちと色々話をしていたら、その中の一人の学生が「サイボウズに入社したい」と言ってくれて。その子が採用試験にエントリーした結果、内定が決まったというようなことはありました。

ー 素晴らしい。成果に繋がっていますね。

 

本業と複業の両輪で社会を変えていきたい

ー 現在、複業でブログ執筆サポートのコーチングなどもされていますが、どんな背景があって始められたんでしょうか。

はじめは、知人からコーチングの講座を勧められたんです。当時はコーチングについてまったく知らなかったんですが、「傾聴して話を引き出すことや目標達成をサポートするということは人事にとって大切なことだな」と気づき、本業に活かすために講座へ通うことに。勉強していくうちに、このスキルが人の役に立つかもしれないと思い、今の複業を始めました。

ー ビジネスパーソン向けのブログ執筆サポートを思いついたキッカケは?

ある日、知人とお互いコーチングをし合っているときに、相手が「こういうことを書きたい」と話していたので、話を聞いていたんです。そうしてその日のうちに、実際に書く直前まで形にできていた。「もしかしたら、こういうサポートを求めている人がいるかもしれない」と思ったのがキッカケです。2020年に向けて、自分のビジネスとして継続サポートできるようにしていきたいと思っています。

ー 今後、本業・複業含めてチャレンジしていきたいことは?

「自立した個人の集う、しなやかなチームを創る」というのが僕のモットーなので、そういう社会を創るための仕事が何かしらできたら、と思っています。そのためにもまず、「チームワークあふれる社会を創る」という理念を掲げるサイボウズで、自分にできることを一つひとつやっていきたいです。

また、自立した個人というものに対しては、コーチングを通してやりたいことに向かって進んでいける人を増やしたいですね。その結果、いいチームも増えていってほしいなと考えています。

 

(取材:西村創一朗、写真:大沼楽、文:ユキガオ、デザイン:矢野拓実)